カテゴリ:東京ローカル・ホンク( 69 )

 

5月14日の東京ローカル・ホンク

14日は渋谷のB.Y.Gにて東京ローカル・ホンクのワンマン・ライブ
を。日本語の綺麗な響きを精緻なカルテット編成で実現する彼らの
世界に3時間たっぷり浸った。明晰な歌唱と弾力ある演奏との合致。
言葉にするのは簡単だが、当意即妙なバンド・サウンドにこの道20
年以上のキャリアを感じずにはいられない。本人たちは謙遜するば
かりだが、その昔はっぴいえんどやはちみつぱいが切り拓いた”日本
のロック”をホンクメンはどんどん更新しつつある。先人たちとの違
いは伝説になっているか否かだけ。それならば今という時代をしっか
り呼吸しているホンクにエールを送りたいと思うのは、けっしてぼく
だけではないだろう。

バンドのソングライターである木下弦二が生まれ育ったのは品川区
の戸越銀座だという。その町から見えるものを彼は歌にしていく。
飾られた言葉もなければ余計な修辞もないが、スケッチされた世界
のひとつひとつが聞く者の胸に染み渡り、じっくりと反芻を促す。
とくにこの日は生まれたての「dark matter」がバンド・ヴァージョ
ンで初披露されるというレアな機会になった。無邪気なままに音楽
を始めた青年たちが、いつしか社会の裂け目に出喰わす。そんな新
曲の行方を見守っていきたい。

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by obinborn | 2016-05-15 06:19 | 東京ローカル・ホンク | Comments(0)  

4月15日の木下弦二

15日は木下弦二のソロ・ライブを中央林間のパラダイス本舗
にて。同店での彼の弾き語りは2ヶ月半ぶりだったが、今回
もまたパラ舗ならではのアット・ホームな雰囲気に包まれた。
発売されたばかりの初ソロ作『natural fool』から「遅刻しま
す」や「夏みかん」、覚和歌子と歌詞を共作した「夜道」を
披露するばかりか、東京ローカル・ホンクのヴァージョンが
すっかり身体に馴染んでいる「お手紙」「昼休み」「ブラッ
ク里帰り」などをソロならではの手触りで奏でていく。ある
いは自作にこだわらず、千昌夫「星影のワルツ」を輪郭のは
っきりした発声でじわりと染み込ませるのも弦二ならでは。
そのひとつひとつに彼がこれまで辿ってきた道のりが反映さ
れ、聞き手たちへと共有されていった。

驚かされたのは新曲「dark matter」のこと。弦二は生まれた
ばかりのこの歌を聴衆の前で試してみたかったのだろう。何
と彼は計3回「dark matter」を取り上げ、解らないことに向
き合っていこうとするメッセージを託していった。熱心なホ
ンク・ファンならご存知のように、あの名曲「みもふたもな
い」にも通じる問いかけや煩悶がそこにはあり、初めて聞い
たにもかかわらず筆者の心を満たした。またこの夜は中盤か
らパラ舗のマスターである藤田洋介をギターに迎え、「ザッ
ト・ラッキー・オールド・サン」や「国境の南」など夕焼け
楽団の曲を計4つとサーヴィスもたっぷり。とくに「国境の
南」でのメキシコ情緒、洋介のランドマークとなる名曲「星
くず」での甘美なフレージングとソロはまさに鳥肌モノだっ
た!

木下弦二の歌、あるいはホンクの含蓄ある演奏を聞き始めて
からもうすぐ10年近くになる。彼らはこれからもけっしてそ
の歩みを止めることはないだろう。雲がどんどん流れてく。
影がだんだん長くなる。

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by obinborn | 2016-04-16 02:00 | 東京ローカル・ホンク | Comments(2)  

