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趣味と時代の葛藤:ロバート・パーマーについて

以前にもツィッターでお知らせしたようにロバート・
パーマー『プレッシャー・ドロップ』(75年英island)
のライナーノーツを書かせて頂いた。そのCDが1月27
日に芽瑠璃堂・クリンクから発売された。

パーマーにとってセカンド・ソロ・アルバムとなる本作
は、74年の前作『スニーキン・サリー・スルー・ジ・ア
レイ』同様、ニューオーリンズ・ファンクネスへの情熱
に満ち溢れたものだ。メンバーの交代と補強を経て最盛
期の布陣となったリトル・フィートを迎えつつ、アラン
・トゥーサンの「リヴァーボート」やローウェル・ジ
ョージの「トラブル」を歌うのだから、まさに英国人に
よるアメリカ南部探訪といった色合いは前作と同じくら
い感じられる。さらにアルバムの表題となったのがトゥ
ーツ&ザ・メイタルズのレゲエ曲なのだから、ニューオ
ーリンズからさらにカリブ海を見渡していくような印象
さえ受ける。

ただ同時に面白いなと思うのは、一方で「バック・イン
・マイ・アームズ」に代表されるアーバン・ソウルへの
アプローチをしていること。しかもそうしたトラックで
はジェイムズ・ジェマーソンにエド・グリーンというモ
ータウン縁のリズム隊を配するという徹底ぶり。こうし
た都会派ソウル・ナンバーと、リトル・フィートが合流
したダウン・トゥ・アースな曲群とのコントラストが、
どこまでも鮮やかにパーマーの混濁を映し出す。

パーマーは76年の次作『サム・ピープル・キャン・ドゥ
・ホワット・ゼイ・ライク』でも似た方向性を示したが、
以降はAOR路線を極めつつ、剥き出しのハード・ロック
やテクノへと軌道修正する。その姿もまた音楽シーンの
趨勢を敏感に捉えている(もしくは単に流されている?)
ようで興味深いのだが、ひとつだけ確実に言えるのは、
たとえどんなサウンドを纏っていたとしても、パーマー
は生涯を通してリズミカルな好奇心を失わなかったこと。
それに尽きるだろう。

ソウル音楽の原理主義者から疎まれるのもそこら辺に理
由があるのだろうし、ヴァン・モリソンのような頑固な
タイプともまた違う。しいて言えば奇しくも同じアイラ
ンドのレーベル・メイトでもあったスティーヴ・ウィン
ウッドの歩みにも似ているとは言えないだろうか。

そこら辺のニュアンスのことも、パーマーの背景となっ
た時代のことも、ライナーノーツでたっぷりと書かせて
頂いた。もし興味を持たれたらぜひともご購入ください。

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by obinborn | 2013-01-31 18:24 | one day i walk | Comments(2)  

my favorite things

本名:小尾 隆 
生年月日:sept,25 /1958
blood: type O
卒業学校:所沢北高
住所:東京都練馬区
職業:音楽著述
代表著作:『Songs』

好きなシンガー:アレックス・チルトン
好きなソングライター:ハンター&ガルシア
好きなデュオ:ランバート&ナッティカム
好きなトリオ:トラフィック
好きなカルテット:ラヴィン・スプーンフル
好きなクィンテット:サー・ダグラス・クィンテット
好きなオーケストラ:デイヴ・ヴァーソロミュー楽団

好きな歌:バーバラ・ルイス「ハロー・ストレンジャー」
     ビリー・スチュワート「アイ・ドゥ・ラヴ・ユー」
     ドノヴァン「ラレーニア」
     ローリング・ストーンズ「ファー・アウェイ・アイズ」 
     トム・ウェイツ「サンディエゴ・セレナーデ」

好きなアルバム:フェイシズ『ウー・ラ・ラ』
        ロニー・レイン『スリム・チャンス』
        ロン・ウッド『ナウ・ルック』
        イアン・マクレガン『バンプ・イン・ザ・ナイト』
        ロッド・スチュワート『ガソリン・アレイ』

