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フリー『HIGHWAY』

アンディ・フレイザーは単に優れたベース・プレイヤーとい
うだけでなくソングライターとしての才能もあり、フランキ
ー・ミラーにBE GOOD TO YOUR SELFを書き下ろし、ミラ
ーとの共作にはA FOOL IN LOVEがある。最も有名なのはロ
バート・パーマーに提供したEVERY KINDA PEOPLEだろう。
スライEVERYDAY PEOPLEをどこまで意識したかは定かでは
ないが、この人種融和の物語歌が彼にそれなりの印税をもた
らしたことを願うのみである。フリーの歴史を振り返ってみ
てもデビュー・アルバムの時点ではポール・ロジャーズの自
作が多いものの、徐々にロジャーズ/フレイザーのコラボレイ
ト体制が確立し、充実したソングライティングと研ぎ澄まさ
れたロック・カルテットの黄金時代を迎えたことが解る。

1970年の12月にリリースされたフリー4枚めのアルバム『
HIGHWAY』は、71年の6月に発売された『FREE LIVE!』を
除けば第一期フリーの最終章となった。何でもフレイザーに
よれば「ヒットしそうなシングルを書いてくれっていうプレ
ッシャーがあった。誰だってそんなことは好きじゃないよね。
スタジオにはピーンと張りつめるものがあった。だからぼく
らは解散したんだ。契約があったから日本とオーストラリア
の公演はしたけど….」とのことだが、本人の回想とは別にこ
の『HIGHWAY』はとてもいい作品だ。デビュー当時の典型
的なブルーズ・ロックから脱皮して、仄かなアメリカ南部指
向が見え始めたのもポイントだろう。以前からFIRE AND W
ATERがウィルソン・ピケットによってカバーされるなど南
部サウンドとの相性の良さを見せていたフリーだが、『HIG
HWAY』はそのようなエレメントに満たされていた。

サイモン・カークがヘヴィなキック・パターンから離れ、タ
ムの連打によってレイドバックした味わいを醸し出すアルバ
ム表題曲HIGHWAYからして従来の彼らとは違っていたし、
押し出しの強いヴィブラートが特徴だったポール・コゾフの
ギターが温かみのあるレズリー・サウンドでバックに回った
ON MY WAYも秀逸だった。これなどはジェシ・エド・ディ
ヴィスが歌ってもハマりそうなくらい。フリーらしい重厚な
リフを持つミディアム・ロッカーRIDING ON A PONYにして
も、陽性の響きがあって初期のZ.Z.トップにも通じる埃っぽ
さを感じる。このスタジオ・ヴァージョンにはカリンバのよ
うな楽器もチャーミングに聞こえてくる。そして何といって
もフリーの南部指向を物語るのが隠れた名曲BODIEだ。アク
ースティック・ギターによる柔らかい輪郭といい、ロジャー
ズの抑えた声といい、彼らもまたディラン『地下室』のアセ
テート盤や『ジョン・ウェズリー・ハーディング』に影響さ
れたのだろうか?

以上文中で触れてきたフリーの楽曲がすべてロジャーズ/フレ
イザーのソングライター・コンビによるものだと知る時、彼
らがその若さ故に早く解散してしまったのが残念でならない。
もう少し辛抱強く音楽ビジネスの荒波に耐えていれば、例え
ばエリック・クラプトンやデイヴ・メイソンのように渡米し
てから新たな活路が開けたのかもしれない。この『HIGHWA
Y』を聞いていると、筆者はいつもそんなことをある種の痛み
とともに思い起こす。

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by obinborn | 2015-03-19 18:01 | one day i walk | Comments(2)  

さようなら、アンディ

元フリーのベーシスト、アンディ・フレイザーが亡くなって
しまった。死因などはニュースを検索して頂くとして、何だ
か悲しい。またニュー・ロック期のリスペクタブルな人物が
逝ってしまったというやり切れなさだ。今でも模擬試験の帰
り道にお茶の水の楽器屋から聞こえてきたALL RIGHT NOW
や池袋のディスクポートで買った『FREE LIVE!』など、高校
〜予備校時代の断片をふと思い出す。

