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5月31日

スペシャルティ録音の英ace盤とこのatco吹き込みにはジェフ・ハナッシュに
よる鬼のようなライナーが書かれているので ギター・スリムについて知りたい
方はそれらをどうぞ

とあまりに素っ気ない書き出しになってしまったが ブルーズ・ファンでこの
ギター・スリムを嫌いという人に 幸運にもぼくは会ったことがない

開拓者という立ち位置でもないしヴァーチューゾという言葉もこの無鉄砲な
20代青年には似合わない むしろ心に残るのは朴訥としたヴォーカルであり
破天荒なギターとの取り合わせには不思議な感動を覚えたものだ

スペ吹き込みの『the things i used to do』はきっと21世紀にも残っていく
名盤だろう
しかしスペ以降の50年代末期を纏めたatco時代も悪くない
とくにニューオーリンズ録音ではホーンズとの掛け合いや三連も聞き取れて
その先の30代を聞いてみたかったという気持ちにさせる

極め付けの一曲は何といっても「down through the years」
スペシャルティ録音にも参加したレイ・チャールズ・マナーの佳曲であり
そのギター・ソロはまるでロリー・ギャラガーのような熱を孕んでいる

シールドの長さが自慢でよくクラブの外に出てギターを弾きまくっていたとか
複数の女性をハーレムに匿っていたともされる人だが
その音楽から伝わってくるのは むしろ純朴すぎるような姿である

そのブルーズを愛したのはエルヴィン・ビショップから井上文貴まで
世界中で数知れず
                                            
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by obinborn | 2011-05-31 22:56 | one day i walk | Comments(0)  

5月30日

ヤングブラッズのことが気になったのは一体いつ頃のことだっただろうか
確か20代前半に彼らのラスト・アルバム『high on a ridge top』(73年)
を高田馬場の中古レコード店タイムで購入したのがきっかけだったと思う

もうその頃にはリーダーであるジェシ・コリン・ヤングは独立しソロとして
人気を博していたから これまた例によって周回遅れである
70年代の後半といえばパンク/ニューウェイヴの台頭期であり
そんな状況のなかでヤングブラッズを聞いていたのだから 昔も今も
ぼくは世相というか流行に疎いのかもしれない

自意識から解き放たれている音楽だということは以前もここで触れたけれど
本当にこのヤングブラッズの場合 その日の太陽や風の動きをそのまま
音としてスケッチしているように思える
あるいは伸びていく自分の影さえも

ジミー・リードやロバート・ジョンソンのブルーズもあれば
チカーノR&Bの先駆、リッチー・バランスの名曲「ドナ」の優れた解釈があり
ビートルズの「彼女は風呂の窓からやって来た」に
ディランの「アイ・シャル・ビー・リリースド」もあるが
そのどれもが寛ぎに満たされたヤングブラッズの音楽となり得ている

グレイトフル・デッドのように果てしなくインプロヴァイズしていくわけではないが
気持ちの持ち方のようなものは彼らとかなり近いのではないだろうか

自分たち以前のアメリカに優れた音楽が流れていたことを確かめながら
奏でるような響きがそうだ
ロック音楽のヒロイックな伝説に加担するのではなく その水脈を見届けようとする
まっさらな姿がそうだ

デッドにせよヤングブラッズにせよ
そのことに関して少なくとも彼らが言い淀むことはなかった

もうあれらの日々からあまりにも長い歳月が経ってしまったが
デッドもヤングブラッズもまるで"home"(故郷)のように鳴り響き続けている

そう、ヤングブラッズとは遂に見ることがない”home"に他ならなかったのだ

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by obinborn | 2011-05-31 16:42 | one day i walk | Comments(2)  

5月29日

西麻布の音楽実験室・新世界にて
中村まり&ロンサムストリングスのライヴを

両者がしっかりと手を携えた新作『フォークロア・セッション』の
実質レコ発ライヴなだけに 豪雨にもかかわらず会場は大入り
期待度の高さを伺わせる

ダークな曲調から一転して陽性の展開となるアーサー・スミスの
インストゥルメンタル「dueling banjos」で幕開けし
カーター・ファミリーの「lonesome for you」をハワイ音楽のような
香気で奏でる序盤から色彩感のある演奏に早くも引き込まれる

弦楽器のカルテットといってもブルーグラスの直截な翻訳に終わらず
最近のライ・クーダーにも通じる印象派のようなアンサンブルを聞かせるのが
ロンサムストリングスの面白さであり それは桜井芳樹がエレクトリック・
ギターを多用するアプローチによく表れていると思う 田村玄一の
ペダル・スティールにしても何やらグレッグ・リーズ以降を思わせる透明度
を感じさせている 

