下北沢『ストーリーズ』

下北沢の「ストーリーズ」は昔から好きなロック・バーである。
最近はなかなか行けていないのが残念だが、店主の落合さんは
ぼくが最初の本を書いた97年夏、家の留守電にお祝いのメッセ
ージをくれた。またその本が07年の夏に増補改訂版として再び
出た時は、新宿のイベントまでわざわざ足を運んでくださった。
ヴェルヴェッツやルー・リードを愛する落合氏とダウン・トゥ・
アース志向のぼくとでは一見ミスマッチに思えるかもしれない。
しかし時代に流されず、自分のポリシーを守るという点では相
通じるものを感じてきた。こだわりという意味ではこの「スト
ーリーズ」はアナログ専門で、CDプレイヤーは置いていない。
それが奇異に映った頃もあっただろうが、今では時代が一回り
して元に戻ったという印象すら受ける。薄緑色に塗られた木目
のカウンターだけのこの小さな店は、そんな長い歳月をずっと
生き抜いてきたのだった。久し振りに落合さんと再会したのは
2016年秋に行われたヘロンのライブ会場にて。そこでもみんな
と馬鹿騒ぎをするのではなく、ひっそりと壁際に奥様と立たれ
ていた様子が心に残っている。ちなみに店名はデヴィッド・ブ
ルーの『STORIES』から拝借したものであり、そのジャケット
を模したコースターを差し出してくれるのが嬉しい。お察しの
通り、皆んなとつるむのが好きな連中にはあえてお薦めしない。
その代り、個人であることを尊ぶ人たちには佳き伴侶となる店
に違いない。「ストーリーズ」は密やかな交差点であり、そこ
を行き交う隣人たちが、それぞれの物語を語り合う場所だ。

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by obinborn | 2017-01-09 02:38 | one day i walk | Comments(0)  

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