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スーパーヘヴィという音楽的多国籍軍

何で3年ほど前のスーパーヘヴィの話をしているかというと、
白人3人にインド人とジャマイカ人が一人ずつというこのプ
ロジェクトの人種的ミクスチャーが面白いと思ったから。彼
らの音楽も結果的にレゲェと中近東とラップが入り混ざった
闇鍋のスープの如くになっている。元々はデイヴ・スチュワ
ートの掛け声で始まった集合体とはいえ、当時既に68歳だっ
たミック・ジャガーのアグレッシヴな反応力に驚いた方も多
かっただろう。ストーンズでの活動がその圧倒的な名声とは
裏腹にあまり成果を上げていない現状を思えば、いつになく
生き生きとした声を聴かせる彼の姿が嬉しい。個人的な近況
で言えば、エスタブリッシュになってしまったロック・バン
ドに興味を失くし、そうしたビッグネイムの外タレの公演に
行かなくなってから久しい。やはりロックとはフォーマット
ではなく、音楽的な冒険とケメストリーがあってこそのもの
だと思う。もっとありていに言えばサムシングかな。

ハル宮沢氏曰く「音楽的多国籍軍」となるスーパーヘヴィを
耳にしていると、まだまだロックには残された可能性がある
のだと信じたくなる。白人とインド人とジャマイカ人の混成。
それは計らずも人種的坩堝であるロンドンやパリの町をうま
く反映している。元々はストーンズのリーダーだったブライ
アン・ジョーンズがシタールを学び、モロッコ音楽を採集す
る旅に出た背景には、植民地時代に溯るヨーロッパ人として
の贖罪の意識と、屈折した憧憬とが複雑に入り混ざっていた。
そのようなスタート地点からブライアンと同じ釜の飯を食べ
てきたミックが、時代を超えて民族音楽への関心を深めたこ
とはけっして偶然ではあるまい。近年のロバート・プラント
が行っているアラブ音楽へのアプローチ(昨年のアルバムは
ベスト3に選出済)とともに、筆者が思うところのロックを
実感させてくれる。皮肉にも世界の趨勢はキリスト教とイス
ラム教との間で引き裂かれているが、そうした現状を思えば
なお、異なる音楽の融合を投げかけてくるロバートやミック
の願いが、愛おしさとともに胸に染み込んでくる。

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by obinborn | 2015-11-23 19:17 | one day i walk | Comments(0)  

ルーラルな音楽の祭典、SQUEEZEBOX NIGHTを堪能した!

22日は目黒のリトル・テキサスにて、年に一度の恒例行事と
なるSQUEEZEBOX NIGHTを堪能した。しかも第9回の今回
はロス・ペリキートス、ザディコキックス、コンフントJとい
う超強力な3組が揃い踏みする、まさにスペシャルな一夜!
ペリキートスとコンフントJはチカーノ、ザディコキックスは
クレオールと、本場アメリカではけっして混ざり合うことがな
い文化に根ざした音楽だが、それらを一望出来るのは日本なら
ではの光景だろうか。キーワードはボタン式アコーディオン。
テックス・メックスとザディコとではその奏法もスタイルも異
なるのだが、3組ともアコを雰囲気的に取り入れるのではなく、
あくまで蛇腹をバンドの起爆剤に据えるリード楽器として扱う
姿がどこまでも清々しい。

筆者と同じように今夜の3組もまた、ライ・クーダーの『チキ
ン・スキン・ミュージック』を手掛かりにフラーコ・ヒメネス
を知ったり、ザ・バンドが描いた音楽地図のなかからルイジア
ナ地方のクリフトン・シェニエに辿り着いた世代に違いない。
そんな彼らがよりディープに本場のシーンと触れ合い、音楽的
な熱量を加速させていく様は、今晩のステージの端々から感じ
られたと思う。レコードやCDを通して聴く場合、どうしても
頭でっかちで研究的になってしまう部分を、実際の生演奏はと
ことん柔らかくダンサンブルに解きほぐしていく。ぼくより若
い人たちであれば、ライ・クーダーやザ・バンドという介在役
なしで、すっと飛び込んでいける世界なのかもしれない。

