クロディーヌ・ロンジェの歌のこと、影絵のこと

昨日吉祥寺に行った際ユニオンに寄ってクロディーヌ・ロン
ジェのファースト・アルバム(A&M 67年)を購入した。フ
ランスに生まれたクロディーヌは少女時代にアメリカへ渡り、
女優として歩み始める。やがてアンディ・ウィリアムズと出
会いシンガーとしての活動を行い、ニューオーリンズのクラ
ブで歌っていた彼女にハーブ・アルバートが惚れ込み、晴れ
てA&Mと契約する。その記念すべきデビュー盤が本作だ。

クロディーヌはやがてアンディと結婚。しかし幸せな日々は
続かなかった。そして71年悲劇的な事件が起きる。コロラド
州アスペンで暮らしていた彼女は、当時の恋人を撃ち殺して
しまったのだ。彼女はあくまで銃の暴発による事故だったと
法廷で主張したのだが、殺人犯の判決が覆ることはなかった。
長い禁固生活が始まり、女優・歌手としての生命は実質的に
絶たれてしまった。のちにSUGAR MEでカムバックを果たし
たものの、この事件はファンの心を曇らせてしまった。何で
もクロディーヌは無罪の側に立った弁護士と秘めやかな結婚
をし、今もそっと隠遁生活をしているとか。

彼女の名誉のためにも音楽的なことを記しておこう。クロデ
ィーヌの甘く囁くような歌い方は、激しいシャウト唱法とは
また別にソフト・ロックやAORの潮流を生み出した。70年代
に登場したリンダ・ルイスやミニー・リパートン、あるいは
80年代に現われたトレイシー・ソーンやエディ・リーダーと
いった女性シンガーのなかに、クロディーヌが蒔いた種を感
じるのは自然なことだろう。そして90年代にはいわゆる渋谷
系の古典として再評価されたことが記憶に新しい。ごく最近
ではバート・バカラック集の新作をリリースしたばかりのル
ーマーにも、クロディーヌの遺伝子が受け継がれているよう
な気がしてならない。それは何かを声高に訴え糾弾するのと
はまた違う音楽のあり方だった。影絵のように伸びては消え
ていく毎日の自分を見つめ直す作業だった。

トミー・リピューマによる知的なプロダクション、弦と管の
超克が見事なニック・デカロのアレンジ、音の一粒一粒を丁
寧に拾っていくブルース・ボトニックのエンジニアリングと、
音響の名人たちがしっかりと脇を固める。クロディーヌはレ
ノン=マッカートニーのHERE, THERE AND EVERYWHERE
でこう歌っている「佳き日々を生きるため/分ち合える恋人が
欲しい/互いの瞳を見つめ信じ合うのよ/今ここで、違う土地
で、あらゆる場所で」


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by obinborn | 2017-04-28 13:08 | one day i walk | Comments(0)  

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