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Songs To Remember〜ニック・ロウのこと

いいなあとしみじみ。ニック・ロウの楽曲を近年のシンガー・
ソングライターたちが歌う『Lowe Country~The Songs Of N
ick Lowe』を繰り返し聞きつつ、そう思う。

ヘイズ・カールやロン・セクスミスのような馴染みの歌い手も
いれば、ぼくの知らないシンガーたちもいるけれど、大向こう
を張ったようなトリビュート作ではなく、素朴に歌を抱きしめ
ている感じが好きだ。結果としてそんな何気のなさがニックの
メロディやちょっと内気な表情を際立たせていく。

パワー・ポップ時代の「Marie Provost」や「Heart Of The C
ity」はここではずっと穏やかに。ニックにとって大いなる転機
となった94年の『インポッシブル・バード』からの「Lover D
on't Go」と「Where's My Everything?」はしっとりと。ブリ
ンズリー・シュウォーツ時代の「Don't Lose Your Grip On L
ove」が選曲されたことも嬉しいし、ニックが本人としては歌
ったことがない「Living Again If It Kills Me」(あっ、デイヴ
・エドモンズ『Twangin'』に収録ね!)を取り上げるという
隠し球もしっかりと用意されている。

ぼくがブリンズレーズに夢中だった二十代の頃には、まさか
将来にこんな素敵なニック・ロウ集が発表されるとは思わな
かった。今こうして「今日は花見が出来なくて残念だな〜」
などと呟きつつ、明日に備える自分の姿を想像出来なかった。
ニック本人だってまさか60歳を超えた今もなお新しい歌に取
り組んだり、温かい拍手を浴びている自分など信じられない
のかもしれない。

まるでエヴァリー・ブラザーズのように、ニックの楽曲たち
はしっかりと新世代へと橋渡しをしている。ニックたちがエ
ヴァリーズを歌ったのはもうだいぶ前のことだけど、ここで
は逆にニックが愛されている。彼の歌を歌ってみたいという
ソングライターたちによって、そっと命を運び込まれている。

そう、冬に耐えた木々がやがて葉の数々を付けていくように。
新しい季節に向けて扉を開いていくように。

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by obinborn | 2013-03-31 18:07 | one day i walk | Comments(0)  

3月30日

およそ30年ぶりになるだろうか。

いやあ、びっくり!ロカビリー研究家の藁科さんと本当に
久し振りに@高円寺・洗濯船のDJ会にて再会した。

とくに膝を割って語り合ったとか、夜明けまで論争し合っ
たというわけではないけれども、それでも懐かしさが込み
上がってくる。そう、ぼくらは江古田の今は亡き、Clanと
いうロック喫茶で交差し合っていたのだ。彼の輪郭という
か姿や形をぼくは覚えていた。そして互いにクリーデンス
が大好きでアメリカ音楽の深みに入っていったことも。

そんな藁科さんと以前より接近が出来たこと。いつものD
J仲間とともに楽しい時間を過ごしたこと。そのひとつひと
つがかけがえのないものに思えてくる。そして藁科さんと
ぼくはクリーデンスという共通分母を礎として、それぞれ
の旅を始めたのだった。

むろんその旅はけっして平坦ではなかった。そりゃそうだ
ろう。結婚もあれば離婚もある。親を失った人もいれば、
新しい生命を宿した人もいる。30年とはおよそそのような
歳月であろう。それ以上を問い質したり、まるで人を値踏
みするように詮索したりするのは、少なくともぼくの好み
とするところではない。

幾つかの言葉をそっと吞み込んだ。幾つかの思いを新たに
抱え込みながら、ぼくは最終電車へと乗り込んだ。

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by obinborn | 2013-03-31 02:02 | one day i walk | Comments(0)  

追悼:ポール・ウィリアムズ。個のきらめきのような人だった

既に多くの方がご存知のように、ロック批評の草分け的な
存在だったポール・ウィリアムズ氏が急逝した。

10代にして『クロウダディ』誌を刊行し、その後『アウト
ロー・ブルーズ』『ニューヨーク・ブルーズ』『一粒の砂
にさえも』『時間の轍』など数々の著作で親しまれたウィ
リアムズだが、最後まで一貫していたのは”自分で感じたこ
とを書く”というある種の哲学に他ならなかった。

その作品を読んだ誰もが、彼の瑞々しい感性と深い洞察力
に唸らされた。それはときに権威へのアンチテーゼとなり、
ときに知の結晶となった。ウィリアムズの口ぐせは「聞か
なくては何も始まらない」という一見何の変哲もない命題
だったが、それはとりもなおさず音楽を繰り返し聞くこと
で生まれる心のさざ波を信じている人の言葉だった。

もしウィリアムズに不幸があったとしたら、そのきらめき
が知識や情報を最優先する音楽ジャーナリズムのなかで、
時代とともに隅っこに追いやられてしまったことだろう。
いわゆるロック博士は60年代以降多く出てきたものの、彼
のようにまっさらな気持ちでロック音楽を受け止めた者を
ぼくは他に知らない。社会状況や文化論としてロックとい
う現象を語る批評家は他にもいたが、ウィリアムズが最初
から最後まで信じていたのは”個人”に沸き立つ感情であり、
その窓から彼が見渡す世界には一点の曇りもなかった。

