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カテゴリ:青山陽一theBM's( 19 )

 

9月17日の青山陽一the BM's

いや〜、参った!あまりの素晴しさに終演後はあえてメンバー
たちと会話せず、余韻を反芻しながら一人帰路に着いた。そん
な青山陽一the BM'sのライブを17日は、沼袋のオルガンジャズ
倶楽部にて2時間たっぷり堪能した。青山(g,vo)以下、伊藤隆
博(org)、中原由貴(ds、cho)からなるトリオ編成としては、お
よそ一年半ぶりのお披露目だったが、ベースレスのオルガン・
トリオならではの丁々発止〜インタープレイの数々に息を呑ま
ずにはいられない。三人ともキャリアが長くそれぞれ卓越した
プレイヤーたちだが、この夜も互いを鼓舞し合っていくような
スリリングな連携に圧倒されっぱなしだった。

青山はバンド編成時に珍しく、シットダウン・スタイルでギタ
ーを抱えながら、キャノンボール・アドレイのMercy,Mercyを
オープニングに持ってくる。以降も自作のOdorelをインスト化
したり、中近東的なフレーズが混ざるMicro Waveを長尺ジャム
展開したり、レコーディング時にはスティール・パンに導かれ
ていた「停電」をオルガン・トリオならではのアレンジへと大
胆に改変するなど、新機軸がたっぷり。なかではダン・ペン作
のDark End of the Streetを、ライ・クーダーの『ショウ・タイ
ム』ヴァージョンに倣って、全編スライド・ギターで弾いてい
くという、ややマニアックなサーヴィスも。

それでもやはりトータルな印象として特筆すべきは、青山なら
ではのソングライティングのことだろう。何度も繰り返してき
て申し訳ない程だが、歌詞それ自体にもっともらしい主張を込
めるのではなく、彼は散文あるいは抽象に近い形で言葉を拾い
上げながら、もはや独壇場とも言える浮遊するような旋律と重
ね合わせてきた。青年期の憧れであっただろうロック(それを
介在にした)ブルーズやファンクのフォームを自分ならではの
語彙へと変換させてきた。本人は寡黙であり、けっして多くを
語ろうとしない。それでも私は、彼のなかで堆積していった歳
月のことを思わずにはいられない。

シットダウン形式で進められた17日のステージ。しかし終盤に
Friday RiderやJust One Noteが怒濤の如く固め打ちされる頃に
なると、青山は自然と立ち上がり、彼の最高の理解者である伊
藤と中原をフィーチャリングしながら、一気呵成に突き進んで
ゆく。むろん青山のギターの澄んだトーンが変わることはない。

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*写真は青山さんのウェブサイトよりお借り致しました。
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by obinborn | 2016-09-18 02:02 | 青山陽一theBM's | Comments(0)  

6月11日の青山陽一the BM's

11日は十条のシネ・ソトにて青山陽一the BM'sを。個人的
には約一年ぶりの再会となったが、精緻な密度を保ちつつ
どこまでも奔放に弾け飛んでいくリズムの波に包まれた。
カルテット編成による研ぎ澄まされたその音群は、ロック
やファンクが切り開いてきた道のりに多くを負いつつつも、
自分たちのイディオムとして生かしていこう!という気概
に満ちたものであり、ちょっと目頭がじ〜んと潤んでしま
ったほど。

第一部をMG’s、トラフィック、ボビー・ウーマック、ロン
・ウッド、ハウリン・ウルフ、ザ・バンドそしてリトル・
フィートと、これまで青山が触発されてきた偉人たちの楽
曲で連ねる一方、第二部をオリジナル曲で堂々と固め打ち
していく構成は、青山陽一がこれまで辿ってきた長い道の
りを聞き手たちに想像させるものだった。洋楽ファンにと
っては第一部だけでも満足だったろう。それでもパート2
のほうが俄然生き生きしているところに今現在のthe BM's
の逞しさを思わずにいられない。とくに近作『ブルーズ・
フォー・トマト』前後から新たに加入した千ヶ崎学のエレ
クトリック・ベースは、その音域の豊かさといい、歌心の
確かさといい、新生KIRINJIの一員として抜擢されたことに
頷かれる方々も多いはず。凹凸に溢れた彼のベースライン
の数々。それらをファンたちはしっかり聞き取った。