好きなギタリスト:ジム・メッシーナ
好きなベーシスト:チャールズ・ラーキー
好きなドラマー:ジョエル・ビショップ・オブライエン
好きなキーボーディスト:イアン・スチュワート
好きなパーカッショニスト:リーボップ

好きな作家:小川洋子
好きな本:『クッキング講座』
好きな映画:『ヒポクラテスたち』
好きなラーメン:渋谷・喜楽の中華ソバ
好きな人:群れない人

誇らしく思った取材:佐野元春(07年5月)
          木下弦二(11年2月)
          中村まり(11年8月)
          中原"moo"由貴(11年9月)
          井上文貴(11年12月)
          山本智志(12年1月)
          新井健太(12年3月) 

行きたい町:誰も知らない町

最近思うこと:夢の続き


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by obinborn | 2013-01-30 19:19 | selfportrait | Comments(2)  

ジョー・ママの早過ぎた足跡

今朝からジョー・ママのセカンド・アルバム『J Is For
Jump』(71年)のライナーノーツを執筆開始しました。
久し振りにじっくりとLP盤で聞き直したんだけど、すご
く粋なブルー・アイド・ソウルという感じ。今聞いても
全然古びていません!

無名時代のジェイムズ・テイラーが60年代の半ばに参加
していたニューヨークのグループ、フライング・マシー
ンは今やすっかり伝説になったけれど、そのグループか
らダニー・クーチとジョエル・ビショップ・オブライエ
ンが時を経てジョー・ママの母体に。そこにザ・シティ
でクーチと息の合ったプレイをしていたチャールズ・
ラーキー(当時キャロル・キングの夫だった)や、売り
出し中だったキーボード奏者のラルフ・シュケット、
さらに女性シンガーのアビゲイル・ハネスまでが合流し
てくるのが、このグループおよそのあらましだ。

セルフ・タイトルのファースト(70年:ピザハウスの
ジャケット)のほうが有名だけど、このセカンドでは
持ち前のアーバン・ソウル感覚に加えて、ジャズ・イデ
ィオムを大胆に導入したり、ドクター・ジョンの曲をデ
ィレイニー&ボニー&フレンズ的にアプローチしたりと
新たな意欲も示している。そしてダニー・クーチが自ら
歌った幾つかのナンバーも、彼の名作ソロ『"Kootch"』
(73年)への布石となるような逞しさを示す。

東海岸の洗練されたグルーヴを、新たな時代を迎えつつ
あった70年代初頭の西海岸で展開した得難いバンドだっ
たけれど、残念ながらアトランティックで2枚のアルバ
ムを吹き込んだ後に解散してしまった。それでもこの新
鮮な息吹はどうだろう。同時代の仲間たちの動きとして、
キャロル・キングの『ライター』やジェイムズ・テイラ
ーの『ワン・マン・ドッグ』のことも、そっと視界に収
めておきたい。

最後に余談だが、このラーキー=オブライエンのリズム
・セクションを、ぼくは『レコード・コレクターズ』の
ベスト・ベーシスト&ドラマー特集で第1位に選出して
いる。

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by obinborn | 2013-01-29 13:50 | one day i walk | Comments(0)  

李歐

新作『冷血』が話題になっている高村薫の99年作。

高村に関しては社会の底辺を見つめ、不正を問い
質す作風に一定の評価がある。激烈な企業小説『
レディ・ジョーカー』(98年)が毎日出版文化賞
を受賞した。

不幸な生い立ちを背負った一人の日本人青年が、
ある日「李歐」と呼ばれる中国人の若者と出会う
ことから物語が大きく動き出していく。

舞台設定は主人公が暮らす大阪の町であり、ふとし
たことから町工場を譲り受け、その経営に奔走し、
また妻子を設けることで得られた幸せな光景も描か
れているのだが、先の李歐との関係、アジアのマフィ
アとの結びつきなどの運命に翻弄されていく残酷さ
も同時にあり、そんな両軸が対比的なスリルを生んで
いるのだろう。

