クレイジー・ホースとハル宮沢のことを考えてみた
今一番欲しいアナログ盤はクレイジー・ホースのセカンド
『LOOSE』なんだけど、4月27日に石塚浩子さんの個展に
行く際に立ち寄ったお店では6800円もしたので仕方なく諦
めた。未開封のシールド付きだったからなおさら高かった
のだろうけど、昔は投げ売り同然だったし、今も探せば500
円で購入出来ると思う。値段的な口上はともかく、ワーナー
の名盤探検隊でCD化された際に初めて聞いて”震えた”。勿論
前身バンドのロケッツや彼らのファーストは大好きだったけ
ど、本作は70年代に何故かタイミングを逃し聞かないままだ
った。きっとダニー・ウィットンが亡くなったクレイジー・
ホースなんて...という先入観に囚われていただけなのだろう。
私はそんな自分の浅はかさを呪った。ダニーに代わる新しい
ギタリストのグレッグ・リロイとジョージ・ウィッセルの二
人がかなり貢献しているし、多くの曲でソングライティング
を手掛けているのも頼もしい。むろんタルボット=モリーナ
の馬力あるリズム隊は、まるでB級食堂のA定食のように力強
く優しく、身体ごと安心して委ねられる感じかな。
この人達はきっとロック音楽の未来を透視するなんていう視点
とは無縁に、自分たちの音楽を楽しみ慈しんでいるだけなんだ
と思う。その心意気が頼もしい。アルバム表題の如くルーズで
タフな演奏の味わいといったら!まるで一番いい時のハル宮沢
のコスモポリタン・カウボーイズのようだ。荒ぶる心も穏やか
なカントリーもそのまま出しちゃう不器用な部分は両者に共通
するものだろう。この時期のクレイジー・ホースのライヴはき
っと無敵だったに違いない。細かいことは気にしない。その代
り俺たちはラウドで行くぜ!そんなことを無言のうちに言い含
めた姿がもう圧倒的に美しい。
余談だが、ハル宮沢は日本のロックの埋もれがちな才能の一人。
この人はこんなことまで考えていたのかと思わせるナイーブが
激しいノイズの彼方から見えてくる。あるいはハンク・ウィリ
アムズの曲に託した喜怒哀楽が聴こえてくる。彼と出会った時
は、まるでたまたまクラスが違って話す機会に恵まれなかった
ハイスクール時代の友だちだと直感した。そしてクレイジー・
ホースとハル宮沢は、これからもきっと怒りや喜びや悲しみ...
それらすべてを音楽に託していくことだろう。
by obinborn | 2017-06-03 17:09 | rock'n roll | Comments(0)