昨年シングル盤がリリースされたFreezer Bag、ファスト
なテンポで甦ったFreedom、あの懐かしいTragic Magic、
リフの応報がやがて視界を広げていくBycicle、そしてこ
の日初出となった新曲You Know What I Meanに、アンコ
ールの壮大な幻想曲「難破船のセイラー」。それらは今日
もなお、音楽という抽象画として結晶する。聞き手たちに
想像の翼を与えていく。ステージ終盤には青山が喉を痛め、
会場を埋め尽くしたすべてのファンを心配させたが、その
アクシデントを補うかのように、彼はシグネチャーとなる
テレキャスターで、虹のように鮮やかなシングルノートと
カッティングを、どこまでもどこまでも織り成していった。

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by obinborn | 2016-06-12 01:12 | 青山陽一theBM's | Comments(0)  

5月31日の青山陽一the BM's

最小の編成が最高のサウンド絵画をもたらす。そんなオルガン
・トリオによる青山陽一the BM'sの演奏を、31日は沼袋のオル
ガン・ジャズ倶楽部にて、身体の隅々まで行き渡るほど堪能し
た。現在では希少になってしまったハモンドB3を常設したこの
会場でのthe BM'sのライブはすっかりレギュラーになっている
ものの、毎回通う度にB3ならではの温もりのあるトーンと、青
山(g)、伊藤隆博(kbd)、中原由貴(ds)によるクリエティヴィ
ティ溢れる演奏に、ただひたすら圧倒されてしまう。

クールなファンクネスがじわじわと押し寄せる冒頭のFriday R
iderから始まり、間髪入れずに次は粘っこいBlues For Tomato
へと引き継がれていく。そんな序盤の構成から鮮やかであり、
やがてFreedomやHorizon、美しい叙事詩「五つめのシーズン」
などへ、楽曲はどんどん場面転換していく。第二部のオープニ
ングに選ばれたインストの「停電」はとくに秀逸。スタジオ
・アルバムではスティール・パンを伴っていた演奏だが、それ
にまったく劣らない気配や陰影を、この三人がとても丁寧にス
ケッチしていく様に息を呑まずにはいられなかった。

彼らの演奏全体に言える魅力は、細かいリフを積み重ねてグル
ーヴを強化していく部分と、ギターなりB3なりがソロ・パート
の際に思いっきり視界をぐんぐんと広げていく際のコントラス
トの鮮やかさだ。そこに「この人は内気ではないだろうか?」
と思わせる青山の抽象詞と複雑な和声によるソングライティン
グが折り重なっていくのだった。彼が繰り出していくギターの
フレーズにしても、その構成力や抑揚とともに、最後まで澄ん
だトーンをけっして失わない点に、ぼくは一番感銘する。

終盤に置かれたJust One Noteがやがてジャム展開となってい
く。青山はジョー・リギンズやバディ・ガイなどでもお馴染み
のブルーズ古典Bad Bad Whiskeyのリックを途中に挟みつつ、
先日天寿をまっとうしたB.B.キングのHow Blue Can You Get?
へと突入していった。アンコールではカルテット編成時のthe
BM'sの屋台骨である千ヶ崎学のアップライト・ベースを伴い
ながら、Every Day I Have The Bluesが繰り広げてられていく。
これらの場面場面のひとつひとつをずっと覚えておきたい。そ
んなことを思わずにはいられない5月最後の夜だった。

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by obinborn | 2015-06-01 02:10 | 青山陽一theBM's | Comments(0)  

ペブルズとthe BM's

8日は渋谷の喫茶スマイルにてペブルズと青山陽一the BM's
のツーマン・ライブを。トレモロ・サウンドも鮮やかにオー
ルディーズやガレージ・ロックに特化した前者とソウル〜フ
ァンクの語彙を独特の浮遊感溢れるサウンドスケープで消化
する後者では音楽のタイプは違うものの、そんな意外な組み
合わせを至近距離で楽しんだ。クッキーズのCHAINSをアカ
ペラ・コーラスでオープニングに持ってきたペブルズは、そ
の後もドネイズのDEVIL IN HIS HEARTを交えながら楽しま
せてくれた。それでも単に50〜60'sの古典を再現するだけに
留まらない奔放さが、何よりも彼女たちの魅力だと信じたい。

