佐野元春&ザ・コヨーテ・バンドの新作『Maniju』に寄せて

綺麗な花束を携えた彼女。でもよく見てみると目には涙を
浮かべている。いわば華美な外見と孤独な内面。それは今
という時代に生きるぼくやきみ、彼や彼女の肖像ではない
だろうか?そんなことを思いながら、佐野元春&ザ・コヨ
ーテ・バンドの新作『Maniju』を聞いた。胸を撃ち抜くメ
ロディが幾つかの起伏を伴いながら、言葉たちを丁寧に運
んでいく。言葉にならないもの、さっき交わしたばかりの
会話から零れ落ちてしまったものさえも、佐野は目線を下
げながら、そっと掬い上げていく。

『COYOTE』『ZOOEY』『BLOOD MOON』と続いた”コ
ヨーテ三部作”は、大震災以前と以降を束ねるようなシリア
スな内容だった。そんな観念を前提にしつつも、本作『M
aniju』が開示するのはもう少し能動的な世界観だ。ビート
ルズからトラフィックもしくはXTCへと連なっていく色彩
感溢れるサウンド・デザインがあり、それらの音と言葉た
ちは、まるで10代の日々のように瑞々しく戯れ合っている。

世界は今日も悪意に満ち、きみを傷付け貶める。根拠のな
いSNSでの噂はどうだろう?そこに蠢く暗闇に突き落とさ
れるな。自分自身の目と手で感じてごらん。佐野元春が今
日も訴えるのはそういうことだ。『Maniju』の彼方にはな
だらかな丘が広がっている。朝露のような生命の息吹きが
ある。そして夕暮れ時にはいつも詩人たちが祈りを捧げて
いる。


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by obinborn | 2017-07-20 18:38 | rock'n roll | Comments(2)  

Commented by caorena at 2017-08-28 19:33
りーなです。ようやく自分のManiju感想を書き終えたので、読みに来ました。
私はアルバム全体を通してとても自由だと感じたのですが、なるほど、能動的という言葉がとてもしっくりきました。
「『Maniju』の彼方にはなだらかな丘が広がっている」素敵ですね。祈りを捧げる詩人たちが丘の向こうに落ちていったりしませんように・・・
Commented by obinborn at 2017-09-01 18:30
りーなさん、遅くなってごめんなさい。暖炉に灯をくべてでの
貴女の感想を拝見してからご返信差し上げようと思っていたので。今回のManijuは本当にSweet 16やフルーツ・アルバムへと連なっていくような色彩感が魅力的だとぼくは感じました。
16と61の奇妙な符合も(笑)コヨーテ・バンドの若々しい演奏と、佐野さんと息の合ったコーラスが素敵過ぎます!

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