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高円寺で弦ちゃんと春日さんを

締めのライヴ29日は木下弦二と春日博文のスペシャルな共演を
高円寺のペリカン時代にて。普段も春日の「眠れない夜」を歌
ったり、彼からの影響を口にしてきた木下。何でも東京ローカ
ル・ホンクの前身バンド”うずまき”時代、最初に声を掛けて
くれたのが泣く子も黙るハッチこと春日博文だったとか。そこ
から自然に木下がカルメン・マキや忌野清志郎と出会っていく
のだから、日本のロック開拓者たちと第二世代の架け橋はぼく
の知らないところで密かに交わされていたのだった。

今現在は韓国をベースに独自の音楽活動を行っている春日だが、
たまに日本に帰って、こうした交歓を行ってくれるのが嬉しい。
この夜もウクレレとストラトキャスターを持ち替えつつ自身が
書いた韓国でのヒット曲を歌ったり、木下の歌に寄り添ってみ
たりと百戦錬磨ならではの味わいを見せる。一方の木下はシグ
ネイチャーであるベスパのセミアコを奏でつつ、日本語の響き
を大切にした歌の数々を届ける。東京ローカル・ホンクとは別
に彼がソロ活動をする時は、自作曲にこだわらず幅広く内外の
カバー曲を取り上げるのが大きな特徴だが、「Cのブルーズ」に
始まった今夜は荒井由実の「生まれた街で」からキヨシローの
「約束」そして胸を掻きむしるあの「トランジスタ・ラジオ」
までが飛び出すといった具合。興奮せずにはいられない。

サイド・プロジェクトとして定評のある弦克(木下と佐藤克彦)
の繊細な味わいも捨て難いが、弦ハチならではのくだけた表情
や陽性の響きに何とも心が踊った夜だった。そして時には飛び
道具としてファズのエフェクターを踏みロック小僧の名残りを
伝える場面もユーモアたっぷり。ホンクのファンとしてはこの
夜もしっかり「お手紙」「おバカさん」「すんだこと」「昼休
み」「ブラック里帰り」そして木下が東京を離れ福岡に引っ越
してから出来た「夜明けまえ」と「さよならにありがとう」が
聞けたことも報告したい。バンド・ヴァージョンとは違う二人
語り。手を伸ばせばすぐ届きそうな質感。そうした肌触りを至
近距離で堪能出来るシアワセ。そんな温もりを感じながらぼく
は師走の高円寺を後にした。


               
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by obinborn | 2013-12-30 00:51 | 東京ローカル・ホンク | Comments(0)  

CS&N関連の紙ジャケット・シリーズ

発売が遅れに遅れてヤキモキさせられていたCS&N関係の紙ジャケ・シリーズがやっとワーナーから発売されました。同社は以前バッファロー・スプリングフィールドを紙ジャケで出そうと計画し、私も『アゲイン』のライナーをせっかく書き上げたのですが、何でもニール・ヤングが「今プラケで出ている商品をわざわざ紙ジャケにする必要があるのか!」とゴネたらしくその時は結局発売が中止になってしまったのです。そんな経緯を知っているだけに今回はホッとしているのですが、ニール・ヤングが参加した『デジャ・ヴ』がラインナップから漏れているのは多分そういう理由からでしょうね。もうガンコ親父なんだから(笑)。まあそういう部分もニールらしくって好きなんですけど。

そんな内情はともかく、CS&N名義作に加えクロスビー、スティルス、ナッシュそれぞれのソロ作やスティルスが新たに結成したマナサスなど計9枚。ぼくにはどれも懐かし過ぎるものです。今の若い人には実感として掴めないでしょうが、ビートルズ解散後のニュー・ロックといえば当時はイギリスではツェッペリン、アメリカではCSN&Yといったくらいの大人気ぶりでした。音楽性については今更ここでは触れませんが、CSN&Yという存在からは個性がそれぞれ異なる人たちの集合体というのは面白いあ〜などと高校生なりに漠然と感じていたのかもしれません。

