シーナ&コス唯一のアルバムのこと。渋谷ブラックホークについて

シーナ&コスはもともとデトロイトのロック・バンド、サヴェ
イジ・グレイスに在籍していたジョン・シーナーとロン・コス
が意気投合し再出発したデュオだ。二人はリプリーズ・レーベ
ルと契約し、唯一のアルバム『SEANOR &KOSS』を72年にリ
リースした。何と言っても話題になったのはジョン・セバスチ
ャン(exラヴィン・スプーンフル)がハーモニカで、ケニー・
アルトマン(exフィフス・アヴェニュー・バンド)がベースで
客演したことだろう。サヴェイジ・グレイス時代のハード・ロ
ックからは一転、アーシーなフォーク・ロック風味に様変わり
した点は当時どう受け止められたのだろうか。プロデュースが
キンクスやザ・フーを手掛けてきたシェル・タルミーであるこ
とも、そこら辺の混乱を映し出しているようだ。

それでもこの作品が密かに日本で愛されたのは、ひとえに渋谷
のロック喫茶ブラックホークが発行していたミニコミ誌『スモ
ール・タウン・トーク』が選ぶ99枚に登場した故だろう。つま
り、サヴェイジ・グレイスのガレージ・ロック信望者というよ
りは、むしろ南部指向のスワンプ・ファンに愛好されたのだっ
た。他ならぬ私自身が後者に属していたリスナーの一人であり、
ブラックホークからの坂道を、シーナ&コスのONE DAY LON
GERを反芻しながら駅へと向かったものだった。楽曲としては
そのONE DAY LONGERとMISTERY TRAIN(ジュニア・パーカ
ーのメンフィス・ブルースとは同名異曲)がとにかく傑出した
出来映えだった。それぞれがB面最後とAサイドの冒頭にうまく
配置されていた。シングル・カットはされたのだろうか?もし
私が制作A&Rだったとしたら、間違いなくこの二曲を候補にし
ただろう。それほど聴く者の心を捉え、さらに楔を打ち込むよ
うな音楽だった。

「俺はデトロイトの町に生まれた/何年も何年もその工場地帯
でくすぶっていた/この町を出ていく夢を見たよ/出て行ったら
最後/二度と戻ることはない/ミステリー・トレインよ/お前は
どこに行くのかい?/この俺も同じようなものさ」(MISTERY
TRAINより)ジョン・セバスチャンのハーモニカがまたいい。
それが汽笛の音となって、果てしない迷宮、終着駅が見えない旅、        朝靄の退屈、くたびれたベンチ、無法者の凱旋、気まぐれな態度         etc...を束ねていく。


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by obinborn | 2017-05-21 17:41 | one day i walk | Comments(0)  

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