追悼:ジェローム・ガイルズ
J.ガイルズことジェローム・ガイルズが亡くなってしまった。
つい先日まで過去のアルバムを何枚も聞き直し、いいバンド
だったなあ〜と、改めて思い出していただけに驚いている。
元々ジェロームはニューヨークの出身で、ダニー・クレイン
とマジック・ディックの3人でアクースティック・ブルース
・バンドを67年頃から組んでいた。そこにボストン出身のピ
ーター・ウルフとステファン・ジョー・ブラッドが加わり、
J.ガイルズ・バンドの母体が出来上がった。さらにボストン
大学に通っていたセス・ジャストマンが加わり、6人編成の
エレクトリック・ブルーズ・バンドに生まれ変わった彼らは、
69年アトランティック・レコードからデビューする。
グループ名に冠されたくらいだから、やはり最初はジェロー
ムが結成したバンドだったと考えていいだろう。ソングライ
ティングが殆どウルフ=ジャストマンのコンビだったことや、
ピーター・ウルフがバンドの顔だったせいか、あまり目立た
ないジェロームだったが、切れ味鋭いカッティングが彼の持
ち味だ。例えば『モンキー・アイランド』の冒頭を飾った「
サレンダー」を聞くだけで、いかに彼が重要な存在かを即理
解出来るだろう。歴代のギター・ヒーローと違ってソロを弾
きまくるタイプではなかったので過小評価されているだけだ。
ぼくが彼らをめぐるエピソードで一番好きなのは、ジューク
・ジョイント・ジミーというペルソナを作り出したことだ。
J.ガイルズ・バンドの初期のアルバムを見て頂ければお解りの
ように、作詞作曲のクレジットやスペシャル・サンクスの欄
にジューク・ジョイント・ジミーの名前を容易に探すことが
出来る。よくファンの間では7人めのメンバーではないか?
とか、ボストン在住の老ブルースマンではないか?とか、あ
るいはストーンズに於けるナンカー=フェルジのような変名
ではないのか?と話題に昇った。そんなことを友だちと話し
合っていた頃が懐かしい。
ジューク・ジョイント・ジミーに関して、ジェローム・ガイ
ルズとマジック・ディックはこう種明かししている「俺たち
の架空のブルース・ヒーローだよ。いつも俺たちを見守って
くれているんだ」そんなロマンティックな神話を携えながら
彼らはキャリアを磨いていった。しかし古巣アトランティッ
クを離れ、78年にEMIアメリカと新たに契約してからはジュ
ーク・ジョイント・ジミーの名を見つけることは出来なくな
ってしまった。奇しくもそのことが彼らの音楽性の変化や青
年期の終焉を物語っているようで切ない。そして今日ジェロ
ーム・ガイルズは一番星になった。彼が天国でジューク・ジョ
イント・ジミーとともに心置きなくセッションすることを願っ
ている。
by obinborn | 2017-04-12 14:28 | rock'n roll | Comments(2)