今回ぼくがライナーを書かせて頂いたのは『ナッシュ=クロスビー』(72年)です。この二人の相性の良さ・友情はよく知られるところですが、そんな彼らがCSN&Y解散後に初めて取り組んだ記念碑が本作です。幻想的なクロスビーと素朴なナッシュの取り合わせの妙、ダニー・コーチマーを始めとするザ・セクションの含蓄ある演奏など、ぼく自身この夏改めて繰り返し聞きながらその魅力を再認識した次第です。アルバムの冒頭を飾る「サウスバウンド・トレイン」にはナッシュの優しさが詰まっています。大義名分やスローガンを振りかざすのではなく、きみ自身の足音を聞いてごらん、南行きの汽車が今夜旅立つよ、と諭す内容であり、ぼく自身も自分の生き方(というほどのものではありませんが)を考える上で大きな影響を与えてくれた歌です。今回のライナーはまずその「サウスバウンド・トレイン」の歌詞から書き始めてみました。よろしかったらぜひ手に取ってみてください。

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by obinborn | 2013-12-27 15:39 | rock'n roll | Comments(4)  

2013年に入手したR&Bのシングル盤から30枚を選んでみました

2013年のベスト10と言われても自分の場合好きな音楽を聞いて
きただけなのでなかなかおぼつきません。そんなわけで今年は個           人的に入手したR&Bのシングル・レコードに絞って、印象に残っ           たものを以下に30枚ほど選んでみました。新作では佐野元春、
テデスキ・トラックス・バンド、ジェイムズ・ハンターそれぞれ
のアルバム、アーカイヴ音源ではグレイトフル・デッド72年の
野外ベネフィット・ライブを収録した『Sunshine Daydream』や
リチャード・トンプソンの『Live At The BBC』などをしつこい
ほど繰り返し聞きました。なおワーナーの新名盤探検隊からは
自分がライナーを書いたもので恐縮ですが、念願の初CD化を果
たしたラブ・ノークスの『Red Pump Special』を記念に選出
させてください。今年もレコード・CD以上にいいライブを数多
く体験出来たという気持ちが強いです。とくに5月のジョン・
クリアリー・トリオはニューオーリンズ・ファンク炸裂といっ
た感じで圧巻でした。ボビー・ブランドやJ.J.ケイルなど訃報も
相次ぎ喪失感もありましたが、2014年も皆様に音楽や人とのい            い出会いがありますように!

Barbara Lewis/Hello Stranger
Barbara Lewis/Baby I'm Yours
The Meters/Cissy Strut
Bobby Charles/One Eyed Jack(写真)
Fats Domino/Be My Guest
Four Tops/Still Water(Love)
Tommy McClain/Sweet Dreams
Young Jessie/Hit, Git And Sprit
Carter Brothers/Southern Country Boy
Otis Redding&Carla Thomas/Trump
Otis Clay/Precious,Precious
Jackie Moore/Precious,Precious
Syl Johnson/We Did It
Clarence "Frogman"Henry/I Don't Know Why(But I Do)
Lee Dorsey/Can You Hear Me
Little Milton/We Gonna Make It
Joe Tex/I Gotcha
Hank Ballad&The Midnighters/Sexy Ways
Jimmy McGriff/Fat Cake
Jimmy McGriff/I've Got A Woman
James Brown/Bring It Up
Jerry Butler/I Dig You
Maxie Brown/Oh Not My Baby
Clarence Carter/ Let Me Comfort You
Laura Lee/If I'm Good Enough To Love
Bobby"Blue "Brand/These Hands
Bobby"Blue"Brand/Ain't Nothing You Can Do
Eddie Holeman/Hey There Lonely Girl
Darrell Banks/Open The Door To Your Heart
Al Green/Let's Stay Together (写真4枚)

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by obinborn | 2013-12-27 12:35 | one day i walk | Comments(0)  