「この先数十年というもの、今と同じ姿をしているだ
ろう工場の姿や、そこにいる自分の姿は想像出来るよ
うな、出来ないようだった。この先ここにあるのは、
何も起こらず、何も変わらず、大きな困難も不満もな
い、言葉を失うほどの凡庸と平和であるのは間違いな
かったが、そうして日々増していく安定と入れ代わり
に、歓喜や情熱や興奮が死んでいくのだろうかと思う
と、身体の奥でちょっと骨が軋み、わなないた」
(本文より引用)

若者から大人になる段階で誰もがふと囚われるであろ
うそんな焦燥感がこの小説の根っことなるが、ちょう
ど天安門事件やベルリンの壁の崩壊など、1990年前後
の世界が大きく揺れ動いた時代とシンクロナイズさせて
いく壮大さが、この520ページに及ぶ長編を支えている。

また主人公を取り囲む母親、父親代わりの男、妻、警官、
暴力団、バーテンダーなどなど多彩な脇役の人物造形も
薄暗い情念を仄めかしたり、束の間の温かさを感じさせ
たりとつい引き込まれてしまう。そうした意味では主人
公の一彰と李歐の関係にとどまらず、時代や運命に翻弄
される人々に目を向けた群像劇であり、そのストーリー
は私たちが暮らす町近くにも転がっているに違いない。

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by obinborn | 2013-01-29 02:48 | 文学 | Comments(0)  

Hello Stranger

「Hello Stranger」は米R&B歌手のバーバラ・ルイスが63年に
大ヒットさせた曲だが、遥かなる時を経てUKレゲエの女子グル
ープ、Brownsugarによってカバーされた。

ぼくはその事実に打ち震えた。何故なら「こんにちは、見知らぬ
人。あなたのことを理解するのには時間がかかるかもしれないけ
ど」という歌詞が、英国での移民問題に直面したジャマイカ2世
である彼女たちの物語に思えてならなかったから。

歌はいつだって、そうして翼を付けていく。
このBrownsugarからはSoul 2 Soulを経て、あのキャロン・ウィ
ーラーが巣立っていく。そう、彼女のソロ・デビュー曲は「U.K
Black」(私は英国のブラックなの!)だった。


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by obinborn | 2013-01-26 20:04 | one day i walk | Comments(0)  

Wiid Age

通りに佇み、誰かの歌に耳を傾けているアイツ
彼を見たかい? ハイウェイでヒッチハイクを
しようとしている みんなは奴を止めようとした
けど、奴の決心は変わらないし、とどまることも
知らないのさ

無謀なままでいよう
荒くれた世代のままでいよう
彼はワイルド・エイジのまま
誰も止めることなんか出来ないぜ!

そりゃ、分別臭く生きていくのは賢いよね
でもいつかは誰もが墓場へとまっしぐら

無茶なままでいよう
荒くれた世代のままでいよう
彼はワイルド・エイジのまま
ヘイ! 俺らはワイルド・エイジなんだ!

ウォーレン・ジヴォン「Wild Age」1980年

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by obinborn | 2013-01-26 19:01 | rock'n roll | Comments(2)  

手を伸ばせば、すぐそこにある音

嬉しいなあ、こういう声を聞くと。
以下ツイーターでの会話より。

 *    *    *

こんにちは。小尾さんのライブ告知ブログのおかげで、木下弦二&佐藤克彦さんの何ともあたたかい、浮遊感のある世界に触れることができました。音楽が本当に好きで、楽しそうに演奏したり歌ったりする姿は、観ている人の心に響くものでした。ありがとうございます。


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by obinborn | 2013-01-26 17:50 | one day i walk | Comments(0)  

グリニッチ・ヴィレッジからの声

ラヴィン・スプーンフル「いかしたあの娘」(You Didn't
Have To Be So Nice)が、全米で大ヒットしたのは1965年
のクリスマス・シーズンを迎える頃のことだった。この曲
は同年の12月11日にビルボード・チャートの10位へと踊
り出た。

