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La Vita e Bella

はっきり言ってプロテストソングを歌っているからそのシンガーは
偉いとか政治的意識が高いとか判断するのは間違っていると思う。
むしろ本物のソングライターであればより”長持ちする”ソングライ
ティングのことを考え、音楽的な成熟度にも気を配っているのでは
?とぼくは考える。だいいち本物であれば「これはプロテストソン
グ(抗議歌)です」なんて自分ではけっして言わないし、他人にそ
れを強いることもない。


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by obinborn | 2014-10-31 11:35 | rock'n roll | Comments(2)  

30年めの『VISITORS』に寄せて

今回のデラックス・エディションでも再確認出来るように『VISITO
RS』の過激さが最もよく反映されたのがCOMPLICATION SHAKED
OWN及びTONIGHTの12インチ・シングルだと思う。何でも地方の
放送局にこの12インチを持っていくと針飛びしたという逸話が残っ          ているほどリミッターを振り切ったようなドンシャリ感が半端ない。
何しろまだ12インチ・シングルというフォーマット自体が珍しかった。        佐野元春の革新性は際立っていた。

ただしその革新性を積極的に好んだかというと、ぼくの場合はそう
でもない。とかく音楽ジャーナリズムというのは新しいこと、革新
的であることに価値を置くけれども、筆者としては佐野元春の良さ
がより自然に現われているのは次作『カフェ・ボヘミア』だと思う。
彼をずっと支えてきたザ・ハートランドの名前が初めて記された作
品だけに、”いつもバンドとともに~ALWAYS WITH A BAND "を
信念とする佐野の気持ちが少しも脚色なく伝わってきたから。

先のテキストでぼくは「動的な言葉とサウンド」と記しながら『V
ISITORS』を語ったけれども、そうした取り組みがもっとこなれた
形で結晶しているのが『ボヘミア』アルバムに収録された「99ブル
ース」や「インディヴィジュアリスト」だとぼくは考える。

そういう意味でもぼくは『VISITORS』を、佐野元春という希有の
アーティストが昨日に別れを告げ、次のステップに進むためにどう
しても記録しなければならなかった”報告記”だと思っている。その
気持ちはあれからちょうど30年の歳月が流れた今でも変わらない。

むろん『VISITORS』に愛を込めて。

小尾 隆

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by obinborn | 2014-10-24 12:56 | rock'n roll | Comments(2)  

10月22日の木下弦二

22日は下北沢のleteにて木下弦二のソロ・ライブを。東京ローカル
・ホンクが繰り出す曲のラフ・スケッチが聞けるばかりか、ソロで
あるが故に歌の輪郭が浮かび上がってくる瞬間もあって、約2時間
半たっぷり弦二のソングライティングの妙に触れることが出来た。
またソロならではの楽しみであるカバー曲も、忌野清志郎の「よそ
者」と「わざとFeel So Bad」ポリスの「メッセージ・イン・ザ・
ボトル」スティーヴィー・ワンダーの「サンシャイン・オブ・マイ
・ライフ」J.ガイルズ・バンドの「アイム・フォーリン」などなど
が飛び出し、会場はしばしリヴィングルームのような親しみの感情
に満たされた。

何も今夜初めて弦二のソロに接したわけではないのに、彼のライブ
の帰り道はいつも幸せに包まれる。それはきっと彼が自分の普段
の暮らしから寸分違わない場所で歌詞を思い浮かべ曲を書き留めて
いるからだと思う。等身大と言ってしまえばあまりに手垢に塗れた
形容かもしれないが、この人の書く歌詞に嘘はないと信じられる、
何ともぶきっちょな息遣いが伝わってくる。福岡での彼の生活から
一コマを切り取ったような「夏みかん」や「遅刻します」がそうだ
し、ジョン・レノンの「ゴッド」に匹敵する真摯な「身も蓋もない」
では、こんなシリアスなフレーズも飛び込んでくる”ブルーズなんて
真似事さ、ロックンロールなんて習い事さ”

とても不思議なことだが、木下弦二という男に他の職業を思い浮か
べることがぼくはまったく出来ない。教師をしながら歌う人とか、
弁護士を務めながらギターを奏でる人とか、あるいは漁師が久し振
りに陸に戻ってきて歌い始める(それはそれで素敵だね!)といっ
たイメージが、弦二に限っては本当に不釣り合いなのである。