そんなことを思いつつ、筆者もまたキックスが提供してくれた
ラブボードを奏でつつ踊り、生ビールを5本飲んでしまった。
最高のルーラル音楽であり、気の置けないバー・ミュージック
であり、それらは常に人々の阿鼻叫喚に寄り添っている。たと
え記憶が日々とともに濾過されていくとしても、ぼくはこの夜
のことをいつか振り返るだろう。

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by obinborn | 2015-11-23 01:21 | one day i walk | Comments(0)  

ドニー・フリッツの新作『Oh My Goodness』を聴いて

「マスル・ショールズで好きな郷土料理かい?いい質問だ!
そうだなあ、チキン&コーンブレッド・ドレッシング(日本
で言うサラダのドレッシングではなくスタッフィング=詰め
物のこと)だね。あとはミートローフ、マッシュト・ポテト
がソウル・フードだよ!」そんな風にインタヴューで答えて
くれたのが、もう6年前のこと。ドニー・フリッツが久し振
りに新作『OH MY GOODNESS』を発表した。一時は命が危
ぶまれるほどの大病を患った彼だが、すっかり健康を取り戻
し、09年の秋には待望の来日公演をディーコイズのメンバー
とともに実現させた。そんなことも懐かしい。

その際のライヴ盤を含めると通算5作めとなる今回の新作は、
より内省的な響きが心を打つ。これまで以上に音数が少ない
こともあって、バンドのグルーヴを目指した結果というより、
ソングライターとしてドニーが最新の報告を行ったというニ
ュアンスだろうか。彼の盟友だったアーサー・アレクサンダ
ーが遺作で取り上げたIF IT'S REALLY GOTTA BE THIS WA
Yや、スプーナー・オールダムのピアノをバックに歌うアル
バム表題曲を聞いていると、生き残った者が日々の愛おしさ
を噛み締めているようで、つい自分の加齢とも重ね合わせて
しまう。60年代にボックス・トップスへと提供したCHOO C
HOO TRAINの作者版は彼なりの回想録であろうか。「ダン・
ペン&ポールベアラーズが次の扉を開けたんだよ」というリ
リックがあるTUSCALOOSA 1962も何やら自伝的だ。ジェシ
・ウィンチェスターのFOOLISH HEARTとガスリー・トーマ
スのLAY IT DOWNとが2曲連なる辺りは、ドニーが自分以外
の同世代のソングライターを見つめたような極上の味わい。

アラバマ州の故郷フローレンスでのレコーディングで、幾つ
かのオーバーダビングをナッシュヴィルで行った以外は極め
て地味なホーム・アルバムだが、こんな枯淡の世界とともに
暮れなずむ黄金色の空を見上げるのも悪くないだろう。この
男が今日も問い掛けるのは自分の良心であり、彼と仲間たち
が奏でる音楽は、その領域を温め直し守護するかのよう。世
間の喧騒とはまるで別の場所から然るべき歌が聴こえてくる。
あの無邪気なCHOO CHOO TRAINにMG'SのTIME IS TIGHT
のリフが混ざってくるんだから、ホントたまらないよね。

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by obinborn | 2015-11-19 18:36 | one day i walk | Comments(0)  

三島由紀夫『午後の曳航』

遅ればせながらこの歳になって初めて『午後の曳航』を
読みました。三島由紀夫が1963年に発表したこの小説は
息子が義理の父親を殺めてしまうという衝撃的な結末で
当時センセーショナルな話題を集めました。戦後間もな
い横浜の港町を舞台にした物語は二部に分かれ、第一部
ではブティックを営む未亡人と船乗りの男との道ならぬ
恋が描かれ、第二部では彼らの幸福な再婚に反発した13
歳の息子による煩悶が語られていきます。息子が許せな
かった想いをつぶさに観察していくと、母親の再婚とい
う状況に適応出来なかったというよりは、むしろ船乗り
という誇らしい職業を捨て、陸に上がって一般的で規範
的な生活をまっとうしようとした義父への失望がひしひ
しと伝わってきます。実際息子の登は義父と出会ったば
かりの頃は海の男に憧れ、船の見学を嬉々として申し出
るほどでしたが、やがて彼が船を諦め母と一緒になり凡
庸な生活へと身を委ね始める頃から、彼らの幸せと反比
例するが如く、息子は”父”への敵対心を胸にたぎらせ、
遂に復讐してしまいます。

