2016年 05月 31日 ( 1 )

 

5月30日の宮田あやこ

久し振りに東京で2デイズを行った宮田あやこの、後半戦とな
る30日のライブを新宿のミノトール2で堪能した。現在は故郷
札幌をベースに地道な活動を続ける彼女だが、東京でキャリア
を磨いていった頃の懐かしい音楽仲間やファンで会場はいつの
間にか満席に。再会を祝すまたとない機会となった。札幌で宮
田を支えるピアニストの山下泰司を携え、第一部ではガーシュ
イン、バカラック、アーヴィング・バーリンなどのスタンダー
ド曲を丁寧に歌っていく。それも変に気張って歌唱力を誇示す
ることのない、原曲のイメージを大切にした素直な歌いぶりに
好感を覚えずにはいられない。

宮田あやこといっても、今の若い人達には知らない方々も多い
ことだろう。リンダ・ロンシュタットに憧れて音楽を志し、
80年にエピック・ソニーからメジャー・デビューした当時の
記憶をたぐり寄せていけば、彼女ほど歌そのものに情熱を注ぎ、
毅然と立ち向かっていった人は珍しかった。自分の歌を自分で
歌うシンガー・ソングライターは多く出現していたけれど、あ
くまでシンガーとして、何が大切であるかを問い掛けていった
宮田の姿は、まさにリンダのそれと重なり合うものだった。

ステージが第二部に移り、彼女にとって同時代の体験となる
西海岸ロック(リンダ、イーグルス、ボズ・スキャッグスな
ど)からの選曲で束ねられていく頃には、歌の親和力も俄然
増していく。パラシュートを始め輝かしい功績があるマイク
・ダンのベースに、センチメンタル・シティ・ロマンスの
細井豊によるオルガン、アコーディオン、ハーモニカなどが
加わり、宮田の歌はどんどん熱量を孕む。とくに細井が奏で
る、まるでブッカー・T・ジョーンズのようなシンコペイト
やグリッサンドに、長年に亘って修練を重ねてきた人ならで
はの含蓄を思った。

人はいつの間にか馴染んだリリックやメロディに自分だけの
景色を抱く。またそうした歌が街角から突然聴こえてきた時
に、不意打ちのような痛みを覚える。歌はその人が通り過ぎ
てきた歳月に寄り添うこともあれば、今の自分には眩し過ぎ
ると、自らの手で部屋の片隅へと追いやってしまうことも出
来る。そうしたことのすべてを宮田あやこは全身で受け止め
ながら、彼女ならではの経験の歌へと塗り替えていった。終
盤に歌われたキャロル・キング作、way over yonderの鮮やか
さはどうだろう。遠く離れた北の街でも、瓦礫に被われた南
の土地でも、宮田あやこの歌は人々の心をいつの間にか溶か
していく。

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by obinborn | 2016-05-31 01:22 | one day i walk | Comments(0)