そんな意味でウィリアムズはロック批評に於けるホールデ
ン・コールフィールドであり、勇敢な開拓者であり、その
土地が枯れないように耕し続けた守護者であり続けたのだ
と思っている。そう、彼の音楽評論は我々をハイスクール
時代へと連れ戻したり、ジングル・ジャングルの朝という
時の迷宮に誘ったりする。

今は彼の死を受け止めるだけで精一杯だが、かつて『ニュ
ーミュージック・マガジン』に訳出されたウィリアムズの
幾つかのテキストや『アウトロー・ブルーズ』に於ける
何物にも代え難い”個のさざ波”をぼくはけっして忘れるこ
とがないだろう。

これまでの感謝とともにご冥福を心からお祈り致します。

小尾 隆

2013年3月の終わりに。

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by obinborn | 2013-03-29 11:46 | rock'n roll | Comments(0)  

今春予定されているDJのお知らせです

いよいよ春たけなわ。私もDJ行脚に忙しくなる季節^-^
現在決まっているのは以下の3つです。よろしくお願いしま
す!

3月30日(土)高円寺・洗濯船

私の出番は19時半前後の約30分。気楽に「棚から一掴み」
でお届けします。映画監督・隅田靖氏主催の恒例イベントを
まったりと。

4月20日(土)辻堂・ブランディン

再始動する「名盤探検隊」を記念してワーナーの名物ディ
レクター、宮治淳一氏とともに70's名作の数々を語りを交え
つつお届けします。時間はたぶん19時頃から。

5月25日(土)自由が丘・バードソング・カフェ

ストーンズをシングル盤で楽しむ会。ワンマンDJをさせて
頂きます。数あるストーンズの名曲・名演を7'sならではの
迫力のある音でたっぷりご堪能ください。19時半からです。

それでは皆さんのお越しをお待ちしています!

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by obinborn | 2013-03-29 00:44 | one day i walk | Comments(0)  

方言ロックの匂い、オイリー・ラグス

今日は寒かった。一度仕舞ったダウンジャケットを再び
羽織る始末で、これじゃせっかくの花見も冷え込んじゃ
うよね。

青山さんの書き込みで思い出し、久し振りにレコ棚から
引っ張り出してきたのがオイリー・ラグス。チャス・ホ
ッジズとデイヴ・ピーコックによるこの英国の二人組は、
古くはアルバート・リーが在籍したヘッド、ハンド&フィ
ートやミック・グリーンウッドに関わり、その後このオ
イリー・ラグスを結成した。

その音世界はといえば、まさに下町エレジーというか、
英国バブ・ロックの何とも垢抜けない匂いがプンプン!
クリス・クリストファーソン、バディ・ホリー、アラン・
トゥーサンそしてザ・バンドの曲をカバーしていること
からも彼らのダウン・トゥ・アースな指向が見て取れる
し、チャスのホンキー・トンク・ピアノとデイヴのフェ
ンダー・ベースを中心としたシンプルな音数や温かい歌
からは、華美なショウビズには馴染めない男たちの偽り
のない姿がくっきりと浮かび上がってくる。

残念ながらオイリーズはこの一枚を残して解散。ジャズ
のオリヴァー・ネルソンとの共演盤や、ジェリー・リー・
ルイス『ロンドン・セッション』への参加もあったが、
その後はバンド名をチャス&デイヴと改め数々のギグを
こなし、レコードも呆れるくらいたくさんリリースした。

チャス&デイヴの良さは、イアン・デューリーと同じく
コックニー訛りのままに歌い演奏したことだろう。いわ
ば地方ロック、方言ロックの確立である。そんな原点と
してこのオイリー・ラグスは今日もなお輝きを失っては
いない。あっ、勿論ローカルな光ですけど。

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by obinborn | 2013-03-27 22:52 | rock'n roll | Comments(0)  

誰かのせいにはしない

あの日から何が変わっただろうか。
町並が崩れ、船が大地に乗り上げられ、人々が歪んだ。

あの日から何が変わらないだろうか。
それでも季節は巡り、風は木々にそよぎ、陽射しが注ぐ。

解りやすい標的を見つけて矢を射ってはいないだろうか。
旗を振りかざし犯人探しのゲームに興じていないだろうか。
誰かをいつの間にか追いつめてはいないだろうか。

放った矢はいつか必ず自分へと返ってくる。
興じたゲームにはいつも空しさが伴う。
そんな遊戯に加わるつもりは一切ない。

あの日から2度目の3月がもうすぐ終わろうとしている。
ぼくは今日公園のベンチに腰掛けて、一冊の本をめくった。
そこにはこんなことが書かれていた。

「震災の後、ジャーナリズムは国民の感情的な反応に対象
を与えようとやっきになっているように見えた。”あいつの
せいだ!”と指さすこと。被害について、人災の部分を合理
的に解析してゆくのは将来のために必要なことだが、しかし
それと、目前に責任者を想定してただ叩くのは違うことでは
ないか。東電の経営者を個人として糾弾して放射能洩れが止
まるのであればそうすればいい。しかしそれは”合理的”な方
法ではあるまい。(中略)断罪の前には精緻な事態の解析が
なければならない」