すっかり聞き馴れたthe BM'sはこの日パワー・トリオとなる
G、B、DS編成でバンド・サウンドの骨格を剥き出しにした。
せっかくだから以前このメンバーで演奏したクリームの「政
治屋」を聞きたかった気持はあったものの、青山、千ヶ崎学、
中原由貴の壮絶なインタープレイの数々は、ゲストに合流し
たピート福島のサックスとの丁々発止もあって、鍛錬を重ね
たプレイヤー同士ならではの連携に満ちていた。個人的には
もっと長く演奏し続けて欲しかったくらいだ。

アンコールでペブルズのコーラスを迎えたthe BM'sはマーヴ
ィン・ゲイのSTUBBORN KIND OF FELLOWと、オリンピッ
クスのGOOD LOVIN'を披露!異なるバンド同士が接点を見い
出した場面として、この3月を記憶しておきたい。


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by obinborn | 2015-03-09 01:34 | 青山陽一theBM's | Comments(0)  

1月18日の中村まりと青山陽一the BM's

清々しい余韻に満ちた夜となった。フォークやトラディショナル
音楽に基盤を置く中村まりと、ソウルやファンクの語彙を独自に
昇華させた青山陽一とでは互いのルーツは異なるものの、18日に
恵比寿LIVE GATE TOKYOで行われたツーマン・ライブでは、そ
んな二人の静と動が際立つ結果になった。最初に登場した中村ま
りは珍しくリズム・セクションを帯同してのレアなパフォーマン
ス。彼女のスタジオ録音では為されてきたリズセクの起用だが、
千ヶ崎学のコントラ・バスと田嶋友輔のドラムス&パーカッショ
ンをバックに歌っていく様は曲の表情に奥行きを与えていく。一
拍一拍に深い陰影をもたらしていったリズム隊の健闘を讃えたい。
とくにまだレコーディングされていない中村二つの名曲WHEN T
HE DAY IS OVERとSTILL IN THE SUNがこの日の三人で奏でら
れた意義は少なくなく、予定されている新たなスタジオ・アルバ
ムへの期待を募らせる。カヴァー曲としてはバスコム・ラダーの
「私はモグラになりたい」でのバンジョーを用いた野ウサギのよ
うな歌にこの人の底知れない磁力を感じずにはいられなかった。
そんな意味では多分初出となるスキップ・ジェイムズのI'M SO G
LAD(ロック世代にはクリームの演奏でお馴染みだろうとの旨を
青山がMCで語っていた)も極上級の仕上がり。

対する青山陽一the BM'sはロック・カルテットならではのダイナミ
ズムで会場中を湧かせた。とにかく中原由貴のパワー・ドラムス
が半端なく強力で、16ビートを軸としたファットバック・スタイル
が俄然冴えまくる!中村のステージに続いて登場した千ヶ崎学のフ
ェンダー・ベースがそのグルーヴと果てしなく同期していく様に
筆者は涙が出そうになったほど。そうしたボトムの確かさに支えら
れて、青山は音色にまでしっかり気を配ったエレクトリック・ギタ
ーのソロを畳み掛けていく。それも無闇やたらに弾き倒すのではな
く、ダイナミズムと抑制のなかで着地点を見出すところに彼の人と
なりを感じずにはいられなかった。COME AND GOでのちょっとし
た中原のコーラスも可憐だったし、青山とずっと長くthe BM'sを支
え続けている伊藤隆博によるエレピの光沢あるフレーズは、リズム
隊の低音域と対照を描くように鳴り響いていく。そしてシリアスな
世相を託した「25時」や本編最後に演奏された「炎とは何のことか
」といった楽曲は、青山というソングライターの特質をしっかり浮
かび上がらせていたと思う。

