カテゴリ:中村まり( 39 )

 

12月28日の中村まり

28日はsakana、中村まり、ロンサム・ストリングスという
贅沢過ぎるスリーマン・ライブを所沢のMOJOにてたっぷり
堪能した。ベン・ワットとトレイシー・ソーンを思わせる男
女デュオのsakanaは、ポコペンのメリハリある歌唱が過日と
少しも変わらず健在。まるで朝露のように瑞々しい音楽を今
日も届けてくれた。そのことを讃えたい。

二番手の中村まりはまだスタジオ・レコーディングされてな
いTHROUGH MY HEART AGAINや、STILL IN THE SUNなど
新曲を中心に組み立てた構成が新鮮であり、とくにINTO TH
E CLOUDSの鮮烈な歌唱には思わず鳥肌が立った。またカバ
ーではディランのRING THEM BELLSやポール・マッカートニ
ーの「幸せのノック〜LET 'EM IN」を、フォーキーな独自の
解釈で演奏して聴衆たちをたちまち魅了する。中村の”マッカ
ートニー愛”に関しては、まめに彼女のライブに通ってきた者
ならば、Rocky RaccoonやMull of Kintyreが登場した日々を、
懐かしく思い起こされた方々がいらっしゃるかもしれない。

今夜の締めは新作『Soundtrack』をリリースしたばかりのロ
ンサム・ストリングスだ。その新譜からはジョン・サイモン
のLast Summer、ディランのサウンドトラック・アルバム『
ビリー・ザ・キッド』から5曲を束ねながら、インストゥルメ
ンタル・バンドならではのイメージの自由な飛躍へと賭けて
いく。腕達者であり音楽心を持ったストリング・カルテット
ならではの光景だ。その演奏のひとつひとつを記憶出来れば
どんなに素敵なことだろう。

ロンサム・ストリングスはこの夜最後の曲として、故:大原裕
の名曲「旅行」を選んだ。その後のアンコールでは久し振りに
中村まりとジョイントしながら、2011年の記念碑『フォークロ
ア・セッション』に収録されたThe Cuckoo Birdと、ウディ・
ガスリーのHard Travelin'を奏でた。音楽というケメストリーは
遥か時空を超えてやって来る。そんなことを思わずにはいられ
ない夜だった。

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by obinborn | 2016-12-29 03:21 | 中村まり | Comments(0)  

9月19日の中村まり

19日は中村まりのワンマン・ライブを高円寺のGrainにて。
幾つかのイベントやワークショップへの出演はあったもの
の、東京での公演は約半年ぶりのことになる。何でも新し
いスタジオ・レコーディングとソングライティングに集中
したいとの理由だったが、いずれにしても、こうして久し
振りに中村の歌に触れられるのは嬉しい限り。変わってい
ないと言えば、いささかの変化もないのだろうが、そのぶ
ん毎朝の食卓に差し出されるパンやスープのように、感謝
の気持が小躍りするフィンガー・ピッキングとともに溢れ
出す。

”フィドルとドラムスとともに" そうサブタイトルが付け
られたように、今回は手島宏夢と田嶋友輔のサポートを伴
なったものであり、僅かに膨らみを増した演奏が頼もしい。
中村自身も普段より多めにバンジョー・チューンへ挑戦す
るなど、オールド・タイム色が全面に押し出されていく。
またポール・マッカートニーの「Let'em In~幸せのノック」
や、レオン・レッドボーンの「Shanpane Charie」といった
比較的モダンな楽曲を、砂埃舞うようなフォークやブルーズ
へと咀嚼するアレンジメントにも脱帽せずにはいられない。
まだレコーディングされていない中村のオリジナル新曲も幾
つか披露された。ライブの場で次第に鍛えられていったThro
gh My Heart Again、When the Days Is Over、Mockin'birdに
加え、この夜初めて披露されたInto the Cloudsはとくに秀逸
だった。

ブラインド・ウィリー・マクテルの戦前ブルーズ「Delia」を
取り上げる一方で、彼女のこうしたオリジナル曲群がどれも
洗練された響きを携えているコントラストが面白い。それは
現代っ子である中村の屈託のなさ故なのかもしれない。その
ようにして、彼女の歌は古いアメリカと現代の日本との間を
自在に往来する。昨日と明日との狭間で揺れ動いていく。