(池澤夏樹『春を恨んだりはしない〜震災をめぐって考えた
こと』中央公論新社より)

コンクリートの裂け目にも薔薇の花は咲く。
あの名曲「スパニッシュ・ハーレム」にはそんな一節がある。
日々はこうして今日も更新されていく。

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by obinborn | 2013-03-26 13:56 | 文学 | Comments(2)  

どこかで見ている そんな気がする 深い海のような眼差しで

今日(25日)は自由が丘のバードソング・カフェに行って
きました。2月にさせて頂いたお店の9周年記念DJのお礼
も兼ねて久し振りに。

店主である梅澤くんとは音楽以外にも小説の話が出来たり
人生のさまざまな側面(光と影)について語り合える。そ
れが楽しい! 今日も互いに読み終えた江上剛の『絆』の
感想などを、山崎豊子や吉岡忍の作品と絡めつつ、どこま
でも熱く語り合ったのだった。

むろんゴキゲンな音楽も一緒だよ!


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by obinborn | 2013-03-26 02:37 | one day i walk | Comments(0)  

そこにある歌、東京ローカル・ホンクのこと。

どこまでも柔らかい歌の数々が歌われていった。その歌たち
は何も声高な主義主張を振りかざすわけではないし、右向け
右のような勢力に加わるわけでもない。むしろ人々の普段の
暮らしを見つめ、天気や商店街の移ろいをスケッチする。そ
れがいかに尊いことだろうか。

24日はそんな音楽を奏でる東京ローカル・ホンクを青山の月
見ル君想フにて。昨年の12月以来彼らのライブが東京で行わ
れるのはこの日が初めてのこと。京都を振り出しに始まった
今回の全国春ツアーでホンクたちはどういう景色を見つめて
いくのだろう。「車のうた」の彼方にどんな足跡を残してい
くのだろう。

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「いつもいっしょ」を聞けばぼくはいっしょにいられなくな
った人たちのことを思う。「拡声器」のような町のざわめき
を耳にすれば、むしろぼくはそれが失われた廃墟の町のこと
を想像する。木下弦二のソングライティングが言い含めるの
は、きっとそういうことだ。それが明晰な発声で歌われ、確
かなコーラスによって水や光を与えられ、豊かな演奏によっ
て逞しく運ばれていく。

弱いもの。形になりにくい感情や心のさざ波。それらに東京
ローカル・ホンクは静かに耳を傾ける。寂れた工場街をスケ
ッチし、食べたラーメンとともに手紙を書き、ときに沸き立
ついわし雲の峰を見上げたりする。

拍手が鳴り止まない。ホンクがこの日最後に歌ったのは、ノ
ンマイクで客席に降りてきての「サンダル鳴らしの名人」だ
った。

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by obinborn | 2013-03-25 01:22 | 東京ローカル・ホンク | Comments(0)  

ある青年の肖像

まだ弦ちゃんと知り合ったばかりだった頃、オイラが
ライヴ会場から帰るとき、彼はわざわざ駈けてきて声
を掛けてくれた。嬉しかった。あれは東小金井の海風
という小屋だった。そのときの半券は東京ローカル・
ホンクのCDのなかに今もしまってあるよ。

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by obinborn | 2013-03-24 17:09 | 東京ローカル・ホンク | Comments(0)  

一ヶ月遅れのマルディ・グラ

23日は渋谷の7th Floorにてルイジアナ〜ニューオーリンズ
音楽の祭典『一ヶ月遅れのマルディ・グラ』を。

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50~60年代のスワンプ・ポップをリズム・セクション抜きで
奏でるロス・ロイヤル・フレイムズ、セカンドラインのビート
を軸にパンキッシュな勢いで迫るニヒル・ブラザーズ、そして
ザディコ音楽で踊らせるザディコキックスと大いに楽しんだ。

この3つのバンドの共通分母を探り当てるかのように奏でら
れた終盤のセッション・タイムがまた良かった。「みんなが
知ってる曲です!」とロスロイのヴォーカル氏のMCに導かれ
て始まったのはプロフェッサー・ロングヘアの「Mardigras
In New Oreleans」とチャック・ベリーの「Promised Land」
の2曲! 

ありもしない地図を頼りにどんどん南行きの夜行列車に乗っ
て旅をしたら、そこにルイジアナやニューオーリンズのR&
Bがあった。そんな導きに対する驚きと感謝。それはアメリカ
人であろうが、ぼくら日本人であろうが一切変わることがな
いだろう。

どこまでも楽しく賑やか。そして切なさを言い含めた3つの
バンドの音楽が、終着駅を知らない旅人のように弾んでいっ
た。

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by obinborn | 2013-03-24 10:38 | one day i walk | Comments(4)