神様から授けられたであろう才能を、この人は脇道に逸らすことな
く幾多の努力とともに磨き上げてきた。いや、”もうだめだ”と思
った苦難の時期があったのかもしれないが、木下弦二という人はけ
っして毎日昇る空や雲を見上げることを怠ったりはしなかった。彼
の目が追う先々に人々の確かな営みがあり、そっと差し伸ばされた
手の彼方には、思わず愛おしくなるような町並みが連なっていった。
それらがいつしか弦二ならではのソングライティングとして、鮮や
かに結晶していった。

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by obinborn | 2014-10-23 02:04 | 東京ローカル・ホンク | Comments(0)  

10月19日の東京ローカル・ホンク

木下弦二が歌詞ノートと睨めっこをしている。店のビザール・ギタ
ーをいじっている井上文貴を弦二が「どのギターでも同じフレーズ
だな!」とからかっている。せっかく新調したドラム・キットにも
かかわらず苛立ちを隠せないのが田中クニオだ。何でもバスドラの
キックが不安定らしく、彼はボルトを何度も締め直している。店に
横付けされたままだったハイエースを駐車場に移動させた新井健太
は、戻るやいなや田中の側に寄り添う。そして彼ら4人はやがて車
座になりながら、隠れた名曲「伊豆半島」のコーラスを歌い始める。
生音のみの、気持ちがどきりと澄まされる瞬間だ。

そんなリハーサルの断片を拾い上げていくと、ロック・バンドとい
うのは本当に愛おしい集合体だなと思う。誰一人欠けても音楽は成
り立たないし、その日のふとした心持ちによって演奏は良い方にも
悪い方にも転がっていく。まして東京ローカル・ホンクの場合、補
正されたプログラミング・サウンドではなく、あくまでも、どこま
でも、人間臭いバンドであるからなおさらだ。そんなホンクメンを
観ていると、ぼくはミック・ジャガーの言葉を思い起こさずにはい
られない。「ローリング・ストーンズは家族のようなものさ」

ファミリー的な一体感が溢れ出すのは、今日(19日)の会場であ
るパラダイス本舗に集まったお客さんたちの功績でもあるだろう。
歌われる歌詞のひとつひとつを聞き手たちが愛おしそうに反芻し
ていく。思いっきりの笑顔とともにホンクへと投げ返していく。
そんな場面場面はむろん他の会場でも活かされているのだが、ホ
ンクメンが多くを担った夕焼け楽団のお店での演奏だけに、親し
みの感情はステージ後半になればなるほど密度を増していった。
アンコールではお店のマスターでもある藤田洋介が呼ばれ、温か
さが溢れ出す彼ならではのトーンとリックでテレキャスターを繰
り出していく。そこで歌われた「星くず」と「バイ・バイ・ベイ
ビー」のことを、ぼくは生涯けっして忘れることはないだろう。

三人の優れたギタリストが互いに極上のソロを繰り出していく。
後方のリズム・コンビがそれをがっつりと受け止めていく。

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by obinborn | 2014-10-20 02:11 | 東京ローカル・ホンク | Comments(2)  

吹きっさらしの自分

何かへの反発心が自分を奮い立たせるということがある。本当はも
っと純粋な動機があればいいのだろうけれど、悪いお手本を見るこ
とで自分はこうはなるまいと決心することは出来る。1970年代や
80年代前半を通して体験した渋谷のロック喫茶ブラックホークは、
ぼくにとって倒すべき相手であり、けっして見習おうとは思えない
教師のような存在だった。店内で会話してはいけないというスクエ
アな態度、自分たちはマイナーな音楽を愛好しているから世間一般
人よりも優れているのだと言わんばかりの倒錯した美意識、一見の
客を排除するような閉鎖性など、何から何までぼくを激しく苛立た
せた。ああ、彼らは音楽を介在者として人々に踏み絵を迫り、言葉
は悪いが、ある種の選別思想を植え付けているのだなと感じた。