待望だった中村と青山たちのジョイントはアンコールの3曲にて。
スティーヴン・スティルスのLOVE THE ONE YOU'RE WITHに始
まりビル・ウィザーズのLOVELY DAYへと連なっていく様に、筆
者は胸を焦がした!the BM'sのソウル展開のなかでも中村のヴォ
ーカルは少しも物怖じすることはなかったし、中村と青山それぞ
れの音楽を聞いてきて良かったなあ〜〜と思える瞬間があった。
そして最後の最後は中村の名曲NIGHT OWLSだ。思えば16打ちの
バンドを背中に感じながら彼女が歌うシーンも極めて貴重な体験
である。「私の曲が巣立っていったように嬉しく思います」と語
る中村に応えるかのように、青山は極上のスライド・ラインをそ
っと無言のままに奏でていった。

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by obinborn | 2015-01-19 00:50 | 青山陽一theBM's | Comments(0)  

5月10日のthe BM's

やはり青山陽一の音楽は瑞々しい。浮遊する旋律
と畳み掛けていく演奏との鮮やかなコントラスト、
言葉の意味に寄りかかることを避けた散文的な歌
詞、そして彼のギターは綺麗なトーンを保ちなが
ら自由奔放にソロ・ラインを紡ぎ出していく。そ
んな青山陽一the BM'sのライヴを10日は沼袋のオ
ルガン・ジャズ倶楽部にて。

超強力なベーシストである千ケ崎学をあえて外し
たこのオルガン・トリオの適度に隙間のあるサウ
ンドスケープがすごぶる気持ちいい。一切の逃げ
道がない三人編成ならではのスリリングな連携を
この夜もたっぷり聞かせてくれた。ジャズの世界
では50年代にある程度確立され多くのレコーディ
ングも為されたベースレスのオルガン・トリオだ
が、それをロックのフィールドで実践するという
発想が素晴しい。青山が多くの面で影響を受けて
きたスティーヴ・ウィンウッドの音楽に倣った面
もあるのだろう。この日も後期トラフィックのE
mpty Pagesとウィンウッドの近作At Times We
Do Forgetを立て続けにプレイするなど、内気な
青山の大きな背骨を見た思いがする。

むろんオリジナル曲も良かった。いきなり最初期
のGod Press Youから始め、「曲がる曲がる」や
Country Road、「五つめのシーズン」といった
懐かしい曲を散りばめた構成は、新作『Blues F
or Tomato』からある程度時間が経過した証だろ
う。その新作からは一曲も演奏しなかったことは
ここ最近では珍しいことだったし、それなりに年
月を経た「難破船のセイラー」が冴え渡って響い
たのは新鮮だった。本編を色彩感が溢れるRainb
owで終えた後のFriday RiderとJust One Noteの
長尺演奏も圧巻だった。そんな意味でハモンドB
3を弾きながら青山と併走した伊藤隆博、パワー
・ドラムで献身的なまでに骨組みを作っていった
中原由貴にも最大級のリスペクトを。

それでぼくは我が身を振り返る。果たして自分は
一体ロック音楽のどんな部分に惹かれてきたのだ
ろうかと。それはけっして起承転結のある物語で
はなかったし、説明的なメッセージとやらでもな
かった。むしろトラフィックに倣って考えてみれ
ば捉えどころのないイメージや抽象を描きながら
、そっと差し出したジム・キャパルディの歌詞の
幾つかだったかと思う(Paper SunでもDear Mr.
Fantasyでも、そしてColored Rainであれ、Sha
nghai Noodle Factoryであれ)

それはことさら解り易さや意味を求めがちな世界
から疎外を受けるかもしれない。鉈を振っている
野蛮人のまえで職人たちが染色を巡って逡巡して
いるようなものかもしれない。それでも青山陽一
という人はその歩みを止めることはないだろう。

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by obinborn | 2014-05-11 02:06 | 青山陽一theBM's | Comments(0)  

今年最後の青山陽一the BM'sを観た

かしぶち哲郎の訃報が昨日届けられたばかりで何
とも気持ちが塞ぐなか、21日は青山陽一the BM's
今年最後のワンマン・ライヴを吉祥寺のマンダラ
2にて。思えば青山もムーンライダーズとは浅か
らぬ縁がある音楽家の一人。そんないささかの感
傷もあったが、青山本人は普段にも増して気合い
たっぷり。きっと思うところもあったと想像する
が、演奏はどこまでも豪胆な熱気を放つものとな
った。内気かと思わせる自画像と骨太なロックと
の取り合わせが現在のthe BM's最大の魅力だが、
この日もまた強靭かつ繊細なグルーヴがあたりの
空気をたっぷり隅々まで震わせていく。

