ロニー・レインのこと、学生時代の記憶

夕暮れの陽射しが少しずつ伸びてきました。さっきビールを
飲み始め、我が最愛の人、ロニー・レインの『ANYMORE F
OR ANYMORE』(74年)を聞いています。彼のことは音楽
誌等に沢山の記事を書いてきましたので、もう言い残すこと
は殆どありません。ですから今日は少々脱線して、ごく個人
的なことをメモしていきたいと思います。

私が最初にこのレコードを聞いたのは、大学時代の友人S君
が貸してくれたからでした。あれは確か79年の夏休み前後の
ことでした。S君とは音楽サークルで知り合ったのですが、
皆がドゥービー最高!イーグルス抜群!と騒いでいるなかで
殆ど浮いた存在でした。何せ卒業アルバムの記念写真にマッ
ド・エイカーズの『ウッドストック・マウンテンズ』を掲げ
るような男ですからね。でも私は何故かそんなS君に注目し
ていました。彼とよく話してみると児童文学を愛するナイー
ブな青年でした。S君とよくつるんで大学近くにある江古田
のロック喫茶クランで語り合い「吉祥寺の芽瑠璃堂にエディ
・ヒントンのカット盤が入荷したらしい。オビ君、ぼくは今
日バイトがあるから2枚買ってきてね!」なんていう会話を
しました。

あの時代から40年近くの歳月が流れ、お互いの連絡は少しず
つ途切れていきました。S君はさる有名なタレントさんと幸せ
な結婚をし、私もまた妻を得ました。80〜90年代は仕事の忙
しさもあってか、完全に交流は絶えてしまったのです。ところ
が運命とは本当に面白いものですね。S君が下北沢のロック・
バー、ストーリーズに通っていて、時々「オビ君に会いたいな
あ」なんて言っていることを、ヘタウマ・スワンプ・ギタリス
トのY君や『ワルボロ』でおなじみの映画監督Sさんが教えてく
れたのです。ストーリーズの店主である落合さんも何気に動い
てくださいましたし、S君と同じ文学部のIさんとは本当に偶然
にも、藤沢のケインズというバーで出会い、S君の話題に花を
咲かせました。

私が2008年に3冊めの著作を出し、そのトーク・イベントが
新宿のディスク・ユニオンで催された時、その長く失われた
友人のS君が来てくれたことは本当に嬉しかった!実際彼は
私の音楽嗜好に決定的な影響を与えた人物であり、あの夏に
ロニーのLPを貸してくれたことを、今も鮮やかに思い起こす
ことが出来ます。でもそれ以上にS君から教わったのは「時
代なんてナンボのもんじゃい?ぼくは流行で動かないのさ」
という人生への真摯な眼差しでした。しかも彼の場合、常に
伏せ目がちであり、控えめであり、デリケートな心のありか
のことを熟知していました。

そんなことを思い出しながら聞くロニー・レインは特別です。
都会の喧騒、あるいは世間の流行に背を向けて旅立つ男たち
を捉えたアルバム・ジャケット。それがすべてを物語ってい
るような気がします。

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by obinborn | 2017-01-27 18:18 | one day i walk | Comments(0)  

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