むろん時代のせいもある。今のように情報が隅々にまで伝播してい
る状況とは異なり、ロック喫茶は未知の音楽との出会いの場所だっ
たから、他店との差別化を図るためにホークが”マイナーな音楽”に
特化していったという側面はあるだろう。しかしながら、ごく普通
に考えてお喋り厳禁という方針がいい聞き手たちを育てていくとは
ぼくには到底思えなかったのである。皮肉なものである。ホークで
聞けた音楽とかなり重なる”もうひとつのロック”を愛好し続け、彼
らと何らかの接点もあっただろう自分が、アンチ・ホークの思いを
抱えながら今日まで頑張ってきたなんて。

ホークの居心地の悪さに耐えられなかったぼくは、同じ百軒店界隈
のB.Y.Gによく逃げ込んだ。そこはホークとは対照的な陽性の世界
だった。そして後年そんな打ち明け話をすると、同じように感じて
いた同士たちとたくさん出会った。何のことはない。みんなホーク
の権威主義に馴染めなかったのに、当時はカッコ付けるべく痩せ我
慢していたのだ(笑)

自分を何かにアイデンティファイさせるまい。ひとりぽっちの吹き
さらしの自分こそが他の誰でもないリアルな個人の実感なのだ。そ
んな思いを掌に握ったようなアーニー・グレアムの晩秋のような歌
がぼくは大好きだった。

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by obinborn | 2014-10-19 08:17 | one day i walk | Comments(0)  

「音楽語り:いい音LIVE!」盛況でした!

本日の「音楽語り:いい音LIVE!」にご来場くださった皆様、お忙
しいなか誠にありがとうございました!お陰様でお店の外にまで
お客様が溢れ出すほどの大盛況で、私も大変心強かったです。MC
でも弱冠お話しさせて頂きましたが、みなさんと一緒に聞く音楽は
やはり人をハッピーな気持ちにさせてくれます。素晴しい音響機材
を整えて頂いた(株)エルプの竹内さん&スタッフの皆さん、お店
を切り盛りしてくださったクレオール・コーヒースタンドの中林夫
妻にも感謝致します。またの機会にぜひもう一度やりましょう!
ちなみに今日のDJのテーマは”ルーツ・ロックを中心にアメリカ音
楽の水脈を探る”でした。以下プレイリストを記しておきます。
*       *      *
FACE1
1HOT TUNA/WATER SONG
2 GRATEFUL DEAD/UNCLE JOHN'S BAND
3 OLD&IN THE WAY/PANAMA RED
4 RY COODER/IF WALLS COULD TALK
5 TAJ MAHAL/YOU GOT IT
6 ESSO TRINIDAD STEEL BAND/I WANT YOU BACK
7 JESSE ED DAVIS/NATURAL ANSEM
8 ROGER TILLSON/GET UP JAKE
9 ARLO GUTHRIE/COOPER'S LAMENT
10LEON RUSSELL/MANHATTAN ISLAND SERENADE
11 DAN HICKS&THE HOT LICKS/WALKIN' ONE&ONLY
12 MARIA MURDAUR/WAITRESS IN THE DONUTS SHOP
*   *   *
13 中村まり/GOING BACK TO MY HOME
14 東京ローカル・ホンク/遠い願い
*   *   *
FACE 2
15 THE BAND/UP ON THE CRIPLE CREEK
16 JOHN SIMON/MOTORCYCLE MAN
17 JOHN HARTFORD/NOBODY EATS AT LINEBAUGH'S ANYMORE
18 ALLAN TOUSAINT/SOUL SISTER
19 THE METERS/ HERE COMES A METER MAN (7's)
20 BETTER DAYS/LOUISIANA FLOOD
21 RONNIE BARON/HAPPY HAPPY HAPPY
22 DR.JOHN/HUEY SMITH MEDLEY~a:HIGHBLOOD PRESSURE~b:DON'T YOU JUST KNOW IT~c:WELL I'LL BE JOHNBROWN
23 BOBBY CHARLES/PUT YOUR ARMS AROUND ME HONEY (7's)
24 LEE DOREY /HOLY COW
25 SIR DOUGLAS QUINTET/ NUEVO LAREDO
26 WILLIS ALAN RAMSEY/ANGEL EYES
27 JESSE WINCHESTER/EVERY WORD YOU SAY
28 BARBARA KEITH/DETROIT OR BUFFARO
29 GEOFF MURDAUR/HIGHER AND HIGHER
*   *   *
(ONE MORE MILES TO GO)
30 TAJ MAHAL/AIN'T GWINE TO WHISTLE DIXIE(ANY MO')