3月3日の東京ローカル・ホンク

バンド・サウンドの贅を尽くしたような東京ローカル・ホン
クのライブを3日は高円寺のJIROKICHIにて。木下弦二のソ
ロ弾き語りによる「生きものについて」からまずは始まり、
2曲めの「引っ越し娘」でバンドが合流。さらに「お手手つ
ないで」「虫電車」「お手紙」へと連ねる序盤から、早くも
全開となったホンク・ワールドに酔った。弦二が今月初めて
のソロ・アルバム『natural fool』をリリースするとはいえ、
やはりみんながホンクの四人を待ち焦がれていたのだろう。
平日にもかかわらず満員となった会場の熱気がそれを雄弁に
物語っていた。肩肘張らない歌と演奏。ただそれだけの営為
が音楽としての豊かさをもたらし、歌われる言葉を彩りある
”生きもの”へとトランスフォームしていく。そんなエレメン
トの数々に満たされていた。弦二のソロに収録された「夏み
かん」「夜明けまえ」「遅刻します」といった楽曲も、カル
テット編成で再解釈すればこうなるよ、という驚きがあった。
とくにカットアップの手法で様々な俳句を無造作に並べてい
く「またあおう」が、ホンクならではの柔らかいサウンドス
ケープで描かれていったことに筆者は感じ入った。この曲に
入る時のMCで弦二が「意味が解らない歌詞っていいもので
す」といった旨を語っていたことも腑に落ちた。友部正人の
「解らない言葉で歌ってください」ではないけれども、そこ
からは安っぽい主張や直截的な政治性の数々から迂回してい
く彼らの心映えがはっきり伝わってくる。前身となる”うず
まき”時代を含めれば優に20年を超えるキャリアを誇るホンク。
遥か昔のある日、偶然にも四人の青年が集まり、それぞれの
楽器を奏でていった。いわばゼロの地点からのスタートだ。
その日から辛抱強く丁寧に積み上げられていった言葉と音。
それらの価値を思わずにはいられない。

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by obinborn | 2016-03-04 01:34 | 東京ローカル・ホンク | Comments(0)  

1月31日の木下弦二

まるでジョアン・ジルベルトが降りてきたような夜だった。
柔らかい声とセミアコによる深みのある響きがどこまでも
歌を押し広げていく。そんな木下弦二の弾き語りソロ・ライ
ブを31日は中央林間のパラダイス本舗にて。「遠い願い」で
始まり「ハイウェイ・ソング」で締めくくられるまでの150
分は濃密でありながら、飽きたらよそ見してもいいんだよと
でも言いたげな主人公の心のありようが聞き手たちを優しく
包み込んでいった。終盤には藤田洋介を迎えて彼が夕焼け楽
団に在籍していた70年代の「ザット・オールド・ラッキー・
サン」「星くず」「バイバイ・ベイビー」を連ねるなど、サ
ーヴィス精神もたっぷり。そして弦二は昨朝出来たという新
曲も披露した。まだタイトルが付けられていない産声を上げ
たばかりの歌だったが、そんな瞬間に立ち会えたことを嬉し
く思う。終始ピックを使わないギターがデリケートなニュア
ンスを醸し出すところもたまらない。いい歌を聞いた夜は帰
りの電車が少しも苦痛ではない。家に帰ってきて飲む紅茶が
美味しい。そしてこんな時は無音とともに過ごしたい。時計
の針はもうすぐ午前2時を指す。

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by obinborn | 2016-02-01 02:00 | 東京ローカル・ホンク | Comments(0)  

木下弦二『natural fool』

木下弦二はいつも二つのことを強調する。一つはロック的な
価値観から離れてみて初めて自分の音楽が見えてきたこと。
もうひとつは彼にとって歌は自分の目で見る”窓”であること
だ。最初は誰もが洋楽の模倣から何らかの音楽活動を始める
のだろうが、そんな無邪気な日々はいつまでも長く続かない。
借り物の表現にはおのずと限界があり、歌の作り手たちはそ
こで壁にぶつかるからだ。この8年あまり木下弦二のステージ
やオフに触れてきて、今ぼくが思い起こすのはそんな彼の言
動である。弦二はこんな風に述懐する「ある日突然気が付い
たんです。ロック的なカッコ良さを求めていた自分は何てカ
ッコ悪いんだろうって」

そんな木下弦二にとって初めてのソロ・アルバムが『natural
fool』(2016年2月発売)だ。自分という窓から歌をスケッチ
しているという意味でも、飾らない言葉がすくっとこちらの胸
に降りてくる。起承転結のあるドラマやら暑苦しいメッセージ
やらを押し付けるのではなく、彼は歌という”窓”を借りて問い
掛ける「想像してごらん」と。歌われる言葉は簡素だが奥行き
があり、聞き手が重ねた歳月や経験によって幾多の色を自由に
塗っていける余白を残している。また優れた共演者たちが弦二
の介在役となることで一曲のなかで遠近法が可能になり、歌に
静かなケメストリーが生まれた。そのことを祝したい。

