ロッド・スチュワートの光と影

最初はアメリカ盤の”マンホール・ジャケ”で親しみました。
あれも路上という意味では悪くはありませんでしたが、サ
ニー・ボーイ・ウィリアムソンの『ダウン・アンド・アウ
ト』に似せたこちらに、より下町エレジーを感じたもので
す。ロッドのソロ第二作。フェイシズとの絡みでいえば彼
らが『ファースト・ステップ』を70年の3月にリリースし
たおよそ半年後の9月、この『ガソリン・アレイ』が発売さ
れました。フェイセズの一員としてワーナー・ブラザーズ
と契約を交わしつつも、一方ソロ・アーティストという立
場でマーキュリー・レコーズとライセンスしていたロッド
に二枚舌を感じるのは構いませんが、それだけ才能のある
シンガー/ソングライターだったことの証明では?とも思う
のでした。

事実この『ガソリン』でもバックを務めるのは、ロン・ウ
ッドg、ロニー・レインb、イアン・マクレガンkbd、ケニ
ー・ジョーンズdsといったフェイセズのメンバーばかりで
あり、彼らが契約に縛られず仲間とともに音楽活動をして
いた様子が計らずも明かされていきます。タイトル・トラ
ックの「ガソリン・アレイ」はスチュワート=ウッド作の
新しいトラッドでしたし、続くヴァレンチノズの「イッツ
・オール・オーバー・ナウ」には、R&B好きのロッドしか
もサム・クックの弟子であったボビー・ウーマックへの愛
がひしひしと伝わってきます。変化球として「ガソリン」
のフレーズを混ぜる茶目っ気もロッドならではのユーモア
でしょう。

アルバムはさらにボブ・ディランの「オンリー・ア・ホー
ボー」スモール・フェイセズのマリオット=レイン曲「マ
イ・ウェイ・オブ・ギビング」トーピン=ジョンの名曲「
カントリー・コンフォート」エディ・コクランの「カット
・アクロス・ザ・ショーティ」へと飛躍していきます。ま
たロッドが手掛けた「レディ・デイ」「ジョーの悲劇」の
哀愁はたまらないものがあります。とくに後者はのちにロ
ッドが自作する「キリング・オブ・ジョージー」に通じる
フォーキーな味わいとストーリーを言い伝える確かさを感
じずにはいられません。スワンプ・ロッカーのアラン・ガ
ーバーが在籍していたライノセルズの「アイ・ドント・ウォ
ント・ディスカス・イット」もすごくいい仕上がりですね。
これはデラニー&ボニー&フレンズも『オン・ツアー』で
演奏していました。

こうして『ガソリン・アレイ』を土曜日の夕方に聞いてい
ると、何ともたまらない気持になってきます。放埒な若者
の感情吐露というよりは、もっと実感を伴った何かを感じ
てならないのです。それは自分のガソリン・アレイから、
ちっぽけで寂しい町のなかから、しっかり世界のありかを
探していったロッド・スチュワートの影絵に他なりません
でした。陽気を気取るほど、町一番のロックンローラーを
着飾るほど、むしろ逆にロッドの孤独が見えてくる。華や
かなステージとは裏腹なバックステージでの悲しみが染み
亘ってくる。

ぼくにとってロッド・スチュワートとはまさにそんな肖像
でした。


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by obinborn | 2017-07-01 18:26 | rock'n roll | Comments(0)  

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