フレッド・ニールのブルーズが風を切る

60年代前半のグリニッチ・ヴィレッジ。その活況はどれだけ
のものだっただろうか。以前デヴィッド・ブロムバーグが再
来日した際インタビューする機会があったのだけど、「ぼく
は大学を辞めてヴィレッジのフォーク・シーンにどっぷり浸
った」「ジェリー・ジェフ・ウォーカーと一緒にコーヒー・
ハウスで歌っていると、客席にはボブ・ディランがいたのさ。
彼が声を掛けてきたんだよ!」と懐かしそうに話してくれた。

フレッド・ニールの『ブリーカー&マクダガル』は、そんな
ヴィレッジの息吹を伝えるアルバムだろう。ジャケットには
寒さに負けずにブリーカー・ストリートとマクダガル通りの
交差点に立つフレッドの姿が映し出されている。片手に握っ
たギターケースだけは離すまいといった決然とした表情もい
い。フレッドの奏でる音楽はフォーク・シーンのなかで常に
異質であり尖っていたことだろう。12弦ギターの変則チュー
ニングによるモーダルな奏法はブルージーかつサイケデリッ
クな革新的なものだった。そんな彼に影響されて、ティム・
ハーディンやティム・バックレー、デヴィッド・クロスビー、
ジョニ・ミッチェルらがその才能を開花させていった。とく
にカーレン・ダルトンはフレッドと親しく、彼の代表曲Blues
On The Ceilingをデビュー・アルバムに吹き込むばかりか、
逆にフレッドが直々にライナーノーツを寄せるほど彼女に期
待を込めた。また震えるようなギターの響きはラヴィン・ス
プーンフルのザル・ヤノフスキーの奏法にも受け継がれてい
った。

今日こうして久し振りに『ブリーカー&マクダガル』を聞き
直すと、何だかたまらない気持になってくる。そういえば先
日惜しくも亡くなられた鈴木カツさんは事あるごとにフレッ

ドの素晴しさを語っていたっけ。ちょっと余談になってしま
うけれど、カツさんも妙な取り巻き連中に囲い込まれなけれ
ば、ぼくとの友好関係はもっと続いていただろう。そんなほ
ろ苦さを含めながら、今日もフレッドの風を切るようなブル
ースが聴こえてくる。街角に立つ青年は群れていない。たっ
た一人でこちらを向いている。


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by obinborn | 2017-06-18 06:21 | blues with me | Comments(0)  

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