<   2012年 07月 ( 17 )   > この月の画像一覧

 

若く勇敢な四人組

ぼくたちヤング・ラスカルズは黒人音楽の恩恵を授かりながら成り立っている。
だからブラック・ピープルを閉め出すような会場では、もう二度と演奏しない。
絶対にそうするもんか。
(フェリックス・キャヴァリエ)

e0199046_948228.jpg

[PR]

by obinborn | 2012-07-29 09:54 | rock'n roll | Comments(0)  

長い線路のような

ほとんど世の果てのような凍て付くケベック州のスモール・タウンで
ギリアン・ウェルチをたった一人で聞くのと同じように、
21世紀を迎えてから12年が経とうとしている吉祥寺や下北沢の町で中村まりの歌に
触れることは、あなたの人生に奇妙な染みを残していくことだろう。

そしてあなたはいつか思い起こす。まるで長い線路のように続く旅路のことを。

e0199046_15302738.jpg

[PR]

by obinborn | 2012-07-28 15:34 | 中村まり | Comments(0)  

まだ日溜まりが残っている

21日は中村まりを下北沢のラカーニャにて。

彼女のワンマン・ライヴは都内では久し振りのことになると思うが、
わずか一週間前に旧知のベース奏者である松永孝義の急逝というあまりに残酷過ぎる悲劇があり、そんな意味でも心が込められた特別な夜となった。会場も詰めかけたファンたちでいつしか満員に。

むろん中村は平常心でステージに臨み、なおかつユーモアを交えるなど健気な振る舞いを
見せ、それを最後まで保ったが、レコーディングやライヴでついこの前まですぐ隣で彼女の歌に寄り添い、彫りの深いベースを響かせていた人がもう永遠に戻らないのだ。
そんな中村の喪失感は察して余りある。オープニングにメランコリックな「Black Eyed
Suzan」が選ばれ、まずはそれをソロで弾き語ったことも聞き手の思いを募らせ、予定にはなかったという「Ghost Town Dance」を松永に捧げるといった厳かな時間もあった。

今回は中村の良き併走者である安宅浩司のギターと原さとしのバンジョーを伴ってのトリオ編成ということもあって、全体の選曲自体はオールド・タイムへと針が振れたものであり、ブラインド・ブレイク、チャーリー・プール、サム・マギー、カーター・ファミリー、ドク・ワトソンといった先人たちの曲を披露する機会が多かった。中村自身がまだまだ全然勉強中だと言うバンジョーを2曲ほど弾き、その道の第一人者である原さとしと合奏するというまたとない機会や、中村得意のフィンガー・ピッキングと安宅のボトルネック・ギターが交差し合う瞬間もあった。中村のソロ・ライヴ(むろんその静謐さは特別なものだけど)とはまた違う、友だちどうしが語り合っているような親密なひと時だ。そこにカズーやハーモニカといった中村のもう一つの楽器や3人のコーラスが寄り添う。家族の団らんや、年に一度の親戚の集まりにも似た愛おしい時間。中村のオリジナル「How Sweet !」にしても、エンディング部でスタジオ・アルバムにはない楽器どうしのアクセントを付けるなど、このトリオならではのニュアンスを加味していく。

二部構成に亘って展開された曲自体も、まさに現時点でのハー・ベストと言えるもの。まずは中村のソロで始まり安宅が帯同し、更に原が加わるといった序盤の構成も見事だったし、そうした緩急の付け方は終盤からアンコールまで絶えることはなかった。まだレコーディングされていない「When The Day Is Over」や「Hold My Little Hand」にしても、ステージで歌われていく回数が増えてくるにつれて逞しくなってきたし、「Still In The Sun」に至ってはもはやあの名曲「Night Owls」と対になるような気品を湛えている。さらにこの日はもう一つの新曲が加わった。そうしたオリジナル曲が1930年代や40年代に作られ伝播していったレイルロード・ソングや労働歌と鮮やかな結び目を作る。時空を超えて瞬時に共鳴し合う。中村まりを聞いているな、と思わせるのはいつもそんな時だ。この人はどうしていつもこんなにも毅然としているのだろう。こんなにもすくっと空を見渡し大地に立っているのだろう。降り注ぐ雨を感じ、残された日溜まりを見つめているのだろう。