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by obinborn | 2016-01-25 19:27 | 東京ローカル・ホンク | Comments(0)  

木下弦二の『natural fool』に寄せて

「ぼくたちのバンドを聴いてみてください」木下弦二から突然
電話が掛かってきたのは07年の夏のことだった。ぼくはちょう
どお昼に定食屋で御飯を食べていた時だった。そんなことまで
よく覚えている。あれから8年が経ち、今こうして彼初めてのソ
ロ・アルバムに接していると、人との出会いの偶然に感謝せず
にはいられない。平易な日本語を綺麗に響かせる人だなという
のが最初の印象。やがて自分の暮らしてる町の様子や人々の表
情をスケッチした彼のソングライティングにすっかり夢中にな
った。今回の『natural fool』にはそんな弦二の世界がたっぷり
詰まっている。東京ローカル・ホンクで演奏してきた代表曲の
ソロ・ヴァージョンもあれば、比較的最近生まれた歌もあると
いった具合で、これから彼を聴いてみようという方にも名刺代
りにお薦めしたい。優れた歌には二律相反の感情があるとよく
言われる。それは楽しい歌を聴いているうちに悲しくなってく
る心の糸口のようなもので、陽光に照らされれば照らされるだ
け自分の影が伸びていくのと似ている。木下弦二はそういう影
絵のような歌を作れる人だ。

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by obinborn | 2015-12-04 17:36 | 東京ローカル・ホンク | Comments(0)  

12月3日の木下弦二

3日は吉祥寺のスターパインズ・カフェで木下弦二のライブを。
彼にとって初のソロ・アルバム『natural fool』のレコ発(先
行発売)だっただけに会場は大入りの祝祭感に包まれた。それ
でも彼は普段通りの気さくな歌と演奏を淡々と進めるだけ。そ
んな展開にますます好感を持った。ぼくは東京ローカル・ホン
クと合体した時の弦二の緊密な演奏が最も好きだが、セミアコ
の弾き語りを中心にした今晩のような内容だと、よりソングラ
イターとしての素の部分に触れる思いがする。そうした歌とギ
ターの場合でもほとんどフォーク的にはならず、むしろジョア
ン・ジルベルトやカエターノ・ヴェローゾといったブラジル音
楽の芳香を湛える辺りに非凡な感性を感じる。弦二本人がどこ
まで意識しているのかは解らないが、この人には歌の多義性に
すべてを賭けているような部分がある。もう少し優しい言葉で
言えば、歌に解り易い起承転結を求めるのとは真逆の、聞き手
たちそれぞれにイマジネーションを委ねる作法だ。作者はあく
まで言葉と音によるスケッチをするだけ。後は自由に色を塗っ
てください、とでも言いたげな。最も感動的だったのは神の不
在について歌った「身も蓋もない」あるいは彼が静岡で試みた
連詩の「また会おう」だろうか。平易な言葉たちが互いに語り
合い、反応を確かめ合いながら、港からそっと舟を漕ぎ出して
いく。そんな光景にも似た静謐で得難い夜だった。

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by obinborn | 2015-12-04 01:18 | 東京ローカル・ホンク | Comments(0)  

11月7日の東京ローカル・ホンク

7日は東京ローカル・ホンク今年最後のワンマン・ライブ
を高円寺のJIROKICHIにて。彼らの多くの曲をまるで自分
の手足のように親しんできた自分だが、やはり一期一会の
演奏へと接するたび新鮮な気持に襲われる。地響きのよう
に轟く和声といい、複雑に入り組んだリズムといい、音楽
的にはとても複雑な語彙を用いているのに、それらをごく
シンプルで優しく聞かせるところに、キャリア20年の業を
思った。四人が奏でる楽器が自然に溶け合いつつ空間を満
たしていく。そこにロック・カルテット理想の姿を思わず
にはいられない。