12月26日

隣国への挑発や自己信念への固執は                        一時の高揚と共感を得るかもしれないが                      多くの場合 進むべき道を誤らせ
取り返しのつかない汚点を歴史にもたらすだけだろう

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by obinborn | 2013-12-26 17:51 | one day i walk | Comments(0)  

フラッシュさんで今年最後のレコードを

昨日はライブのまえに近所のフラッシュさんへ。年末のご挨拶
も兼ねてお伺いし3枚のレコードを購入しました。ラルフ・マ
クテルにボビー・ウーマック。ジャンルは異なれど、ともにぼ
くの好きな音楽家の作品で2013年を締めることが出来ました。
「バーバラ・ルイスHello Strangerのシングル盤を見つけたの
が今年とくに嬉しかったです」と話しかけたら、椿さんが優し
く微笑んでくださいました。今年もお世話になりました。メリ
ークリスマス! 

(Long Playing)
Ralph McTell/Revisited(Transatlantic TRA227)
(7's)
Bobby Womack/More Than I Can Stand(Minit 32093)
Bobby Womack/What It This(Minit 32037)

日本では何故かあまり人気のないラルフ・マクテルですが、
本国イギリスでは別格級のフォーク・シンガー。初期のこ
れが代表作ですが、のちのリプリーズ〜ワーナー時代にも
いいアルバムを出しています。対するウーマックは初期ミ
ニット時代の傑作2曲。リズムの切れ味が新しい時代のソ
ウル音楽を告げるかのようです。

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by obinborn | 2013-12-24 15:01 | one day i walk | Comments(0)  

佐野元春 聖なる夜に口笛吹いて

あれは2010年冬のクラブ・サーキット・ツアーだった。
若く勇敢なザ・コヨーテ・バンドとともに旅に出た佐野
元春は、初心に帰るべく臨んだライブハウスでまたもや
ぼくたちの度肝を抜いた。ザラザラとした粗めのギター・
ロック。身体を震わせるようなラウドな音圧。黙示録のよ
うな傑作アルバム『COYOTE』を携えた彼らは全国の小さ
な会場を熱気で満たしていった。

そのツアーのなかで用意されたのがあの「Christmas Ti
me In Blue〜聖なる夜に口笛吹いて」だった。大胆なま
でのダブ・サウンドが施され、それ故にメロディの輪郭が
映えるラヴァーズ・ロックだ。覚えている方も多いと思う
が、天井から降り注ぐ雪の演出も忘れることが出来ない。

祝うべきクリスマスが"ブルーの見解"であるというちょっ
ぴり苦い思い。1985年にリリースされたこの曲が訴える
のはおよそそのような認識だ。ひどく残念なことにこの曲
が仄めかす複雑さやアンビバラントな感情は、その後もっ
と増してしまった。ことさら時事的な問題を持ち出さなく
とも、能天気に浮かれ騒いでいる気分じゃない。

黙して語るというのは佐野が一貫して掲げてきたソングラ
イティングの大きな特徴だ。聖なる夜に繰り出す恋人たち
が時代の迷子になっていることを、ぼくはこれまで以上に
感じるようになった。「平和な街も 闘っている街も」と
いった歌詞がより現実味を帯びて迫ってくる。

それでもすべてを諦めたわけじゃない。少なくとも諦観や
冷笑は佐野元春の音楽とは程遠いものだろう。経験の歌を
重ねたぼくたちはまた新しい気持ちで「聖なる夜に口笛吹
いて」を歌うことだろう。荒野に佇むコヨーテやズーイと
いった架空の人物。それは『COYOTE』と『ZOOEY』と
いった優れたアルバムの根幹を成す。誰もが共有出来るそ
んなコヨーテやズーイはいつの間にかぼくの暮らしに紛れ
込み、知らないうちにぼくの隣人となった。

今夜コヨーテやズーイとともに、遠くサンフランシスコに
行った彼や、闇のなかで怯えているレイナという名の彼女
とともに、ぼくは「Chistmas Time In Blue」を歌おう。
出来るだけ軽やかに口笛を吹きながら。