繰り返される毎日のなかで、この人は何を見つめ、どんなこ
とに思いを馳せているのだろう。そんな風に思わせるソング
ライターは、僅か数えるほどしかいない。中村まりは過去の
遺産を抱えながら、いわし雲のようなソングライティングに
自身を投げかけながら、これからも歩み続けていくのだろう。
そんなことを確信しながら、雨のなか帰路に着いた。

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by obinborn | 2016-09-20 01:26 | 中村まり | Comments(0)  

12月23日の中村まり

23日は中村まりのクリスマス・ライブを下北沢のラカーニャ
にて。今年で4回めとなる恒例行事だが、原さとしのバンジョ
ーと安宅浩司のギター&マンドリンという従来の編成に加え、
今回は手島宏夢(ハニークッキーズ)のフィドルを加えると
いうヴァリエイションがあり、普段にも増して楽しめた。そ
れにしても驚かされるのは選曲の鋭さ。世にクリスマス・ソ
ングは数多くあれど、シーガー・ファミリーなど40年代のア
メリカで歌われてきたそれらを取り上げるのは中村くらいの
ものだろう。それも奇を衒ったアプローチではなく、彼女が
普段から奏でている音楽と自然な結び目を作る辺りに、静か
な情熱を感じた。実際筆者が知っていたのはBright Morning
StarとAngel Bandくらいであり、徹底して古い歌を採集して
くるその姿勢はまさにフォーク・シンガーそのもの。以前に
中村は「オリジナルを歌う時と違い、カバーソングの場合は
背負うものが少ないだけ、歌の介在者になれる気がします」
と語っていたが、さしずめこの日はその実践編と言うべきも
の。ディーヴァ(歌姫)という形容が安直に使われがちな昨
今にあって、歌の巡礼者たらんとする中村まりの地に足を付
けた活動ぶりが頼もしい。虚飾のないステージングとともに、
彼女の歌心が染み亘る特別な夜となった。

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by obinborn | 2015-12-24 11:49 | 中村まり | Comments(0)  

11月3日の中村まりと塚本功

11月3日は中村まりと塚本功のツーマン・ライブを吉祥寺の
クアトロ・ラボにて。二人の顔合わせは久し振りのことだっ
たが、かつて中村が塚本のギター・レッスンを受けていたと
いうだけに息の合った共演を聞かせてくれた。まずは中村が
自作のThrough My Heart Againからミシシッピ・ジョン・ハ
ートのSlidin' Deltaへと序盤を繋ぐなどソロ・パートを披露。
最新曲として歌われたOne Thingや、もはや名曲の風格を湛
えてきたStill In the Sunなどを耳にしていると、自然に新し
いアルバムへの期待が募ってくる。またデイヴ・ヴァン・ロ
ンクやカーレン・ダルトンも演奏した古典Green Green Roc
ky Roadや、バンジョーに持ち替えて歌われたトラディショ
ナルLittle Burdieでも、技量を伴ったシンギングが冴え渡る。

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第一部の最終曲Caught in a Roundaboutでは、フルアコを抱
えた塚本が加わり、二部からはしばし彼の時間帯が繰り広げ
られた。お箱であるマジック・サムのFeelin' Goodを掻き鳴
らしつつ客席を練り歩くなど、塚本は百戦錬磨のステージで
湧かせるが、一方でスキッター・ディヴィスの End of the Wo
rldや幾つかのオリジナル・ソングでナイーヴな心持ちもたっ
ぷり。そういえばギター・インスト版でザ・バンドのin a S
tationを奏でる心憎い演出もあった。

そして終盤は二人がジョイントすることで、生ギターとフル
アコとが絶妙に溶け合っていく。塚本が「デューク・エリン
トン最高のロックンロール!」とアナウンスした後に爆発す
るCaravan、先日惜しくも他界してしまったハース・マルテ
ィネスのAltogether Alone、ファッツ・ウォーラーのEveryda
y Is a Holidayなどがこちらの胸の閊えを癒してゆく。意外な
ことにR.C.サクセションの「たとえばこんなラブ・ソング」
まで飛び出したほど。21世紀になってから15年め。武蔵野の
一角から過去の優れた楽曲と愛おしいオリジナル・ソングと
が互いに微笑み合うナイスな夜となった。

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by obinborn | 2015-11-04 00:36 | 中村まり | Comments(0)  