かつての『青の時代』同様、『午後の曳航』でも三島ら
しい切羽詰まった美学と修辞的で過剰な文体(スタイル)
とが物語の両軸となっています。ある意味、義父を殺め
ることで、かつて勇敢な船乗りだった男の人生を祝福す
るかのようなアイロニーが胸に突き刺さります。こうし
た展開を、その後の三島が辿った自決事件になぞらえて
しまうのは少しばかり安易でしょうか? 凡庸な毎日の
なかに生き甲斐を見出しそうとしている私には、あまり
にも衝撃的で生めかしい作品でした。

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by obinborn | 2015-11-17 18:17 | 文学 | Comments(0)  

アラン・トゥーサンが初めて見た雪

タイムラインを追っていたら思わぬ訃報が...。ソングライター
/ピアニスト/プロデューサー/パフォーマーとしてニューオーリ
ンズのR&B〜ファンク・シーンを牽引してきたアラン・トゥー
サンが、11月9日ツアー先であるスペインのマドリードで亡く
なりました。心臓麻痺による突然死でした。享年77歳。リー・
ドーシーやミーターズと連携し合った数々の作品が今も特に印
象に残っています。ドーシーの『イエス・ウィ・キャン』アル
バムに惚れ込んだロビー・ロバートソンが、アラン・トゥーサ
ンをウッドストックまで呼び寄せ、ザ・バンドの『カフーツ』
と『ロック・オブ・エイジズ』を完成させるなど、ロックのサ
ークルからも注目を浴びた人でした。昨年暮れにもここで紹介
させて頂きましたが、リヴォン・ヘルムはトゥーサンのことを
こんな風に回想していました。

「背が高く威厳があり、ぼくたちと同じくらい引き蘢った生活
をしているアランは、アルバート・グロスマンのゲスト・ハウ
スに行った。そうすると雪が降り始めた。それは彼が生まれて
から初めて見る雪だった。アランはハーブ・ティーとテープ・
レコーダーと五線紙が欲しいと言い、部屋の暖房をもっと上げ
るように言った。彼が書いたホーン・アレンジのための楽譜は、
ぼくたちの音楽に金色の王冠をかぶせて輝かせた。まるで遠い
国から偉大な魔法使いがやって来て、叡智を授けてくれたみた
いだったよ」

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by obinborn | 2015-11-11 00:51 | one day i walk | Comments(0)  

中尾淳乙『ARMADILLO TRIP』

中尾淳乙さんのセカンド・ソロ・アルバムが遂に完成しま
した。70年代にオレンジ・カウンティ・ブラザーズのギタ
リストとして活躍された中尾さんですが、オレンジ解散後
も音楽活動を継続。こうして新作が届けられるのは往年の
ファンとしては嬉しい限りです。内容もボブ・ウィルスば
りのウェスタン・スウィングに始まり、コンフント・スタ
イルのテックス・メックス、ダグ・サームが好みそうな3
連のバラード、ガレージ・ライクなロックンロールといっ
た具合にオレンジ時代から変わらないテイストを更に推し
進めた印象です。またほぼ全編ご自身のヴォーカルをフィ
ーチャーするなど、歌モノへのこだわりを見せている点も
いいですね。むろん永遠の風雲児、飯田雄一さんのように
豪放な歌唱ではありませんが、ウィルコ・ジョンソンが歌
う時のようなひたむきなサムシングをきっと感じ取ること
が出来るでしょう。デュアン・エディ風のトワング奏法を
織り込んだり、メキシコ民謡のソン・ハローチョに取り組
んだ曲ではバホ・ギターが聴こえてくる隠し味も絶妙で、
弾きまくりとは正反対の”曲を生かす”ギタリストとしての
主張がしっかり伝わってきます。前作『AMERICANA』か
ら自然に連なるサウンドスケープ。この『ARMADILLO T
RIP』には、中尾さんが長年温めてきた音楽がテキサスの
土埃とともにたっぷり詰め込まれています。