最後の最後は伝承歌の「私は巡礼」(I Am A Pilgrim)が、まるで祈りのように歌われていった。

e0199046_7194137.jpg

[PR]

by obinborn | 2012-07-22 07:18 | 中村まり | Comments(0)  

金持ちのいる、とても罪深い邸宅で。

長く茶色の髪の毛と大きく茶色の子犬のような目をしたひょろっと背の高い若者だった。
頭の回転が早くウィットに富み、ハンク・ウィリアムスの魂と逃亡者の情熱と洞察。
グラム・パーソンズはそんな男だったんだよ。俺たちはカントリー・バンドを作るために
じっくりと話し合った。何しろ俺たちのザ・バーズは地平線の向こうに消えてしまった。
だから俺たちは計画を実行に移したんだ。

幸いにもまだカントリー・ロックという言葉は使われていなかった。

俺たちは恋に破れた二人の恋人たちのように荷物をまとめ、サンフェルナンド・ヴァリー
へと旅だった。普通の音楽生活を求めて踏み出した大きな一歩は、気がつくと俺の人生の
なかでもとても価値ある経験へと変わっていった。ブリトーズの『The Gilded Palace Of
Sin』のなかのすべての曲は、ヴァレーでの小さな家で俺たちが暮らしながら作った歌ば
かりだよ。

俺たちはカントリー・ミュージックにちょっぴり社会的な意識を持ち込んだ最初のソング
ライターだったと思う。「罪な町」では地震や軍国主義や、はびこりつつあったキリスト
教原理主義のことを予言した。「僕の叔父」は朝メイルボックスに郵便を見に行ったグラ
ムが徴兵の知らせを受けた時の歌だ。そして「ジュアニータ」はドラッグの乱用とそれに
関する失望に関する曲なんだ。

(クリス・ヒルマン 新たに編まれたブリトーズ88年のコンピレーション・アルバムに
寄せて)

e0199046_1964420.jpg

[PR]

by obinborn | 2012-07-16 19:13 | rock'n roll | Comments(15)  

Get Your Kicks On West-Waseda!

西早稲田の地蔵前の商店街イベントでザディコキックスを。
しかも梅雨上がりを思わせるような快晴のなかで。

ここのところ結構ハードなスケジュールだったキックスだが、
特定のファン以外のこうしたライヴでも出し惜しみすることなく快演を
聞かせた。彼らがレギュラーで横浜は白楽の六角橋でこうした路上ライヴを
行っている様子は多少なりとも知っていたが、無料!の焼きそばやフランクフルト
が振るまわれるなかで聞くザディコ音楽もなかなかのものだった。

今回はとくに西田琢のギターが光っていた。
e0199046_17584630.jpg

ジョー・リギンズ&ハニー・ドリッパーズのスペシャルティ吹き込み、あるいは
ジュニア・ウェルズ&バディ・ガイのアトランティック録音でもおなじみの「Bad
Bad Whiskey」はキックスお箱のナンバーだが、そのエンディング間際に西田は
ちょっと信じられないような半音下がりの連続ソロ・フレーズをまぶしたのだ!