ビートルズの200曲ちょっとを全部覚えてしまったぼくが次
に好きになったのがフリーだった。ブリティッシュ・ロック
特有のダークな情感も当時の自分の不安定な状況にぴったり
だった。まだザ・バンドなどアメリカン・ロックに出会う前
の話だが、間合いを生かしたミディアム・ビートや黒っぽい
ポール・ロジャーズのヴォーカル(ウッ!やハッ!を入れる
合いの手も最高だ)に無意識のうち、好みの音楽を見つけて
いたのかもしれない。そしてコゾフの泣きのギターにフレイ
ザーのリード・ベースのようなウネリが味わい深かった。と
くに『FREE LIVE!』でのMR.BIGをもう一度聞き直してみて
欲しい。後半部分に於けるコゾフとフレイザーとの丁々発止
はこのライブ作の大きな聞き所だと思う。そのMR.BIGが終
わるとアルバート・キングのTHE HUNTERでコゾフが思い
のたけを絞り出し、アルバム・ラストが何故かスタジオ録音
のアクースティック曲GET WHERE I BELONGで締められる
といった構成にも何とも言えない余韻があった。

直接フレイザーには関係ないものの、ぼくたち日本人にとっ
ては第二期のフリーに山内テツが加入したのも大きな喜びだ
った。テツとアメリカ人のラビットが参加したこの第二期フ
リーも忘れ難いものだ。話が飛んでしまったが、英国のロッ
ク・カルテットとして第一期のフリーは最高の存在だった。
アルバム『HIGHWAY』やシングルMY BROTHER JAKE辺り
から見せ始めた、薄明かりのようなアメリカ南部指向も含め
て、それらにワクワクした日々がまるで昨日のようだ。

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by obinborn | 2015-03-18 17:02 | one day i walk | Comments(0)  

キャロル・キング『タペストリー』

ジャケットに映る主人公の女性はジーンズにセーターと
いう飾らない姿で窓辺に腰掛けている。さらに彼女は裸
足なのだった。ジム・マクラリーが撮影したその写真と
同じように、キャロル・キングはこのアルバムで自然な
歌を歌い、鍵盤楽器を弾いている。プロデュースを担当
したルー・アドラーはこう回想している「キャロルがす
ぐ近くで歌い、ピアノを弾いているような録音を心掛け
たんだよ」

1971年にリリースされて以来この『タペストリー』は
302週間チャートインされるという偉業を成し遂げた。
つまりそれほど人々の心を捉えたのだった。シンプルな
演奏といってもピアノの弾き語りではない。実際ここに
収録された曲で彼女がオルガンと向き合っているだけの
曲はアルバム表題になったTAPESTRYのみであり、その
ほかのナンバーはチャールズ・ラーキーのベースとジョ
エル・オブライエンのドラムスを中心にしたスモール・
コンボの演奏で彩られ、ギターのダニー・クーチらとと
もに彼らは既にジョー・ママというグループで一枚めの
アルバムをリリースしていたから、ジョー・ママをバッ
クにキャロル・キングが歌った作品なのかもしれない。
例えばSO FAR AWAYで丁寧に裏メロを拾い上げていく
ラーキーのエレクトリック・ベース。例えばIT'S TOO
LATEに聞き出せるクーチの簡潔なギター・ソロ。それ
らの出しゃばらない演奏がこのアルバムに膨らみをもた
らしている。

本作はまたキャロル・キングの成長物語と言えるかもし
れない。ゴフィン=キングのソングライター・コンビで
50〜60年代に多くのポップ・ヒット曲を作ってきた彼ら
だが、作詞を担当していたジェリー・ゴフィンはある日
ボブ・ディランの抽象詞に感銘を受け自分たちのレコー
ドを叩き割ったと伝えられている。一方のキングはどう
だろう。彼女はかつてガール・グループのシレルズに提
供したWILL YOU LOVE ME TOMORROW?をここで再
び取り上げた。無邪気で他愛ないティーンエイジ・ソン
グだったこの曲だが、ここでキングはテンポを落としな
がらじっくりと歌っている。「今夜あなたは私を愛して
くれたけど、それは明日も続くの?」というリフレイン
に祈りの感情が込められ、けっして流麗とはいえない彼
女のヴォーカルはかえって歌に真実味を与え、ジェイム
ズ・テイラーのコーラスがそれを後押ししていく。