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by obinborn | 2013-12-24 12:10 | rock'n roll | Comments(0)  

中村まり。そして12月。

一年なんて本当にあっという間だ。小さなこと
で悩み、ふとした瞬間に微笑む。塞がったはず
の傷口がある朝突然枕元で開いてしまうことも
あったし、自分勝手な療法で切り抜けた日々も
過ごした。そんな繰り返しのワン・イヤー。も
う50代も半ばだというのに一体自分は何をして
いるんだと思う。問いかけと言えば箔が付くけ
どいやはや。それでも町を歩けば若葉が芽を出
していた。朽ちていくばかりの商店街に思いを
重ねてもみた。そんな反芻をしながら23日はほ
ぼ一年前にも同じ会場と同じメンバーで行われ
た中村まりのクリスマス・ライブを下北沢のラ
カーニャにて。

導入部を中村が原さとし、安宅浩司とともにア
カペラで歌う。その「Christmas Time A Comi
n'」が伝承曲の「Bright Morning Star」に連な
り、やがてピート・シーガー・ファミリーが育
んでいったクリスマス・ソングへと流れ込んで
いく。そんな序盤の展開からもこの夜が華美で
手垢に塗れたクリスマス・ショウではなく、中
村が普段から慈しみ大事にしてきた団欒の風景
であることや、蒼い気持ちで最初に降る雪と戯
れた子供時代を振り返りながら、折り目を質す
ものであることがしっかり伝わってくる。

恐らくバンジョーのトップ・プレイヤーであろ
う原が何気に見せるピッキング・ハーモニクス
や、ダンス・チューンで全開となる倍速奏法に
心が溶け出す。フィンガー・ピッキングやスラ
イド・バーはもとより、ときにマンドリンでも
歌に寄り添ったフレーズを弾き出す安宅に、こ
の一年間中村とともに全国をツアーした痕跡を
思う。そんな弦楽器の腕達者たちがボーンズ〜
骨や、スプーンにフォークといった打楽器をま
るで最初に手にした玩具のように愛でる。中村
の歌と戯れながら共鳴していく。音楽が技術だ
けでは成り立たないことを証明するような瞬間
だ。

「もし私が川だったら今すぐスケート靴を履い
てあなたに会いにゆく」そんなリリックを持つ
ジョニ・ミッチェルの「River」を、中村まり
は歌う。ジョニのオリジナル・ヴァージョンで
も差し込まれていたジングル・ベルのフレーズ
に中村もまた思いを託す。鈴を付けた彼女の左
足が清らかにステップを踏み、誰の心にもある
クリスマスの時を静かに告げていく。

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by obinborn | 2013-12-24 01:55 | 中村まり | Comments(0)  

1972年のグレイトフル・デッド

1972年のデッドといえば誰もが思い起こすのが4月
から5月にかけて行われた初のヨーロッパ・ツアー
のことだろう。ロンドンを皮切りにコペンハーゲン、
ブレーメンやハンブルグそしてパリ、アムステルダム
までに足を伸ばしたこの長い旅は彼らの記念碑となっ
た。若き日のエルヴィス・コステロがどこかの会場に
いたことも今ではすっかり有名になったエピソードだ。

そのヨーロッパ・ツアーを終えたデッドがアメリカに
戻り、8月にオレゴン州のヴェネタで行った野外コン
サートもまたファンにとっては忘れられないもの。
デッドとは古くから付き合いがあり、スピリットの面
で多くを共有してきた友人のケン・ケジーが財政破綻
に陥ったため、彼を救うべく開催されたベネフィット
・ライヴだが、その音源と映像がやっと初公開された。
それがCD3枚と1枚のDVDからなる『Sunshine Day
dream』(Rhino 2013年)だ。先のツアーをレコー
ディングした『Europe '72』は当時発売されたあまり
に有名な名作だが、その地続きの記録として楽しみた
い。