9月12日のロンサム・ストリングスと中村まり

2011年の夏に名作『Folklole Session』を生み出したロンサム
・ストリングスと中村まりが久し振りに再会したライブを12
日は吉祥寺のMANDALA2にてとことん堪能した。中村は日頃
から共演者ごとに様々な音楽地図を描いていくのだが、ロンサ
ムと合体した時の音空間は一種独特であり、深い陰影を湛えた
この夜のサウンドスケープには息を吞むばかりだった。オープ
ニングはまずロンサムのみでSnow QueenとDeja Vuが束ねられ、
エフェクターを駆使した桜井芳樹のエレクトリック・ギターが
ジョー・ヘンリーやT・ボーン・バーネットにも通じる音響を醸
し出していく。3曲めでようやく中村が加わりカーター・ファミ
リーのLonesome For Youが歌われる。いわば中村まりのルーツ
音楽探訪を腕達者なロンサムの4人が手助けしながら、現代的に
アップ・トゥ・デイトしていくといったところだ。名盤『Folkl
ore Session』とその副産物的な『Afterthoughts』からの楽曲を
中心に据えながらも、カーレン・ダルトンのウッドストック・
アルバムでも馴染み深いスコットランド・チューンKatie Cruel
を初披露するなど新しい収穫もあった。カーレンに倣ってこの
日の中村もバンジョーとともに歌い始めたが、それがいつの間
にか音数を増し、強力なアンサンブルへと化けていく部分にロ
ンサムの面々の実力を感じずにはいられなかった。桜井のギタ
ーが効果を上げながらも後半ブズーキへと持ち替え多彩な音色
を繰り出すBound To Fallなどまさに出色であり、きっとブリュ
ーワー&シップレイもスティーヴン・スティルスも悔しがるに
違いない。ただ個人的な感覚としては、MCがやや冗長で曲と
曲との自然な流れを断ち切ってしまっていたことを残念に思う。           優れた演奏家たちによる素晴しい連携の連続だっただけに、そ
の点のみが惜しまれる。

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by obinborn | 2015-09-13 00:56 | 中村まり | Comments(2)  

8月7日の中村まり

7日は中村まりのワンマン・ライブを高円寺のGrainに
て。今回はハニー・クッキーズの手島宏夢をフィーチャ
ーしての”バンジョーとフィドル”が掲げられたテーマで
あり、普段よりもオールドタイム色に彩られた音楽展開
にしばし時間を忘れるほどだった。オープニングに中村
が自作のLittle Houseを一人で弾き語ると、2曲めからは
早くも手島が登場し、以降二人の共演を中心にしながら
ときに中村がソロになるといった塩梅。二人が奏でる音
楽はミシシッピ・ジョン・ハート、チャーリー・プール
そしてバスコム・ラマー・ランスフォードといった古い
アメリカ音楽から、21世紀のカナダが誇る逸材ロン・セ
クスミスまでの時間軸があるものの、それらを自分の歌
としてアップデイトしていく彼らの卓越した感性と技量
にただただ息を呑むばかりだった。

ジーンズに綿の上着という中村まりの衣装はまるで60年
代末期のジョニ・ミッチェルやカーレン・ダルトンがそ
のまま抜け出してきたかのようだが、そんな中村がギタ
ーやバンジョーとともに繰り出す歌は、時間という歳月
を乗り越えながら迫ってくる。1940年代のアメリカ南部
で歌われた伝承曲もあれば、彼女の卓越したソングライ
ティングを鮮やかなまでに物語る名曲Night Owlsもあっ
た。中村はそれらの歌を時空を超えながらひとつひとつ
丁寧に束ねてゆく。オーガニック・ブームとして消費さ
れていくだけの”ナチュラルな歌”とやらとは明らかに異
なる土の匂いや陽炎のゆらめき。フィンガー・ピッキン
グひとつを取ってみても、そこに感じられるのは修練を
重ねた演奏家の姿だった。

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by obinborn | 2015-08-08 01:49 | 中村まり | Comments(0)  

中村まり『Beneath the Buttermilk Sky』LP盤の発売に寄せて

先日のラカーニャでも会場販売していた中村まりのアナログ・レコード『Beneath the Buttermilk Sky』を聞いていると、アルバムとしての起承転結がCDよりもはっきり伝わってくる。むろんCDのシークエンスであったとしてもそうした起伏というか流れを感じていたが、AB面がくっきりと分かれた構成によって、一曲ごとの印象がさらに強まった気がする。今から5年前の09年にリリースされた彼女のセカンド・アルバム(自主制作盤は除く)だが、こうしてLP化された意義は少なくない。