こうした何気ない部分にもこのバンドのタフさを伺い知ることが出来ると思う。
むろんそんなことはともかく、キックスの音楽は”路上”や”商店街”とともに
あるのだけれども。

いやあ〜、日曜の午後のひとときをありがとう、キックス!

e0199046_17505438.jpg

[PR]

by obinborn | 2012-07-15 17:52 | rock'n roll | Comments(0)  

カヌーがしっかり舟を漕いだ、ホンクがまるで鳥のように歌った。

14日はパイレーツ・カヌーと東京ローカル・ホンクのツーマンを
高円寺のJIROKICHIにて。この組み合わせの首都圏編は昨年同会場で
行われて以来、およそ一年ぶり。

おざなりのツーマンではなく、互いに敬意を払っている様子が実際ステージの
隅々から伝わってくるのがまず気持ちいいし、カヌーとホンクの共通点をあえて
探るとしたら、やはりその大振りではない語り口やケレン味のなさだと思う。

昨年と同じくまずホンクが一曲前口上としてアカペラで歌い、カヌーの面々を
招き入れるという心憎いオープニングで始まる。昨年は「サンダル鳴らしの名人」
だったが、今回は「すんだこと」が選ばれ、愛憎半ばといったごく普通の感情が
オン・クラーベのビートとともに歌われていく。歌に無理矢理結論を求めないのは
木下弦二の昔からの作法だが、この「すんだこと」のコンサヴァなニュアンスも
捨て難いほど。

セカンド・アルバムを携えたカヌーは、昨年も強く感じたことだが、音楽に向き合う
気持ちがひたすら初々しい。編成はドブロ・ギター、ギター、フィドル、マンドリン
など弦楽器の優しい響きを活かしたものなのだが、けっしてバタ臭いブルーグラスに
走るのではなく、まして高速フレーズ云々といったテクニックの罠に陥るわけでもなく、
どこか日本的な情感が零れてくる辺りが愛おしい。そこに静謐なコーラスや創意に富ん
だドラムスがなだらかな起伏を描いていく。そうした部分にたまらなく惹かれてしまう。

次のホンクは、インプロ序曲に続いて今回「お休みの日」が選ばれ「犬」へと束ねて
いくという意外な滑り出し。通常のリストでも最近の核となる「目と手」や「はじま
りのうた」、あるいは明るい曲調がかえって哀しみを伝える「いつもいっしょ」など
メロディのフックが秀逸なナンバーを敢えて外してくる。それもこれも弦二の今現在
の心境に正直な結果なのだろう。彼のMCを借りれば「意味のない歌を一生懸命歌いた
い」だけのこと。だからこそ序盤の「お休みの日」と後半の「お散歩人生」がセット
となり、昨日までとは少し違う商店街を活写していく。「引っ越し娘」で描かれる光景
がダンボールへと詰めた歳月までをいちいち染み込ませていく。木下弦二というソング
ライターはきっと照れもあるのだろうが、悲しさや切なさといった感情をむしろ遠近法
を用いながら、聞き手のイマジネーションへと委ねていくのだ。

ライヴは終盤に向かう。心からの拍手が会場から沸き上がる。
カヌーとホンクが合体したアンコール・セッションではリトル・フィートの「Willin'」と
アラン・トゥーサンの「あの娘に何をさせたいの? What Do You Want The Girl To Do」
が選ばれ、この時ばかりは”洋楽大好き!”みたいなノリが全開に(笑)。
ソロ回しが行われ、井上文貴が音数を絞り込んだギター・ソロを奏でて、弦二と笑みを
交わし合う。

音楽を聞いていて良かったと思える瞬間だ。
私はそれを帰りの地下鉄のなかでただただ反芻するのだった。

e0199046_1102928.jpg

[PR]

by obinborn | 2012-07-15 01:17 | one day i walk | Comments(0)  

さようなら、松永さん

既に多くの方々がご存知のように、日本を代表するベース奏者の松永孝義さんが
12日の昼前に永眠されました。ミュート・ビート、くじら、ロンサム・ストリングス
といったグループから膨大な数に及ぶセッション・ワークまで活躍されてきた方でした。

畏れ多くてお話しをしたこともないのですが、幾つかのライヴ・ステージで聞く
ことが出来た、寡黙で深いタメのあるベース演奏が忘れられません。

ロンサム・ストリングスの同僚である田村玄一さんはこう語られています。
「ロンサム・ストリングスの多くの弦のなかで、最も重要な4本だった」と。
まさにそれが松永さんを物語っているのではないでしょうか。