今でもたまに街角のBGMで『タペストリー』の楽曲が
聞こえてくると、ふと足を止めてしまう。それは自分
が自分らしくあり続けるための処方箋であり、最後の
砦のようなものだろう。

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by obinborn | 2015-03-15 09:12 | one day i walk | Comments(0)  

3月12日の佐野元春

12日は佐野元春デビュー35周年アニヴァーサリーの前夜祭
となるキックオフ・パーティを恵比寿のリキッドルームで。
コヨーテ・バンドを従えたライブが第一部、気鋭の噺家で
ある立川志らべによる落語を手始めに、彼と佐野とのトーク
・セッションを行ったのが第二部と、会場はファン・ミーテ
ィングの如く和やかなムードへと包まれた。何でも志らべは
長年の佐野ファンらしく、楽曲から雑学までを縦横無尽に取
り込んだ噺で楽しませてくれた。トーク部分では「佐野さん
は吉野家の牛丼食べたことあるんですか?」というツッコミ
も(笑)

ライブのほうはコヨーテ・バンドに大井”スパム”洋輔のパー
カッションが加わる編成で、「誰かが君のドアを叩いている」
を珍しくオープニングに選び、次に「ポップ・チルドレン〜
最新マシンを手にした陽気な子供達」を繋げるという意表を
付いた展開! 92年の『SWEET 16』アルバムに収録された
この2曲がレアだった。それでも3曲めには佐野の楽曲のな
かでも最も政治色が濃厚な「国のための準備」が演奏される
など、現在の日本に漂う不穏をしっかり届けた(実際為政者
はいつだって甘い言葉で巧みにぼくたち大衆を操るのだ)

コヨーテ・バンドの緊密な演奏を聞いていると、今現在の佐
野が幾度めかの沸騰点に達しつつあることを実感出来る。彼
はデビュー以来常に一貫してバンド・サウンドを掲げてきた
が、コヨーテ・バンドと合流してからはや7年近くになろう
としている。この夜は佐野がコヨーテ・バンドとともに取り
組んだ作品として3枚めとなる新作のリリースも告知された
。ご本人に聞いたところによると、レコーディングはほぼ終
わり、今現在は(詰めの重要な作業である)ミックス・ダウ
ンを行っているとのこと。『BLOOD MOON』とネーミング
されるらしいその新作が今から楽しみだ。

それにしても思う。自分は一体何が好きで佐野元春を聴いて
きたのだろうと。帰りの電車に揺られながら、ぼくは彼の35
年の歩みを考えていた。同時に自分が通り過ぎてきた歳月の
ことを考えていた。

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by obinborn | 2015-03-13 11:28 | Comments(2)  

ペブルズとthe BM's

8日は渋谷の喫茶スマイルにてペブルズと青山陽一the BM's
のツーマン・ライブを。トレモロ・サウンドも鮮やかにオー
ルディーズやガレージ・ロックに特化した前者とソウル〜フ
ァンクの語彙を独特の浮遊感溢れるサウンドスケープで消化
する後者では音楽のタイプは違うものの、そんな意外な組み
合わせを至近距離で楽しんだ。クッキーズのCHAINSをアカ
ペラ・コーラスでオープニングに持ってきたペブルズは、そ
の後もドネイズのDEVIL IN HIS HEARTを交えながら楽しま
せてくれた。それでも単に50〜60'sの古典を再現するだけに
留まらない奔放さが、何よりも彼女たちの魅力だと信じたい。

