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追悼:ブッチ・トラックス

ブッチ・トラックス(写真右端)が亡くなってしまった。
享年69歳。オールマン・ブラザーズ・バンドのドラマー
として、結成された69年からずっとリズム・パートの一
角を担ってきたメンバーだった。とくにジェイモとのツ
イン・ドラムス(パーカッション)は米南部ロックのダ
イナミズムを伝えるとともに、ジャズ的なアプローチも
示す確かな技術があり、90年代以降に隆盛を極めたイン
プロ〜ジャム・シーンの礎となった。なおご存知のよう
に、現在大活躍しているデレク・トラックスはブッチの
甥っ子である。

悲しくなって『フィルモア・イースト・ライブ』のLP盤
を部屋から取り出してきた。忘れもしない高校2年の時
に所沢のヤマハ楽器でぼくはこのアルバムを購入したの
だった。ベリー・オークリーの弾力あるベースと同期し
ながら舞い上がっていくブッチやジェイモのリズムがあ
ってこその、デュエイン・オールマンであり、ディッキ
ー・ベッツだった。今でもそう思う。

小川洋子の自伝的な小説『ミーナの行進』のなかには、
ある日撮った家族・親族との記念撮影を振り返りながら
主人公が呟く場面がある「みんないる。誰一人欠けてい
ない」と。そのことを反芻しながら『フィルモア』のジ
ャケットを眺めていると、何とも言えない感情に襲われ
てしまう。確かにみんないる。時計回りにデュエイン、
ジェイモ、グレッグ、ベリー、ブッチ、そしてディッキ
ー。みんなまだ20代の若者たちだった。

ブッチさん、今まで素晴しい演奏の数々を本当にありが
とうございました。「エリザベス・リードの追憶」序盤
での秘めやかなパートから、次第に熱を帯びていくあな
たのドラムスが大好きでした。

追悼:ブッチ・トラックス_e0199046_2573262.jpg

by obinborn | 2017-01-26 02:59 | one day i walk | Comments(4)  

Commented by tapara at 2017-01-26 20:54 x
小尾さん、はじめまして。

いつもは芽瑠璃堂のHPで記事を拝見させていただいていますが、今日は訃報を見ている中でここに行き着きました。拙文とはなりますが、個人的な気持ちをしたためさせていただきます。

夕方にクルマのラジヲをつけると、『ジェシカ』がかかっていました。そのあと、アナウンスで「ブッチご逝去」だと聞きました。
なんともいえない思いで家に帰った後、「Eat a peach」を聴いております。まったく、『Mountain JAM』は高校のころから何百回聴いたことか。やっと『Blue sky』までいきましたが、うるんできました。
「Brorhers & Sisters」のジャケを飾ったあの坊やは、おやぢさんの帰天をいまどう感じているのでしょう。
合掌です。
Commented by obinborn at 2017-01-26 23:31
taparaさん、はじめまして。ご訪問ありがとうございます!
本当に悲しいですよね。私もEAT A PEACHを愛聴していま
した。自分が憧れていたミュージシャンたちが相次いで亡くなっていくのが辛いです。でも、彼らと幾ばくかの時間をともに
出来たことは幸せでした。今、私はグレッグのLAID BACKを
聞き始めました。なお私はフェイスブックでも同じテキストを
公開していますので、もしよろしければそちらにも遊びに来てください。
Commented by 大塚 at 2017-01-29 10:35 x
ブッチ・トラックスの事はとても残念です 
自殺ということでなおさらびっくりしました
そんなわけて旧作をいろいろ聞き返していますが
75年 Win, Lose Or Draw
79年 Enlightened Rogues
81年 Brothers Of The Road
以上あまり話題にならない3作品ですが
ポップすぎると思っていた81年作は今聞くと以外といいんですよね
あのオールマンでさえ時代に流されていた思うとなんか懐かしい気持ちがします
Commented by obinborn at 2017-02-03 23:29
お返事が遅くなってすみません!ブッチの死(しかもライフル
自殺)は何ともやりきれません。ぼくはここら辺あまり聞いて
いなく何とも言えないのですが、「Win〜」に入っていたマディ・ウォーターズ曲のアレンジ能力には後年ハッとさせられま
した。

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