写真は昨年夏に行われたロンサム・ストリングス&中村まりのレコ発ツアーから。
すごくいい写真だと思っています。

心よりご冥福をお祈り致します。
もっともっとあなたのベースが聞きたかったです。

e0199046_0422953.jpg

[PR]

by obinborn | 2012-07-13 00:46 | one day i walk | Comments(0)  

ガーランド、ハートランドその7

ヴィクトル・ユーゴのお通りだ
俺はいつも彼と歩いている
パリの通りを歩こう 宝石のことを話そう
まるで我が故郷に帰ったみたいな気分さ

レ・ミザブルは確かに愛読書だけど
今の俺にはシリアス過ぎる
いや別に怠惰なわけじゃないんだが 
気分にはそぐわない

ジャンプ ジャンプ
愛すべきロックンロール・ランボーのために
ジャンプ ジャンプ
詩人と詩のために
ジャンプ ジャンプ
ミロのヴィーナスのために

ヴァン・ゴッホの亡霊もやってきたぜ
俺の行くところすべてにくっついてくる
ノートル・ダムの寺院を通り抜けながら
この長い歴史のなかで俺はちっぽけな存在さ

美術館がここにもまたあるけれど
俺らが見るにはあまりにも開催期間が短い
モネにセザンヌ どれも俺は好きだけど

(ガーランド・ジェフリーズ「ジャンプ・ジャンプ」For ジョン・レノン
1981年)


[PR]

by obinborn | 2012-07-12 00:27 | rock'n roll | Comments(0)  

ガーランド、ハートランドその6

キャデラックの霊柩車が彼を持ち去る
情けのかけらもありゃりない
まったくひどい話だぜ
呪いをかけられ 集中砲火を受け 彼はアル中になっちまった

みんなが言う 墓場のロックだ
ご近所さんも言う まるで墓場のロックね
まさか彼が死んでしまうなんて
時計だけが今も針を進めている

悲劇なんだ
もうひとつの痛みの物語なんだ
21番目の悲劇が飛び出すような感じなんだ
つまり何と言うか1980年とか81年の不況の頃にはよくある出来事で
彼もまた棺桶に運ばれていったのさ

ああ、まったく信じられないよ
神様の庇護もないし 葬式だって執り行われなかった
それでも彼の墓碑銘にはこう書かれている
「奴はいい加減な男ではなかった」と

そして彼は6フィートの地下に今日も眠っている
これで彼が雨や雷から守られるのだろうか?
そこには笑い声すらない
1980年や81年の不況の頃には
心から楽しめるロックなどなかった

(ガーランド・ジェフリーズ「グレイヴヤード・ロック」1981年)


[PR]

by obinborn | 2012-07-11 23:55 | rock'n roll | Comments(0)  

ガーランド、ハートランドその5

ぼくはきみと同じ人種じゃない
ぼくはきみと同じ人種じゃない

ぼくはとても小さな男の子
夜の通りをぶらつきながら ぼくを解放してくれる
女の人を探している
きみがすべてを見せてくれるなら
ぼくもまたぼくのすべてを示そう

ぼくはきみと同じ人種じゃない
きみのママが言うように
きみのパパが言うように
ぼくはきみと同じ人種じゃない

白人の女の子がダウンタウンを歩いている
快適で甘い紳士を求めてるみたいだね

きみのすべての裕福さを教えてくれないかい?
ぼくのような黒ん坊の歌を聞いてくれてどうもありがとう

ぼくはきみと同じ人種じゃない
ぼくはきみと同じ人種じゃない

(ガーランド・ジェフリーズ「I May Not Be Your Kind」1977年)

e0199046_2124119.jpg



[PR]

by obinborn | 2012-07-11 20:36 | rock'n roll | Comments(0)