すっかり聞き馴れたthe BM'sはこの日パワー・トリオとなる
G、B、DS編成でバンド・サウンドの骨格を剥き出しにした。
せっかくだから以前このメンバーで演奏したクリームの「政
治屋」を聞きたかった気持はあったものの、青山、千ヶ崎学、
中原由貴の壮絶なインタープレイの数々は、ゲストに合流し
たピート福島のサックスとの丁々発止もあって、鍛錬を重ね
たプレイヤー同士ならではの連携に満ちていた。個人的には
もっと長く演奏し続けて欲しかったくらいだ。

アンコールでペブルズのコーラスを迎えたthe BM'sはマーヴ
ィン・ゲイのSTUBBORN KIND OF FELLOWと、オリンピッ
クスのGOOD LOVIN'を披露!異なるバンド同士が接点を見い
出した場面として、この3月を記憶しておきたい。


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by obinborn | 2015-03-09 01:34 | 青山陽一theBM's | Comments(0)  

3月7日

本日(7日)は山本ガンボさんプレゼンツのガンボ・グリグ
リ・ナイトを新橋のARATETU UNDERGROUNDにて。来て
くださった皆様ありがとうございました!お陰様で大盛況で
した。店主のアラテツさん、美味しいガンボを提供してくだ
さった山本さん、ナイスな選曲で唸らせてくれたDJのCOUN
T.D氏、心に染み入る弾き語りライブを届けてくれた双六亭の
ニシイケタカシさんにもここで改めて感謝致します!私もDJ
をさせて頂きました。普段は2台のターンテーブルでつなぐ
のですが、今回はMCを挟むというユル〜イ形でした。それも
また良いものだと個人的には思っています。以下が私のプレ
イリスト。すべてシングル盤で回しましたとさ(^0-)

SIR DOUGLAS QUINTET /MENDOCINO
SIR DOUGLAS QUINTET/SHE'S ABOUT A MOVER
JOHNNIE ALLAN/ PROMISED LAND
LITTLE RICHARD/GOOD GOLLY、MISS MOLLY
FATS DOMINO/I'M GONNA BE A WHEEL SOMEDAY
FATS DOMINO/BE MY GUEST
TAMMI LYNN/MOJO HANNAH
KING FLOYD/GROOVE ME
BOBBY BLAND/THESE HANDS(SMALL BUT MIGHTY)
JERRY BUTLER/I DIG YOU BABY
LITTLE MILTON/BABY I LOVE YOU
WILLIAM BELL/NEVER LIKE THIS BEFORE
SYL JOHNSON/WE DID IT
OTIS REDDING/YOU LEFT THE WATER RUNNING
CHUCK WILLIS/DON'T HANG UP MY ROCK'N 'ROLL SHOES

〜ONE MORE MILES TO GO~
SYL JOHNSON / WE DID IT
SLIM HARPO/BABY SCRATCH MY BACK
THE METERS/AFRICA
THE METERS/HEY POCKY A WAY
SHIRLEY&LEE/LET THE GOOD TIMES ROLL
CHRIS KENNER/I LIKE IT LIKE THAT
ROBERT PARKER/BAREFOOTIN'
DELANEY & BONNIE & FRIENDS/SOUL SHAKE
TONY JOE WHITE/POLK SALAD ANNIE
OSCAR TONEY JR./DOWN IN TEXAS
THE SHOWMEN/IT WILL STAND

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by obinborn | 2015-03-08 01:54 | one day i walk | Comments(0)  

佐野元春「君がいなくちゃ」を聞いて

一曲を何度も繰り返しながら聞くのはいつ以来のことだ
ろう。ぼくが中学や高校生だった頃は45回転のドーナツ
盤にそうして親しんだものだが、あれから随分長い歳月
が経ってしまった。そんなことを思い出しながら佐野元
春の新しいシングル「君がいなくちゃ」をリピートして
いる。正確にはお金と対価でダウンローディングした音
源なのでシングル盤と呼ぶにはいささか戸惑いがあるも
のの、それでも彼の新しい歌がアルバムの予告編として
届けられたことを喜びたい。