そんな彼らの指向が極まったのが第二部冒頭の「snow queen」〜「deja vu」
に於ける自由度の高い演奏だろう 変拍子のなかを各楽器が奔放に泳いで
いく樣はもっと長く聴いていたいと思わせ  またこうしたインプロ指向を持った
ナンバーでは松永孝義の深い一拍のタメを持つコントラ・バスが俄然生きてくる

さらにロンサムたちはイアン・デューリーの変態ファンク曲「in betweens」へと
続け ジャズ的なイディオムをまぶしていく

一方の中村まりはソロ・アクト中心に普段から聴き馴染んでいるせいか
自分なりの対比も出来る
今回はバンド編成ならではの膨らみを増したヴォーカルがとくに素晴らしい

例えばウディ・ガスリーの「hard travelin'」には「ダコタの北から
カンザズ・シティまで この道をずっと行く」というリリックがあるのだが
その「way down the road〜」の部分などを意識的に低音で歌い込むところ
などに”語り部”としての才覚や本物の歌心を感じてならなかった

この日の中村はソロでも「black eyed sussan」「our blue」といったソング
ライターとしての骨組みが染み込んだ曲をはじめ 新曲として演奏する機会
が増えつつある「when the day is over」そして彼女の恩師とも呼ぶべき
ミシシッピ・ジョン・ハートの「sliding delta」(ニューポートのライヴ演奏
が秀逸)と計4曲を第一部の終盤に並べ
ロンサムストリングスのファンにも自分をしっかりとアピールした

先に触れた芯のあるヴォーカルはもとより ジョン・ハートに範を取った
フィンガー・ピッキング・ギターの味わいはもはや彼女ならではの領域に
達しつつある この基本スタイルをライヴごとにさまざまな編成で
伝えられるのは現在の中村の圧倒的な強みだと思う

さて ステージのメニューに戻ると
グレッグ・オールマンがボビー・ブランドのように歌う「midnight ryder」
は原曲のブルージーな印象が強いものの  それを原さとしが高速バンジョー
化しながら彼が歌うという斬新さはロンサムならではだし 「rocky raccoon」は
ポール・マッカートニーが原作ということをしばし忘れてしまうほどの埃っぽい
風合いに しっかりと中村の刻印がある

そして最も肝心なのはそれらがオリジナルの佳曲「ghost town dance」
と緊密に響き合いながらしっかりと結び目を作っていく部分だ
独立した曲と曲どうしが互いを呼び合っていくような柔らかい流れに
音楽を聞く意味のようなものが溢れ出してゆく

ちなみにこの「ghost town dance」の演奏まえには”廃墟の街”という
言葉が作詞を担当した中村から語られたが それらが言い含めるものも
きっと聴衆に届いたはずだ

惜しむべくは新作でも最もスリリングだったマナサスでお馴染みの「bount
to fall」が選曲から外されていたこと しかし今回これから始まるツアーに
期待を繋いだという見方も出来よう 

本編最後の「hard travelin'」が終わり アンコールでチャーリー・
パットンの「some happy days」が始まる頃には思わず目頭が熱くなって
しまった 簡素なリリックのなかに多くを語らせるというのはブルーズ音楽の
優れた手法のひとつだが 中村まりはそれを遂に勝ち得たのである

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中央が中村のシグネチャーとなるマーチンの000ー18モデル
後方にはペダル・スティールのほか ナショナル・ボディやワイゼンボーンなど
田村玄一の楽器も見える
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by obinborn | 2011-05-30 13:18 | 中村まり | Comments(2)  

5月27日

音楽雑誌を立ち読みして暗〜い気持ちで帰路に着くのは
今に始まったことではないが その原因は音楽の実感と書かれた文章とが
あまりにもかけ離れているからだと思う

一番陥りがちなのは自分ならではの見解を打ち出さんとするあまり
音楽を紹介する以前に自分を語ってしまったり もっともらしい修辞
で自己満足してしまうパターンかな

ありていに言えば素直じゃない

ひとつのグループや一人のアーティストのライヴに通い詰めていると
悪い意味でギョーカイがよく見渡せることがある
そう、普段ライヴに来ていないような輩に限ってサクサクとその音楽家
の新作などにレベル7級のどん引きレビューを書いているのでした

