グラム・パーソンズ『GP』
今日も進歩しないおびっちはグラム・パーソンズ『GP』
(73年 Reprise)を聞いています。ザ・バーズ『ロデオ
の恋人』に参加したグラムは68年の英国ツアーの際、ロ
ンドンでストーンズとくにキース・リチャードと仲良く
なり、彼らにカントリー音楽の素晴しさを教えました。
また帰国してからは、やはりザ・バーズを脱退したばか
りのクリス・ヒルマンと意気投合してフライング・ブリト
ー・ブラザーズを結成します。しかしグラムは2枚のア
ルバムを発表後またもやバンドから離脱し、いよいよソ
ロ活動に備えました。その最初の成果が『GP』です。
収録曲をチェックしていくとオリジナルに混ざって、ボビ
ー・ベアのSTREET OF BALTIMORE、カール&パール・
バトラーのWE'LL SWEEP OUT THE ASHES IN THE MOR
NING、ジーン・ピットニーとジョージ・ジョーンズがデュ
オで歌ったTHAT'S ALL IT TOOKと3曲も正調ホンキー・ト
ンク・スタイルのカントリーを取り上げているのが興味深い
ですね。グラムの場合はクラレンス・ホワイトと違い、あ
まりブルーグラスには興味を覚えなかったみたいです。こ
こら辺はヴォーカリスト= GPとギタリスト=クラレンス
の立ち位置の違いを計らずも示しているような気がします。
カバーといえば意外なことにJ.ガイルズ・バンドのCRY ON
E MORE TIMEを歌っているのが面白いです。彼らが71年の
『MORNING AFTER』で発表したウルフ=ジャストマンの
書き下ろしでした。ここら辺はストーンズとの交流同様に
グラムがロック世代であることを物語るものでしょう。彼
のオリジナルでは単独で書いたA SONG FOR YOUとTHE
NEW SOFT SHOEのバラード2曲が秀逸で、憂いのあるヴォ
ーカルが一段と映えています。またフライング・ブリトー
時代の盟友クリス・エスリッジ(L.Aゲッタウェイ、FBB、
ライ・クーダー・バンド)との共作SHEは、ブッカー・T・
ジョーンズ&プリシア・クーリッジがカバーしています。
その盤にクリスがベースで参加している関係で「ちょっと
オレらの曲いいでしょ?使ってみる?」なんて会話があった
のかもしれませんね。そんな想像が音楽の楽しさです。カ
バーと言えばエルヴィス・コステロも本作からSHEと、HO
W MUCH I'VE LIEDを採用。またFBB時代にグラムとクリス
・エスリッジが作ったHOT BURRITO#2(I'M YOUR TOY)
を歌うなど、かなりの愛情を寄せています。
『GP』自体の音楽性は多くの曲でエミルー・ハリスとデュ
エットするなど、カントリー音楽の伝統のひとつ二重唱へ
の敬意が汲み取れます。70年代前半は数多くのカントリー
・ロックが生まれましたが、こういうクローズ・ハーモニ
ーにまで本格的にアプローチした者はあまりいなかったと
記憶しています。先ほど触れたホンキー・トンク・スタイル
(バック・オウエンズやマール・ハガードらのベイカーズ・
フィールド・カントリー)の実践然りです。
最後に余談ですが、78年にローリング・ストーンズはもろ
ホンキー・トンク・スタイルの名曲FAR AWAY EYESを発表
するのですが、「俺は今ベイカーズ・フィールドに車を走ら
せている」という歌詞が泣かせます。つまり今は亡きグラム
への追悼の意が仄めかされているのです。とくに彼に捧ぐと
明記されているわけではありませんが、大袈裟なトリビュー
トではなく、”ちょっと気の利いたやり方”に胸が熱くなって
しまいました。たぶんミックもキースもこの曲を書き上げた
時は達成感があったんじゃないでしょうか。そんなことを思
い出しながらこの『GP』を聞く夕暮れ時です。
by obinborn | 2017-06-20 18:38 | one day i walk | Comments(0)