何でもこの「君がいなくちゃ」は佐野が16歳の時に作っ
た曲だという。長い間眠っていたこの歌を今何故掘り起
こしたかは解らない。しかし今回それがザ・コヨーテ・
バンドによる重心の低いミッド・テンポの膨らみのある
演奏で披露されると、まるで生まれたての歌のように響
き渡ってくる。歌の主人公はここで何度も何度も「君が
いなくちゃ」と繰り返している。その他の部分の歌詞も
簡潔さが際立つくらいだが、そこに込められた想いは彼
が16歳だった頃と今現在とでは重みが違うような気がす
る。

特定の友人や恋人に向けられた”君”というよりは、もっと
抽象化された他者としてのそれ。佐野元春の音楽を以前か
ら耳にしてきた者なら、彼が自分が悲しいとか自分は怒っ
ているといった感情発露よりも、”君”との関係を辛抱強く
築こうとしてきたことが解るだろう。古くは「君を探して
いる」がそうだった。震災後にまったく別の意味を携えな
がら迫ってきた「君を連れてゆく」がそうだった。そして
彼は聞き手を励ますように”今までの君は間違いじゃない”
と歌ってきた。茜色に暮れなずむ空を見つめながら”また
君に会えるのはいつの日のことになるだろう”と歌ってき
た。

どんなに美味しい食事でも一人で食べるより大事な誰かや
気の許せる仲間たちとテーブルを囲むほうが楽しいに決ま
っている。自分という弱々しい小舟で社会という荒波に漕
ぎ出していく時、それを見守ってくれる相手がいたらどれ
ほど心強いだろう。一人遠く離れた土地を旅している時、
誰かからの便りに人は思わず頬を緩める。「ぼく一人が幸
せでもそれを幸せとは呼ばない」と言ったのは誰だっただ
ろうか。

そういえばソウル音楽の語彙が込められた「君がいなくち
ゃ」のビートは心臓の心拍数や歩く歩幅に似ている。BPM
で測量するならば、比較的遅めのリズムだろう。それでも
じっくりとした息遣いと着実な歩みを感じさせるリズムが
この曲に生命を与えている。今度佐野元春に会う機会があ
れば、真っ先にそのことを伝えよう。

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by obinborn | 2015-03-06 11:01 | rock'n roll | Comments(2)  

3月1日の東京ローカル・ホンク

1日は東京ローカル・ホンクのライブを自由が丘のマルディ
グラにて。西日本を回った今回のツアー・ファイナルとなっ
たこの夜も、彼らは疲れを見せることなく弾力のある温かい
演奏を繰り広げてくれた。挨拶代わりに始まった「サンダル
鳴らしの名人」のアカペラからラテン・ビートに彩られた「
引っ越し娘」へと連なる序盤の流れも鮮やかであり、毎日の
牛乳やパンのように親しんでいるにもかかわらず、その演奏
はそれらを欠かさないことで価値を増していくような、大事
な何かをそっと運び込んでくるような、そんな響きがあった。
メンフィス・ソウルそれもウィリー・ミッチェルのハイ・サ
ウンドに返礼するような「はじまりのうた」では、ベースと
ドラムスとが絶妙にシンクロし合いながら膨らみを増してい
くグルーヴが圧巻であったし、彼らのステージには欠かせな
い「お手紙」や「虫電車」が淡いタッチで描き出す人々の暮
らしぶりは、少なくとも筆者にそれが失われた時のことを考
えさせるものだった。

ホンクのソングライターである木下弦二の魅力を追い掛けて
いくと、それは普通の言葉に対して彼がいかに多くの含蓄を
込めているかの一言に尽きる。無駄な修辞を省く。作品のな
かで言い訳をしない。結果として歌われた歌詞なり奏でられ
たサウンドスケープなりに立ち現れるのは作者の素直な心映
えだ。そんなことを感じながら、後半畳み掛けるようにプレ
イされていった「社会のワレメちゃん」や「おいでおいで」
に接していくと本当に大事なものが見えてくる。まして新曲
の(今後重要になっていくと思われる)「身も蓋もない」は、
ジョン・レノンのGODに匹敵するような真摯さだ。そんなひ
とつひとつが胸を焦がしていく一夜だった。

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by obinborn | 2015-03-02 08:38 | 東京ローカル・ホンク | Comments(0)