無邪気な10代讃歌という以上のもの。ベーシストのスティ
ーヴ・ブーンが鳴らすチャイムが、これから始まる季節を
高らかに告げる。

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by obinborn | 2013-01-26 15:04 | rock'n roll | Comments(0)  

Go To The Flash , Now And Always

25日は前述した弦克ライブのまえに、同じ下北沢のフラッシュにて
レコードを約1時間ほど探索しました。
以下、捕獲日誌を。
ちなみに『Some Girls』は確か5枚めだと思いマス(^0^)

(Long Playing)

V.A/Soul Shots Vol.2〜Sweet Soul(Rhino)
Rosalie Sorrels/Moments Of Happiness(Philo)
Gene Amons/The Black Cat!(Prestige)
The Genius Of Ravi Shankar(Columbia)
Traffic/John Barleycorn Must Die(United Artists)
Rolling Stones/Some Girls(Rolling Stones)

(7's)

Jimmy Hughes/Steal Away (Fame)
Jimmy Hughes/Neighbor,Neighbor(Fame)
Martha&The Vandellas/Jimmy Mack(Gordy)
Stevie Wonder/My Cherie Amour(Tamla)
Stevie Wonder/Angie Girl (Tamla)
Four Tops/Still Water(Motown)
Aretha Franklin /Respect(Atlantic)
Barbara Lewis/Hello Stranger(Atlantic)
Joe Tex/You Got What It Takes(Dial)
Barbara George/I Know(AFO)
Lois Letcher/Man Smart,Woman Smarter(Playboy)
The Chiffons/He's So Fine(Laurie)
Beau Brummels/Just A Little(Autumn)
Harman's Hermits/Mrs.Brown You've Got A Lovely Daughter(MGM)
Chris Montez/Call Me (A&M)
Steppenwolf/Sookie,Sookie (Dunhill)
Lovin Spoonful/You Didn't Have To Be So Nice(Kamasutra)
Creedence Clearwater Revival/Travelin' Band (Fantasy)
The Long Ryders/Looking For Lewis&Clark(Island)

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by obinborn | 2013-01-26 07:24 | one day i walk | Comments(3)  

1月25日

木下弦二の歌を聞いていると、自分が丸裸にされていく。
彼の歌を聞き終わった夜は、いつもと同じ帰り道が少しだけ弾んで
見える。そしてぼくを無邪気だった日々へと連れ戻していく。

別に彼は凝った歌詞を書くわけではないし、流行のサウンドスケープ
を取り込むわけでもない。それでも最後には弦ちゃんの歌を聞いたな〜
という感慨が押し寄せる。そう、まるで沸き立ついわし雲のように。
まるで海の底にいる生きもののように。

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平易でコンサバな情感と言っては身も蓋もないが、それでも彼は
身の周りで息をしているものにしっかりと耳を傾け、小さなもの
や、目に見えにくいものへとそっと心を寄せる。それはあまたに流布
するメッセージ・ソングとやら、大言壮語だけの空疎なロックとやら
とはどこまでも対照的だ。ジョアン・ジルベルトの優雅なボサノバで
さえ、木下は「冬眠」という自作曲として彼自身の暮らしへと置き換
えていく。

そんな木下の歌とギターが、彼の良き理解者である佐藤克彦のラップ・
スティール(ときどきアコースティック・ギター)と、その場その瞬間
に交差し合い、互いに楽器同志で微笑みあい、会話していくのだからた
まらない。

「生きものについて」から「おいのりのうた」まで。そしてアンコール
では、インストゥルメンタルの「冬の便り」がそっと余韻を残していく。
陽気な歌がもたらす悲しみ。あるいは明るい歌が映し出す影。そんなこ
とまでに思いを馳せた下北沢・ラフテアでのライヴ演奏。むろん帰りの
ぼくは幸せだった。こんな時間がいつまでも続けばいいな、と思ってい
た。

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by obinborn | 2013-01-26 01:51 | 東京ローカル・ホンク | Comments(0)