とくにこの日は昨年の暮れ同様に元the BM'sの田
村玄一のギター及びペダル・スティール・ギター
を加えたスペシャルなクィンテットになった故、
音の広がりが素晴らしかった。シンプリティを極
めた綱渡り的なオルガン・トリオや、クリームや
ヘンドリクス・エクスペリアンスといったロック
・リジェンドを彷彿させるパワー・トリオなど、
その時々の編成で演奏の輪郭が微妙に変わるのは
今の青山ならではの強みだが、この日はツインギ
ターでガンガン弾きまくる力技や、ペダル・ステ
ィールならではの浮遊感が際立っていた。ペダル
=カントリーという常識を覆していく彼の斬新な
プレイに覚醒させられるばかりか、昨日大阪で田
村とともに新生KIRINJIで演奏していた千ヶ崎学
の激しく唸りを上げていくエレキ・ベースにも驚
かされた。その頂点はフレディ・キングのファン
ク・ブルーズであり、オールマン・ブラザーズで
も知られる「Woman Across The River」のカバ
ーだったかもしれない。また古くから青山の理解
者でありずっとバンドを支えてきた伊藤隆博も、
この日は特別にセッティングされたグランド・ピ
アノをエレピと平行しながら聞かせる贅沢さだ。
そして現在のthe BM'sの心臓部とも言うべき中原
由貴の起伏に富んだドラミングは高らかにロック
音楽そのものを告げるかのよう。そういえば彼女
の可憐なコーラスも現在の青山には欠かせない要
素に違いない。

思えば歌謡ロックやヴィジュアル系ロックが趨勢
を占めていた80年代半ばに、それらの動きとはま
ったく異なる地平からまるで影絵のように登場し
たのが青山だった(不幸なことにぼくは当時彼の
ことを知らなかった)。グランドファーザーズや
ソロの当初こそニューウェイヴ的な意匠を纏って
いた彼だが、次第に高度なソングライティングと
ギターに磨きを掛け、本来好物だったルーツ・ロ
ックの語彙を活かしながら歩みを進めてきたと言
っていいだろう。それでも今なおあくまで中心に
置くのは淡い色彩感を伴った曲作りの上手さ。一
聴したところ取り留めのない歌詞と旋律が、実は
イマジネイティヴな視界を持っていることに気付
く。抽象詞と音楽という動詞の混ざり方に彼なら
ではの審美眼が覗く。作品としてはもっと後にな
るが、彼のように「夕闇におけるクロール」とい
う不思議な言葉を使う人はいなかったし、複雑な
和声を用いてそれを弾ませる人も少なかったと記
憶する。

この日は「Vampire」や「Million Miles Long Hai
r」といった初期の楽曲に加え、世紀の変わり目の
傑作『Bugcity』からめくるめく変拍子の「難破船
のセイラー」、しなやかなソウル語法を活かした「
Revival」、シンプルなビートがやがて大きくうね
る「Bad Melody Bad」そして恒久の流れを思わせ
る「Bright Lights Bugcity」の4曲が選ばれるなど
懐かしい場面もたっぷり。それらが「炎とは何のこ
とか」「Empty Song」「毎度の調子」といった最
新作からのナンバーとうまく連携しながら、逞しい
演奏をどこまでも繰り広げていった。日本のロック
を牽引したかしぶち氏の他界は残念だが、きっと彼
は天国からほぼ一世代若いこの後輩たちに微笑んで
くれたことだろう。

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by obinborn | 2013-12-22 16:54 | 青山陽一theBM's | Comments(0)  

