架空連載小説『レコ屋太郎の物語』その3


(これまでのあらすじ:28歳の独身太郎は『江古田レコード』
で働く日々であった。そんなある日、イカした女性が店に入っ
てきたのだった…)

「あのう、私ブリンズリー・シュウォーツ『銀の拳銃』のLP
盤を探しに来た清美と申します。太郎さん、どうかよろしく
ね!」瞬時にぼくの心臓は激しく鳴り出しました。こんな綺
麗なお嬢さんが来てくれるなんて。『ブリンズリーズですか!
お客さんもいい趣味されてますねえ〜。少々お待ちください。
ただいま弊社のパブロック・コーナーを探してきますね!」
極めて平静にそう答えたぼくですが、内心はもうドキドキで
した。というわけでコーナーを漁ってきたのですが...。「キ、
キヨミさん、いや失礼お客様、あいにく現在『銀の拳銃』の
在庫は切らしておりまして...」

「あら残念ね!オビさんの伝を頼ってせっかく隣町から来た
のに」「ほんますんません。英エドセルの再発盤をつい先日
まで800円で売っていたんですが…あの、もしよろしかった
ら明日ぼくの手持ち盤を店に持ってきます。一緒に聞きませ
んか?」「う〜ん、わからない。私明日はカルチャー教室に
行く予定ですし」「それは残念です。あ、あのお客さん、メ
アド教えて頂けますか?うちの店の新入荷情報をすぐお届け
出来ますし、ポイントカードも満額貯まればレコ半額でご奉
仕しているんです」

「えっ本当!じゃあ明日また来ようかしら!」ぼくはもう夢
心地でした。明日も清美さんに会えると思うと、倉庫からの
重い搬出作業にもワンパターンの値付け業務にもオビ店長の
罵詈雑言にも不思議と耐えられるような気がしてきました。
「清美さん、明日また!」そう心のなかで呟いたぼくは、再
び『江古田レコード』の作業に没頭していきました。いつの
間にか陽が落ち、東の空には月がうっすらと立ち昇ってきま
した(続く)


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by obinborn | 2017-05-27 18:35 | one day i walk | Comments(0)  

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