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ロイ・オービソン曰く「不思議なことだけど ぼくはチャック・ベリーの
ロックンロールにカントリーを感じるんだ」
そんな感想はリトル・リチャードの火の玉ロック「Rip It Up」のベリー・
ヴァージョンを聞けば何となく解ろうというもの
ストーンズでお馴染みの「アイム・トーキング・アバウト・ユー」や
ライ・クーダーが80年代に取り上げた「13の質問事項」を収録した
偉大なるベリー、59年の5枚目のアルバム
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by obinborn | 2011-05-27 18:06 | rock'n roll | Comments(0)  

5月26日

50歳になったら手持ちのLPアルバムを一枚一枚じっくり聞き返したい
そんなことを昔から漠然と思っていました

それが現在ある程度叶うようになったのは実に嬉しいことです
要するに大した仕事もなくヒマだということの裏返しなのですが(苦笑)

1日1枚 年間で365枚 残りの人生があと20年だとすると7,300枚
聞けるという計算です

さてと 最後の審判の日にゃ何を聞きましょうか
今日の候補はチャック・ベリー『アフター・スクール・セッション』です

そんなことを考えながら今日も夕方のウォーキングをしました
日暮れが遅くなって何となくお得感がある今日この頃です

ちょうど4,000字のライナー原稿が一本終わったところだったので
気持ちのいい歩きが出来ました

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ジョン・リー・フッカーを最初に聞いたときはあまりのエグさに後ずさりして
しまったのクチなのですが 次第にこの人のワン・コード・ブギや足やギター
の共鳴板を叩きつつのストンプ・サウンドにハマるようになっていったのです
あとはペケペケ〜と乾いた音で鳴るギターの悪魔的な誘惑でしょうか

本作は英デーモンが90年にコンパイルしたジョン・リー最初期(50年代初期)
の録音集です とくにレアなのは48年吹き込みとなる「ブギ・チレン」ではない
でしょうか ジョン・リーのお箱となる同曲だけに この初期ヴァージョンは貴重
だと思います 他にも「イン・ザ・ムード」やエルモアでお馴染みの「イット・ハー
ツ・ミー・トゥ」なども収録されています

こんな音楽が50年代のミシガン州デトロイトで生まれたことは ロックにとって
も大きな財産でした  このあと15年後にはこの町からミッチ・ライダーの
ボールド・ロックが産声を上げるのでした

昨日や一昨日の話題に繋げると ある意味ジョン・リーのブルーズこそは
最も素朴な宅録のような気がしてきました

ちなみに本盤のライナー担当氏はこう締めくくっています

「きみがキャンド・ヒートやドアーズやアニマルズそしてジョージ・サラグッドとか
その他が好きなら きみの音楽指南にジョン・リーはぴったりさ!」
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by obinborn | 2011-05-26 19:54 | one day i walk | Comments(0)  

5月25日

レコード会社のディレクターさんがおっちょこちょいで
件のデイヴ・Eのライナーが『Twangin'』ではなく『Tracks On Wax 4』でした
すみません! とのメールが入る

すでに原稿を書き上げていたぼくはショックで塞ぎ込むのでした
ただ書くっていったって こっちはちゃんと調べたり裏を取ったりしているんで
すからね(苦笑)

そういえば過去にも
せっかく書いたのによんどころのない事情で急遽発売中止となった
アルバムとか何点かあったけ、、、

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Dコードの魔術師ともパワー・コードの元祖とも言われたリンク・レイの輝かしい
業績はかつてピート・タウンゼントがレイのLPにライナーを寄せたことや
キース・ムーンが感激のあまりスタジオを駆け巡ったことにもよく表れている
(『フーズ・ネクスト』の録音時)
そんなグリース・ロックンロールの浮遊魔人は70年代に入るとポリドール
と契約 メリーランドにある自宅小屋で なんともスワンプなアルバムを連発
していくのだった かのダニエル・ラノワも相当入れ込んでいたというのは
一部で有名なハナシ 名曲「トゥーソン、アリゾナ」は最も素晴らしいギタリスト、
ロリー・ギャラガーが歌っていた 余談だが作家の奥田英朗さんはロリーの熱血
ファンなのでした
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by obinborn | 2011-05-26 01:43 | one day i walk | Comments(0)  

5月24日

『イマジン』に封入されていたのはジョンが山羊(豚だっけ?)と戯れるの図
だった まだ中学生だった私は当時何も解らずに
「金持ちはいいなあ」などと暢気に思ったものだったが
要するにこれはポールへの当てこすりだったのだ

時が経ち『ラム』の宅録感覚はミュージシャンに支持されていくことになる
バスドラに毛布を詰めているような音質(死語で言えばレイドバック)は
80年代に音楽を聞き始めた世代には きっと新鮮に映ったはず