デッドの内部事情としてはヨーロッパ遠征にはかろう
じて同行したピッグ・ベンが病症悪化のためか、既に
メンバーから外れていることが寂しい。朴訥とした彼
の歌声やハーモニカあるいはオルガンがある意味初期
のデッドを支えてきただけに、そのブルージーな個性
が聞けないのは何ともやり切れない。しかしその一方
でキース・ゴドショウのピアノが冴え渡り、彼の姉妹
であるドナ・ゴドショウ(マスル・ショールズでバッ
ク・コーラスをしていたらしい)も、例えばマール・
ハガードの「Sing Me Back Home」後半でシャウトす
るなど、新しいメンバーがしっかりと次の季節へと向
かって羽根を広げているのが頼もしい。

やはり音楽面での両翼はジェリー・ガルシアとボブ・
ウェアだろうか。じわじわとガルシアがソロ・ギター
できらめくようなフレーズを織り成す一方、ウェアは
溌剌としたロック・ナンバーを歌い、リズム・ギター
にシャープな切れ味を見せる。細かいリフを重ねなが
らガルシアのギターが虹を架けていく「Bird Song」
が静ならば、ウェアが「Mexicalli Blues」や「One
More Saturday Night」で示すのはまさに動のロック。
この二人の対照的な個性がデッドを支えてきたと思う
のはぼくだけではあるまい。

白眉はやはり長尺のインプロヴィゼイション「Dark
Star」に違いない。漆黒の闇のなかに星を探し出すよ
うな迷宮のイメージ。それを言葉でなく音楽という行為
のなかでそっと指し出していく彼らの姿が素晴らしい。
延々と続くインプロは当時の常識だった「3分間のポ
ップス」に抗らうものでもあったはず。その長い演奏
が終わり、マーティン・ロビンスのボーダー・カント
リー「El Paso」をウェアが歌い始める。デッドを聞い
きて良かったと思える瞬間だ。

なお映像を見るとステージの設営から集まったヒッピ
ーたちまでが本当に開放的だったことがよく解る。む
ろんその裏にはヴェトナム後遺症なり人種差別なりが
影を落としていたわけだが、パソコンもメールもライ
ンもなかった時代の生きた物語として継承すべき部分
は少なくない。なおアルバム表題にあるSunshine Da
ydreamは、ウェアが歌うロード讃歌「Sugar Magno
lia」から引用されたものだ。

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by obinborn | 2013-12-23 02:30 | rock'n roll | Comments(0)  

今年最後の青山陽一the BM'sを観た

かしぶち哲郎の訃報が昨日届けられたばかりで何
とも気持ちが塞ぐなか、21日は青山陽一the BM's
今年最後のワンマン・ライヴを吉祥寺のマンダラ
2にて。思えば青山もムーンライダーズとは浅か
らぬ縁がある音楽家の一人。そんないささかの感
傷もあったが、青山本人は普段にも増して気合い
たっぷり。きっと思うところもあったと想像する
が、演奏はどこまでも豪胆な熱気を放つものとな
った。内気かと思わせる自画像と骨太なロックと
の取り合わせが現在のthe BM's最大の魅力だが、
この日もまた強靭かつ繊細なグルーヴがあたりの
空気をたっぷり隅々まで震わせていく。

とくにこの日は昨年の暮れ同様に元the BM'sの田
村玄一のギター及びペダル・スティール・ギター
を加えたスペシャルなクィンテットになった故、
音の広がりが素晴らしかった。シンプリティを極
めた綱渡り的なオルガン・トリオや、クリームや
ヘンドリクス・エクスペリアンスといったロック
・リジェンドを彷彿させるパワー・トリオなど、
その時々の編成で演奏の輪郭が微妙に変わるのは
今の青山ならではの強みだが、この日はツインギ
ターでガンガン弾きまくる力技や、ペダル・ステ
ィールならではの浮遊感が際立っていた。ペダル
=カントリーという常識を覆していく彼の斬新な
プレイに覚醒させられるばかりか、昨日大阪で田
村とともに新生KIRINJIで演奏していた千ヶ崎学
の激しく唸りを上げていくエレキ・ベースにも驚
かされた。その頂点はフレディ・キングのファン
ク・ブルーズであり、オールマン・ブラザーズで
も知られる「Woman Across The River」のカバ
ーだったかもしれない。また古くから青山の理解
者でありずっとバンドを支えてきた伊藤隆博も、
この日は特別にセッティングされたグランド・ピ
アノをエレピと平行しながら聞かせる贅沢さだ。
そして現在のthe BM'sの心臓部とも言うべき中原
由貴の起伏に富んだドラミングは高らかにロック
音楽そのものを告げるかのよう。そういえば彼女
の可憐なコーラスも現在の青山には欠かせない要
素に違いない。