ご本人もMCで「元々デジタル・レコーディングされたものですから正確にはアナログ録音ではありません」との旨を話されていたし、それは確かにその通りなのだが、ぼくはオーディオ的な尺度よりも前述したようにアーティストの意図がより汲み取れるという意味で嬉しくなった。実際の音にしてもCDよりも全体のニュアンスが温かく包み込まれるような感じで、普段接しているライブでの生々しさに似ている。

それでも弾き語りのソロなり2〜3人の演奏者なりを帯同した中村の通常のステージに比べると、フィドルなりベースなりドラムスなりと音数が僅かに多いことに気が付く。これはやはりスタジオ・レコーディングならではの届け方だと思う。けっしてシンプルさを損なっているわけではない。それぞれの楽器が控えめに歌を守り立てながら、ちょっとだけ彩りを増しているといった印象だ。ミシシッピ・ジョン・ハートのヴァージョンを参照した伝承曲「Lonesome Valley Blues」が終わると、ソングライターとして彼女が思いの限りを込めた名曲「Night Owls」が静かに滑り出し、松永孝義のコントラ・バスと部分部分での弓弾きが歌を支える。そしてB面ラストにはエンドロールのように「Going Back To My Home」が置かれている。そうしたアルバム後半を連ねる3曲を取り出してみるだけでも、曲と曲との間に音のないドラマがあり、それを感じてくださいとでも言いたげな中村まりというアーティストの心映えがくっきりと浮かび上がってくる。終曲「Going Back To My Home」がいったん終わり、わりと長い無音の時間を経てからインストゥルメンタル版で「This Old Map」が僅かにリプライズされていくことを思えば、なおさらだ。

CD版がリリースされてからの5年間を振り返ってみると、ちょうど自分が中村のライブに通い始めた時期と重なることもあって、様々な思いがよぎる。ソロ活動とは別のロンサム・ストリングスとのコラボレイトがあり、松永孝義との永遠の別れがあり、千ケ崎学という素晴しいベース奏者との出会いがあった。中村まり自身も「HoldMy Little Hand」「When The Day Is Over」そして「Still In The Sun」といった新曲をリストに加えてきている。そう、時間はけっしてそこに留まることなく前進している。そんなことに考えを巡らせていると、一曲めに置かれた「A Brand New Day」がより輝きを増してゆく。

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by obinborn | 2014-12-27 01:56 | 中村まり | Comments(0)  

12月23日の中村まり

毎年恒例となりつつある中村まりのクリスマス・ライブを23日は
下北沢のラカーニャにて。この日ばかりは中村も数あるオリジナル
曲を幾つかに留め、古くからアメリカに根指すクリスマスにまつわ
る伝承曲を積極的に取り上げていく。そのどれもが素朴で慎ましか
ったかつての暮らしを思い起こさせたり、見上げた夜空に星々があ
る日々に感謝するような愛おしい曲ばかり。まるで片田舎にある民
家に招かれて暖を取っているような感じだ。実際有名なのはWINTE
R WONDERLANDくらいで、BRIGHT MORNING STARや「ベルツ
エムの星」など渋いナンバーが次々と繰り出されるなど中村の研究
熱心さに驚く。それも彼女の場合まったく無理をしていないばかり
か、その落ち着いた声とともにごく自然に歌たちと手を携えていく
姿が頼もしい。古くから中村と帯同することが多い安宅浩司による
温かく膨らみのあるスライド・ギターや、ロンサム・ストリングス          でもお馴染みの原さとしの出しゃばらないバンジョーが、しっかり          中村の光となり影となって歌と共鳴し合っていたことも特筆したい。

一年なんて本当に早いものだ。昨年も一昨年の今頃も同じ会場で中
村が歌うクリスマス・ソングを聞いていたなあ〜などと思うと、自
分の変わり映えのなさに驚いたりもするけれど、それでも中村まり
という希有なソングライターと出会えたことの喜びを今夜もまた噛
み締める。そんな帰り道は足取りさえ軽やかだ。そういえば中村は
今夜ジョニ・ミッチェルのRIVERを歌ったっけ。「もし私が川だっ
たら、今すぐスケート靴を履いてあなたの元へと急ぐのに」

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by obinborn | 2014-12-24 00:13 | 中村まり | Comments(0)  