Two Stories

Two Storiesと題された通り、異なるバンドの
優れた演奏を12日は高円寺のJIROKICHI にて。
東京ローカル・ホンクも青山陽一the BM'sもす
っかりキャリアが長くなり、今や多くの後進た
ちからリスペクトされる存在となったが、それ
だけに今宵の大入りは熱もたっぷり。ときに、
俳句を思わせる日本語をシンプルに凝縮したホ
ンクの歌世界と、抽象詞と無国籍なサウンドが
特徴的なthe BM'sとではかなり個性が違うも
のの、演奏の緊密さやオーガニックなグルーヴ
に関しては大いなる共通点があるし、メンバー
同志の交流も昔からあった。考えようによって
は21世紀の最初の10年が過ぎた今でもしっか
り”生き残った”実力派たちによる夢の共演だっ
ったかも。そんなことを思わずにはいられない。

この日のホンクは新曲「夏みかん」のアカペラ
・コーラスで始まる。木下弦二の福岡移住後の
心境を伺わせる歌詞であり、日常の小さな発見
に心が洗われる曲でもある。同じアカペラ「夜
明け前」は一日の始まりと終わりをじわりと観
察するもう決して若くはない男のワーク・ソン
グだろうか。他にも「拡声器」では新井健太の
しなやかなベース・ラインや井上文貴による音
色も鮮やかなスライド・ギターが際立つなど、
聞き所はたっぷり。たまに人から「よくホンク
ばかり聞いて飽きないですね」と皮肉っぽく言
われる時もあるけれど、ぼくの実感としてはむ
しろ毎日接していたいくらいだ。きっとそれは
降り注ぐ太陽や澄み渡った水が日々必要なのと
まったく同じ感覚だと思う。田中クニオの歌伴
ドラムスもまた手となり足となり、弦二の歌世
界を奥深いところで支え切る。ましてこの夜は
弦二の最も素直な部分が「おいのりのうた」に
溢れ出ていたのだから。

対するthe BM'sは冒頭からトラフィックの不遇
だったアルバムから「Many A Mile To Freedo
m」を取り上げるなど、青山のトラフィック大
好き心を漂わせつつ、以降は「Red Alligator」
や「Claytown」といった最近おなじみの曲で畳
み掛けてゆく。複雑な和声とふと浮き立つ不思
議な旋律。そんな彼ならではの個性をこの日は
他に「Come And Go」や「休符を数えて生き
るのは」へと遺憾なく発揮してみせた。青山が
彼のシグネチャーといっていいテレキャスター
ではなく、昨年の秋からレスポールを(気分に
よって)本格的に使用し始めたのはファン承知
の事実だが、そのギターの豪胆さはとくにスラ
イドが全開となる「お花見ブルー」で逞しく響
き渡り、それが伝承曲「Amazing Grace」へ
と橋渡しされていくスリルもたっぷり。

青山はけっして言葉の意味に寄りかかる音楽家
ではないが、それでも「25時」やこの夜の本
編では最後となった「炎とは何のことか」では
モダンタイムズに生きる複雑な心情を音楽とし
て結晶させていた。伊藤隆博の彩り豊かなキー
ボードと青山とのコンビネーションはまさに阿
吽の呼吸だったし、狂おしいまでの16ビートが
波となり嵐となっていく「Ultra Sonic Bicycle」
ではここぞとばかり千ケ崎学のエレクトリック・
ベースと中原由貴の”ファットバック”ドラムス
とが激しく唸りを上げながらシンクロ!これば
かりはけっして驕らず、鍛錬とともにライブ演
奏を積み重ねてきた者たちならではの勲章だろ
う。

かつてキューン・ソニーからメジャー・デビュ
ーしたあの瑞々しいサイクルズの音楽を覚えて
いらっしゃる方はどれほどだろうか? そこに
いた中原は今もなおその頃にホンクと対バンし
た時のフライヤーを額縁に入れ、大切に飾って
いるという。そんな初心が何とも彼女らしい。
そんなことを思い出しながらアンコールで行わ
れたホンクとthe BM'sとのセッションに耳を
傾ける。彼らが合体して演奏するのはフォー・
トップスの「Loving You Is Sweeter Than E
ver」とリトル・リチャードの「Slippin' And
Slidin'」だ。新井健太と千ケ崎学がベース・ラ
インを互いに分け合っていく。田中クニオと中
原由貴が互いに目配せしながら、この夜最後の
フィル・インを精一杯叩き出していく。