アルバムの序盤「Too Many People」のイントロは
何やらデュアン・エディ風のトワング・ギターで思わずニンマリ
二度表れる「rum on」はこれなら俺にも弾けるぜよ、と思わせるところがミソかな

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by obinborn | 2011-05-25 02:47 | one day i walk | Comments(4)  

5月23日

70年前後のウィルバート・ハリソンやポール・マッカートニーが妙に
愛おしい理由を自分なりに考えてみると
それが”低予算ロック”の先駆だったからなのだった

ポールはスペクターが自作バラードに弦アレンジを施すことに我慢出来ず
ウィルバートは元祖テクノのようにR&Bの「レッツ・ウォーク・トゥゲザー」を
再演していた

時は変わり80年代半ば これはメンフィスの物語
アレックス・チルトンもまた低予算ロックの寵児となりつつあった
過去の業績はともあれ
後押ししてくれたのはREMなどのカレッジ・シーンのみだったことは想像に
難くない
西や東の都市からは産業ロックがテレビを覆った

基本の相方はドラムズのダグ・ガーリソンであり
音の質感はまさにスカスカ
その力学(というか脱力)はまんまギター・スリムでありときにスリム・ハーポ
のブルーズにも似ている
むろんパンク・ロックの勇ましい伝説に関しても この人はただただ照れるだけ
なのだった

自分のしたいことだけをするという行動原理には とても困難な責務が伴う
言わずもがなのことだが それは
自分が嫌いだと思ったことは絶対にしない! という哲学と同義なのである

いや  もっと正確に言おう
陽が昇り今日が始まり 陽が暮れて今日が終わる
そのことに関してアレックス・チルトンという人はとても正直だったのではないか
とぼくは思っている

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どんなに年輪を重ねたとしても またいかに知恵を付けたとしても
この人の歌は いつだってそれを”まっさら”へと戻してゆく
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by obinborn | 2011-05-24 01:24 | rock'n roll | Comments(0)  

5月21日

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今日は17,000歩と最近にしてはがんばってウォーキングを

仕事のほうはデイヴ・E上記2枚の新規ライナーノーツを鋭意執筆中

ロックンロール原理主義者たちの心情を汲み取りつつも実はスタジオおたく
だったりする二面性こそはデイヴ・Eならではの個性かも

20年まえ彼にインタヴューしたことを懐かしく思い起こした
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by obinborn | 2011-05-21 21:57 | rock'n roll | Comments(0)  

Ry Cooder/Boomer's Story(1972)

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「汽笛が鳴っているんだ」というリリックの瞬間にタメの効いたスライド・バーを
ここぞとばかりに滑らせるライ

そんなタイトル曲「boomer's story」はトレイン・ソングの語り部のような伝承曲
だ 2月に中村まりと話していたとき 「私もハーモニカを吹くとき トレイン・
ソングのことを意識します」と彼女は言っていたっけ

地元バーバンクのアミーゴ・スタジオだけでは飽き足らず メンフィスのアーデント
やアラバマのマスル・ショールズにまで足を伸ばした3作め ディキンソンとのコン
ビネイションは更に強化され ダン・ペンとの出会いがあり 何といっても
スリーピー・ジョンの参加があった 

そんな足どりが南部への思いを告げるようなライのサード・アルバムだ
前作での女声コーラスが消え ダン・ペンとディキンソンによる男臭いハーモニー
が冒頭の表題曲と終曲「おはよう、鉄道員さん」で哀愁味を加えている

インスト曲「マリア・エリーナ」は今思えば『パリ、テキサス』に挿入された
「cancion mixteca」へと連なる弦アンサンブルへの前哨戦だったのかもしれ
ない 映像的なサウンドスケープの中心にいるのはライのギターとディキンソン
のピアノの対話だ

こうしたギターとピアノとの対話はサザーン・ソウルの「ダーク・エンド・オブ・
ザ・ストリート」(やはりインスト)でも ランディ・ニューマンを迎えた「旗の下
に集まろう」でもじっくり吟味出来る

白眉はやはりスリーピー・ジョンをメインに据えた「ケネディ大統領」だろう
彼の相方であるヤンク・レイチェルを模したライのマンドリンが素晴らしい

その「ケネディ」セッションの熱気を鎮めるかのようにアルバムは伝承歌
「おはよう、鉄道員さん」でエンド・ロールとなる

「おはよう、鉄道員さん、次の汽車は9時16分かい? 2時44分かい?
それとも5時25分まえなのかな?」
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by obinborn | 2011-05-19 02:34 | one day i walk | Comments(2)