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by obinborn | 2014-10-18 19:35 | one day i walk | Comments(2)  

歌ってよ、フィービー

一人のリスナーとして魅力的だなと思える音楽は、やはりジャンル
を軽々と跨いでいるような演奏家によるものだ。それも出来ること
ならば自然な佇まいを感じさせるものがいい。なかにはかなり意図
的なミクスチュア・ロックもあるけれど、あらかじめ奇抜さを狙っ
たような演奏には心が動かない。フィービー・スノウのデビュー・
アルバムを久し振りに聞き直してみて、そんなことを思わずにはい
られなかった。ギターを抱えながら歌う女性シンガー・ソングライ
ターはそれまでもある程度いたと思うが、それはおおむねフォーク
の範疇に収まるものであり、ジョニ・ミッチェルのような複雑な和
声を活かしながら、やがてフュージョン畑のプレイヤーたちと手を
携えて歩みを進めていった人はあくまで例外だった。

そんな環境のなか73年に制作されたフィービーのアルバムは何から
何まで新鮮だった。サム・クックのGOOD TIMESが一曲めに置かれ
てパースエイションズのコーラスが絡んでくる展開はまるでR&Bの
ようだし、続くHORPO'S BLUESではテディ・ウィルソンのピアノ
にズート・シムズのテナー・サックスと古き佳き時代のジャズメン
を起用するといった具合だ。だいいちフィービー自身が奏でるアク
ースティック・ギターがリズミカルというか、心地好いシンコペイ
ションに彩られていた。グリニッチ・ビレッジのフォーク・クラブ
やコーヒー・ハウスで歌っていた”フォーク姉ちゃん”の音楽背景を
思わずにはいられない。

曲の性格によってウッド・ベースとエレクトリック・ベースとを、
しっかりと冷静に使い分けているのも流石。半分はプロデュース
やエンジニアリングを務めたディノ・エアリなりフィル・ラモー
ンの指示なのかもしれないが、そこにはフィービーの音楽を伝える
にはどうしたらいいのだろうか?という第三者の優れた眼差しが伺
える。75年の2月に全米5位!に輝いたシングル・ヒットPOETRY
MANにしても、曲の骨格を支えているのがチャック・デルモニーコ
の深い一拍を伴ったウッド・ベースであったことに、今さらながら
感嘆したりして。

ニューヨーク生まれの彼女を盛り立てるべく、ボブ・ジェイムズや
ラルフ・マクドナルド、ヒュー・マクドナルドといったフュージョ
ン・フィールドの演奏家たちが東海岸ならではの粋を尽くす。アク
ースティック・ギターの相方としてデヴィッド・ブロムバーグが
EITHER OR BOTHでフィービーと会話する。アルバムを締めるNO
SHOW TONIGHTでエレクトリックの躍動するソロを繰り出すのは
デイヴ・メイソンだ。1973年、ニューヨークのA&Rスタジオには
きっと奇跡のような瞬間が幾度となく訪れたことだろう。

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by obinborn | 2014-10-17 18:41 | one day i walk | Comments(0)  

モンキービジネスの住人たちに捧げる

実はぼくの場合、いわゆる音楽評論の同業者との付き合いはあまり
ない。信頼に値する幾つかの同業者がいないわけじゃないけれど、
彼らとの会話はと言えばおおむねどこぞのレコード会社は毎週送別
会をやっているとか、洋楽の国内リリースが全盛期の三分の一にな
ってしまったとか、そんな愚痴や不況バナシばかりでちっとも楽し
くないからだ。とくにぼくがこの業界に不信感を抱くようになった
のは、ろくに当該ミュージシャンのライブに行きもしないのに彼ら
のインタビューを取ったり、提灯記事を書いたり、挙げ句の果てに
はプロの専門プレイヤーでもないのに共演して喜ぶような連中がい
ることだった。ある一定の好きな音楽家たちのライブに通い続ける。
そうすることで初めて理解出来ることがある。およそそんなことを
信念(という程大袈裟なものではないですが〜笑)としているぼく
にとって、それはとても理解出来ることではなかった。もういい。
賢いオーディエンスたちはいつか嘘を見破り、長持ちしない原稿を
読んで失笑することだろう。
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by obinborn | 2014-10-10 13:08 | rock'n roll | Comments(0)