日常のありふれた言葉を用いながら、町をスケッチし人々
の様相を切り取る。そんな木下弦ニのソングライティング
が、この夜も表情豊かな演奏によって命を吹き込まれた。
セットリストで言えば、「拡声器」「はじまりのうた」
「昼休み」「お手紙」といった楽曲がその最たるものだろ
う。アカペラで歌われた「サンダル鳴らしの名人」「夏み
かん」「夜明けまえ」の3曲も、ステージと会場との垣根を
取り払っていく親密さに満ちていた。また長尺ジャムとし
て終盤を飾った「社会のワレメちゃん」とそれに続いた新
たな名曲「身も蓋もない」では、今直面している厳しい現
実に対する個人の声が発せられていく。「身も蓋もない」
の歌詞を一部紹介しよう。「ブルーズなんてみんな借り物
の言葉さ/ロックンロールなんてただの習い事/今思い出す
のはあの日の子守歌/網戸から夜道に流れる笑い声/効き目
のある祈りの言葉を教えて欲しいけど」

もしジョン・レノンが今も生きていたら、きっと木下弦二
のような言葉を携えていただろう。弦二のように曇りのな
い目で世界のありようを見つめていただろう。

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by obinborn | 2015-11-08 01:44 | 東京ローカル・ホンク | Comments(0)  

10月16日のホンクと春日博文

16日は東京ローカル・ホンクwith春日博文のライブを高円寺の
JIROKICHIにて。現在は韓国を拠点に長く活動を続けるハッチ
が久し振りに帰国したこともあり、熱量漲るステージングとな
った。第一部はホンクが普段通りのオリジナル曲を演奏し、一
部の終盤及び第二部から春日を迎えてのブルーズ・セッション
が繰り広げられていく。BOOM BOOM、STOMY MONDAY BL
UES、GET OUT OF MY LIFE WOMAN、NOBODY LOVES YO
U WHEN 〜〜といった選曲自体はとくにマニアックなものでは
ないものの、全員音楽少年へと戻ったように笑顔でプレイする
姿が清々しい。ストラトキャスターとレスポールのゴールド・
トップを曲によって使い分け、ワウワウ・ペダルを踏みまくり
ながら澱みのないソロを繰り出していくハッチのギターは圧巻
だった。そんな彼と張り合うのではなく、自分らしい音色と語
彙で別のパートを織り成していく井上文貴と木下弦二のギター
もいいコントラストを描き出す。とくに春日のオリジナル・イ
ンスト「秋のブルーズ」のうっとりするようなコード進行と三
人でじわじわと織り成していくメインのフレーズには思わず溜
め息が出るほど。カルメン・マキ&OZ時代はもとより、仲井戸
麗市との荒れ狂うようなバトルを耳にしてきた筆者も思わず涙
してしまった。そんなハッチがまるでザ・バンドのような歌心
とプレイヤービリティに満ちたホンクの柔らかい音群に囲まれ
ていく。向こう見ずの年頃には求められなかった余韻をしっか
りと携えてゆく。その瞬間瞬間に愛おしさを感じずにはいられ
ない夜だった。
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by obinborn | 2015-10-17 00:50 | 東京ローカル・ホンク | Comments(0)  

9月19日の東京ローカル・ホンク

ツアー中日の東京ローカル・ホンクを19日は武蔵小山の
Againにて。約一ヶ月ぶりに接する彼らだったが、この日
もホンクの飾らない日本語のロックが心の底まで染み渡っ
た。ことさら聞き手を選ばない間口の広さが彼らにはあり、
日常をスケッチした歌詞にしろ、含蓄あるバンド・アンサ
ンブルにしろ、もはや他の追随を許さないといったところ
だ。「サンダル鳴らしの名人」のアカペラ・コーラスが終
わるとすぐさま「ハイウェイソング」になだれ込んでいく
序盤の展開からして、人力で出来ることのすべてを注ぎ込
んだ演奏にその道20年(実際はもっと)のキャリアが滲ん
でいた。終演後グループのソングライターである木下弦二
に、シリアスな世相が今後のホンクにどう影響していくか
を訊いてみたのだが、彼は直接的なメッセージソングは今
後も歌わないでしょう、と頼もしい答えが返ってきた。そ
の矜持は聞き手である私にもよく解る。何故なら彼らの楽
しい歌の背後に深い悲しみを感じるから。まるで影絵のよ
うなニュアンスをたっぷり含んだ「夏みかん」はどうだろ
う。生まれたての生命のことを親の目線で慈しんでいるよ
うなこの歌に、私たちは無邪気と喪失という両方の感情を
覚える。平易な言葉が多くの感情を伴って響き渡ってくる
さざ波のことを思う。

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by obinborn | 2015-09-20 00:16 | 東京ローカル・ホンク | Comments(0)