中村まり、スーマー、原さとしによるBANJO NIGHT

バンジョーという楽器がこんなにも彩り豊かなものだったなんて!
そんなことを思わずにはいられないBANJO NIGHTを23日は世田谷
の巣巣にて。何でも中村まりが以前からそっと温めてきた企画だっ
たらしく、この夜は斯界のトップ・プレイヤーである原さとしと、
先日新作を出したばかりのスーマーを両脇に配しながら、中村も自
らバンショーを弾くなど、まさにバンショーずくしの一夜となった。
選曲は自然とその楽器を活かしたオールド・タイムやブルーグラス
中心になるのだが、そこに各自のオリジナル曲が無理なく溶け込ん
でいく様は、1940年代のアパラチア地方と今現在の東京での暮らし
とを自在に跨ぎながら、両者を繋ぎ止める静かな情熱に満ちていた。

こうやって帰りの電車のなかで思い起こしていくだけでも、例えば
スーマーの実直そうな歌はウディ・ガスリーが生きた時代を自分の
物語としてしっかり引き寄せていく力があったし、中村まりのヴォ
ーカルが普段にも増して野性的となり、まるで野ウサギのように駆
け巡っていく様は、普段から中村のライブに通い慣れた筆者にとっ
ても驚きの連続だった。素晴しい自作曲は勿論、ロン・セクスミス
からポール・マッカートニーまで彼女のステージは自在に飛躍する
のだが、今夜はまるで「私の故郷はここです」とでも言いたげな
求心力に胸をかき乱された。そして原さとしのさりげない存在感は
どうだろう。アメリカ音楽研究家でもある彼らしく、この日は遥か
昔のミンストレル・ショウ時代に使われたバンジョーを駆使しなが
ら、ペリーが黒船に乗って日本にやってきた時代にまで溯っていっ
たのだが、まるでブルガリアン・ヴォイス(ご本人は確かモンゴル
地方の音楽とおっしゃっていた)のような倍音で自ら歌う地響きに
も似たヴォイシングは衝撃的ですらあった。また第二部のイントロ
ダクションとして彼がソロで始めたインスト曲には日本古来の民謡
に通じるワビサビがあり、この人の底知れぬ根っこに触れる思いが
した。

故郷の温かさに包まれるような中村のオリジナル・ソングGOING
BACK TO MY HOMEで本編が終わる。左端にいるスーマーは一切
弾かずバンジョーを抱えたまま、彼女の歌に聞き入っている。ス
ーマーの人となりを感じる瞬間だ。そして原さとしは中村の歌に
しっかり寄り添いながら、まるで影絵のようなフレーズを最後ま
でしっとりと繰り出してゆく。

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by obinborn | 2014-09-24 02:14 | 中村まり | Comments(0)  

16日はパイレーツ・カヌーと中村まりを青山CAYにて

いやあ〜楽しかった!互いに共通の音楽基盤がありリスペクト
し合っている者どおしの共演だけに清々しい余韻が最後まで残
った。そんなパイレーツ・カヌーと中村まりのツーマン・ライ
ヴを16日は青山CAYにて。しかも特別ゲストとして先日新作を
リリースしたばかりのスーマーと彼のプロデューサーでもある
桜井芳樹が招かれるなど、忘れられない一夜となった。あまり
に素晴しくちょっと言葉にならないほどだが、ルーツ音楽に目
配りしながら時にやんちゃな表情を見せるカヌーと、淡々とし
つつ磁力ある土臭い世界をじわじわ押し出していく中村まりが、
局面局面で互いのメンバーを加えたりしていくことで、いつも
のそれぞれのパフォーマンスとはまた異なる膨らみが増してい
った。むろん中村と普段から帯同することの多い原さとしと安
宅浩司の控えめなサポートもキラリと光り、異例とも言える正
味4時間!があっという間に過ぎていった。思えばぼくの息子
や娘たちと言っても過言ではない彼ら彼女らによる若い世代が
いつしかアメリカ音楽やアイルランド音楽の根っ子と触れ合い、
驚き、仲間たちと手を携え歌や楽器をともにしていく。いわば
軽音サークルのようなノリから始まったカヌーや中村。そんな
若い人達が時流に流されず、辛抱強く自分たちの歌を歌い、東
に西にステージを重ね、土に水を撒いていったら、いつの間に
か花や草木がすくっと育っていった。そんな感じだろうか。ま
だきっと本人たちも気が付いていないような大いなる果実。た
とえ風の日であっても雨の日であっても、それが朽ち落ちるこ
とはないだろう。たとえ夏が過ぎ厳しい季節を迎えたとしても、
彼や彼女たちは昨日と同じようにきっと歌い続けることだろう。

写真は終演後の打ち上げ時にL→R小尾、中村まりさん、スーマ
さん、桜井芳樹さん

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by obinborn | 2014-08-17 01:58 | 中村まり | Comments(0)