思えば歌謡ロックやヴィジュアル系ロックが趨勢
を占めていた80年代半ばに、それらの動きとはま
ったく異なる地平からまるで影絵のように登場し
たのが青山だった(不幸なことにぼくは当時彼の
ことを知らなかった)。グランドファーザーズや
ソロの当初こそニューウェイヴ的な意匠を纏って
いた彼だが、次第に高度なソングライティングと
ギターに磨きを掛け、本来好物だったルーツ・ロ
ックの語彙を活かしながら歩みを進めてきたと言
っていいだろう。それでも今なおあくまで中心に
置くのは淡い色彩感を伴った曲作りの上手さ。一
聴したところ取り留めのない歌詞と旋律が、実は
イマジネイティヴな視界を持っていることに気付
く。抽象詞と音楽という動詞の混ざり方に彼なら
ではの審美眼が覗く。作品としてはもっと後にな
るが、彼のように「夕闇におけるクロール」とい
う不思議な言葉を使う人はいなかったし、複雑な
和声を用いてそれを弾ませる人も少なかったと記
憶する。

この日は「Vampire」や「Million Miles Long Hai
r」といった初期の楽曲に加え、世紀の変わり目の
傑作『Bugcity』からめくるめく変拍子の「難破船
のセイラー」、しなやかなソウル語法を活かした「
Revival」、シンプルなビートがやがて大きくうね
る「Bad Melody Bad」そして恒久の流れを思わせ
る「Bright Lights Bugcity」の4曲が選ばれるなど
懐かしい場面もたっぷり。それらが「炎とは何のこ
とか」「Empty Song」「毎度の調子」といった最
新作からのナンバーとうまく連携しながら、逞しい
演奏をどこまでも繰り広げていった。日本のロック
を牽引したかしぶち氏の他界は残念だが、きっと彼
は天国からほぼ一世代若いこの後輩たちに微笑んで
くれたことだろう。

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by obinborn | 2013-12-22 16:54 | 青山陽一theBM's | Comments(0)  

12月のフラッシュさん

今日は下北沢フラッシュさんのシングル放出日にお伺いしまし
た。しがない自営業者の私ですがこの日のために節制してきて
良かったです(感涙)。R&B〜ブルーズばかりLP1枚7's13枚
を購入しました。これで年が越せそうです。
*      *      *
(LP)
Rosco Gordon/Keep On Doggin'(Mr.R&B)

(7's)
The Staple Singers/You've Got To Earn It(Stax)
Carla Thomas/B-a-b-y(Stax)
Ike&Tina Turner/It's Gonna Work Out Fine(Sue)
Clarence Reid/Good Old Days(Alston)
Oillie Nightingale/Standing On Your Promise(Memphis)
Etta James/Dream(Argo)
Laura Lee/A Man With Some Backbone(Chess)
Laura Lee/Dirty Man(Chess)
Laura Lee/If I'm Good Enogh To Love(Hotwax)
Betty Swann/Don't Wait Too Long (Money)
Guitar Slim/Well,I Done Got Over It(Specialty)
Clarence Carter/Making Love(At The Dark End Of The
Street) (Atlantic)
Clarence Carter/It's All In Your Mind(Atlantic)

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by obinborn | 2013-12-14 18:52 | one day i walk | Comments(0)