2017年 05月 28日 ( 1 )

 

架空連載小説『レコ屋太郎の物語』その4(最終回)


おはようございます。今朝も10時に出勤し店内の掃除をし、
昨日終わらなかった値付け作業を粛々と始めるぼく(太郎)
です。するとオビ店長が入っていました。「おはよう太郎。
昨日は16時戻りと言いながら結局帰れなく悪かった」「い
えいえオビさん、たぶんお忙しかったんでしょう」「ああ、
まあな。そのコレクターさんが全処分されるというのでな、
これはとても一日では終わらない作業だと判断し、その方
と飲み屋に行きいろいろ相談してな〜」「そうだったんで
すか〜。ところでその方のコレクションはどうでした?」
「おお太郎、よく訊いてくれたな。この一件で当分ウチの
商いはまかなえるぜ!」

するとオビ店長は一気に語り始めました。そのコレクター
さんが現在82歳の高齢であること。奥様に先立たれて以来
塞ぎ気味なこと。もう収集への意欲を失ってしまったこと。
そして膨大なレコードの数々...。何しろ所有枚数は25,000
前後であり『江古田レコード』の倉庫一つでは扱えないこと
が解ったのでした。「オビさん、どうしましょうか?」「
うむ、とりあえず彼の自宅に通わせて頂ける了解は得た。
ウチのバンで順次運び続けるしかないだろうな。何しろス
トーンズの英米日盤だけで相当あるで!ユニオンさんに持っ
ていかれない案件で心底ほっとしとるわ」

「ところで太郎、昨日変わったことはなかったか?」そう
訊かれたぼくは内心ドキドキしました。清美さんのことを
言うか言うまいか判断が付かなかったのです。でも別に隠
すことでもないと思ったので告白したのです。「おお清美
ちゃんか。元気でやっとるかいなあ〜。たぶん太郎と歳も
違わんと思うよ。オイラは業界が長いから彼女のことは良
く知っとる。最近の若い連中のなかでは群を抜いて研究熱
心なコでな。ちょっと耳に挟んだハナシやが、ビートルズ
しか集めないカレ氏にもういい加減愛想が尽き、先日別れ
たばかりみたいだよ〜」

「よし、これなら勝てる!」そう心に誓ったぼくは嬉しさ
のあまり、通常清掃に加えワックス掛けまでしたのでした。
午前11時『江古田レコード』開店の時間です。いらっしゃ
いませ!(了)


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by obinborn | 2017-05-28 05:44 | Comments(0)