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by obinborn | 2013-10-13 02:51 | 青山陽一theBM's | Comments(2)  

9月最初のthe BM's

骨太なロックがどこまでも続いた夜だった。一曲ごと
の子細がどうこうというよりはたっぷり2時間を通し
て快いグルーヴの波が束になって押し寄せる。そのこ
とに感謝せずにはいられない。そんな力強い青山陽一
the BM'sの演奏を9月1日は沼袋のオルガン・ジャズ
倶楽部にて。もうすっかり恒例化した同会場でのレア
なライヴだが、この日もまた満員の会場は歓喜の渦に
包まれた。そこにいた幸せをぼくは今噛み締めている。

リフをがんがんと重ねながら攻めに出る部分と、ソロ
・パートで柔らかくメロディアスに飛翔していく瞬間
とのコントラストが何とも鮮やか。そんな場面転換を
至るところに用意しながら、このオルガン・トリオは
少ない音数で最大の効果をもたらせた。伊藤隆博のハ
モンドB3と中原由貴のドラムスが青山のテレキャスタ
ーと丁々発止を繰り広げていく様は、後半になればな
るほど爆発していく。多少荒削りな部分はあったけれ
ども、このザクッとした質感はぼくが大いに好むとこ
ろでもある。

抽象的な歌詞。どこに着地するか解らない不思議なメ
ロディ。色彩感のあるギター。それらはどれも青山の
音楽を特徴付けているものだが、近年はそこに逞しさ
が加わった。彼のギターが淀みなくフレーズを連発す
るのは勿論、ソロ・パートでのタイム感に秀逸なもの
を感じる。終演後本人に訊いたところでは「ずらすの
が好きなんです」とのこと。それもまた青山のイメー
ジへ自然と折り重なっていく。この日は意図してバラ
ードを殆ど外し、長尺演奏に集中していく様が何とも
頼もしかった。生きざま系ロックでも、「ぼくちゃん
を誰も解ってくれない」的な自己憐憫でもなく、この
人は誰にも真似出来ないようなソングライティングを
携えながら、85年にデビューした。それから30年近
くが経ち、この夏に彼はまた一つ歳を重ねた。そのキ
ャリアを感じずにはいられない素晴らしい夜になった。


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*お写真は青山陽一さんのblogよりお借り致しました
 予めご了承ください
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by obinborn | 2013-09-02 01:59 | 青山陽一theBM's | Comments(0)  

ムーさん、お誕生日おめでとうございます!

さてさて5月14日は中原由貴さんの誕生日。ナカハラさん、
お誕生日おめでとうございます!

ムーさんという愛称で親しまれている彼女はタマコウォルズ、
双六亭、青山陽一the BM'sで活躍するドラマー&ヴォーカリ
スト。彼女の演奏を初めて聞いた時の感動は今なお忘れられ
ないほど。

バーナード・パーディを敬愛しているだけにファットバック・
スタイル〜16打ちに真価を発揮するムーさんだが、歌心ある
しなやかな8ビートも最高に気持ち良く叩ける人だし、可憐
なコーラスでリード・ヴォーカルにそっと寄り添うタイミン
グも実に素晴らしい。そして何よりもやはり彼女の人間性を
ぼくは称えたい。一度取材で長めにお話を伺ったことがある
けれど、丁寧に個人史を振り返りながら謙虚に語るその姿か                   らはドラムという身体的な楽器を志した情熱やミュージシャ                  ン・シップがこちらにもはっきりと伝わってきた。

ライブには毎回は通えないけれど、わりと定期的に彼女の演
奏は聞きたくなるし、最近ではソングライティングにも取り
組んでいるというからこれからがますます楽しみだ。とある
ファンの方がこう言われていた。「ムーさんの生演奏を聞け
る出会いに感謝!」と。ぼくもまったく同じ気持ちである。

誕生日っていうのは自分ではなく人を祝うためにあるのかも
しれない。もう一度言うよ。ムーさん、HAPPY BIRTHDAY !

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by obinborn | 2013-05-14 00:19 | 青山陽一theBM's | Comments(0)