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by obinborn | 2015-11-09 10:50 | rock'n roll | Comments(0)  

リオン・ラッセルの足音

「まるで綱渡りのようさ。俺はワイアーの上を歩いているん
だ。片方には情熱の炎が燃えているけど、もう一方は凍て付
く氷が待っている。俺は見世物なのかい?」そんな風に歌い
出されるTIGHT ROPEが全米チャートを駆け巡ったのは、72
年9月のことだった。華美なショウビジネスの裏側にある落と
し穴を描くばかりか、市井の人々にも日々起こる成功と失敗
の紙一重を仄めかした同曲は、最高11位へとランクインする
リオン・ラッセル最大のヒット曲となった。

そのTIGHT ROPEで始まる72年のアルバム『CARNEY』は、
どこから切り取ってもこれまでのリオンとは違っていた。荒
ぶれるスワンプの首長とか、ジェリー・リー・ルイスのアッ
プデイト版といった従来のリオン像から逸脱したイメージは、
ジャケットが写し取っていた。仮面の告白とでも言うべき白
塗りした陰鬱なリオン。反してアルバム・タイトルはカーニ
ヴァルを語源としたカーニー、つまり祝祭の日。その対比に
感受性豊かな多くのファンが、ロック・スターの栄光と挫折
を、あるいは自分自身の未来への漠然とした不安を、そっと
重ね合わせていった。

こうしたダークなテイストは、社交辞令的パーティの孤独を
観察したTHIS MASQUEREADE(カーペンターズとジョージ
ベンソンがカバー)や、麻薬で命を落とした恋人への哀歌M
E AND BABY JANE( メリージェーンはドラッグの隠語)で
追い打ちをかけるように強調されていく。これまでのリオン
らしいロック・ナンバーは実際ROLLER DERBYのみであり、
MANHATTAN ISLAND SERENADEのモダンなバラードや、
まるで影絵のように浮かび上がるCAJUN LOVE SONGが傷
口を癒すように配置されている。そんな意味ではソングライ
ターとしてのリオンを知らしめたナイーヴな記念碑が『CAR
NEY』だった。わずか45秒の間に町のざわめきを模写した
タイトル・トラックと、それに続く幽玄なACID ANNAPOLI
Sのサイケデリックな酩酊感覚は、ロス・ロボスやラテン・
プレイボーイズの先駆けのよう。そんな倒錯した音空間のな
かでR&Bのピアノ感覚を生かしたMY CRICKETの歌心がと
りわけ光っている。

アルバム一枚を通して人生の暗い側面を一本の映画のように
落とし込んでいくという意味では、ニール・ヤング&クレイ
ジー・ホースの『TONIGHT'S THE NIGHT』に匹敵するかも
しれない。去りゆく人の足音の如くB面最後に置かれたMAGI
C MIRRORがエンドロールとなって、これまでのストーリー
を鎮めていく。華やかなパーティが終われば誰もが始発の駅
に向かって一歩を踏み込んでいく。言葉にはならない。ただ
二日酔いの頬を、冷えきった早朝の冷気が撫でていく。そん
な気持に寄り添うロック・アルバムを見つけたのは、筆者の
場合この『CARNEY』が初めてのことだった。

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by obinborn | 2015-11-08 20:33 | one day i walk | Comments(0)  

11月7日の東京ローカル・ホンク

7日は東京ローカル・ホンク今年最後のワンマン・ライブ
を高円寺のJIROKICHIにて。彼らの多くの曲をまるで自分
の手足のように親しんできた自分だが、やはり一期一会の
演奏へと接するたび新鮮な気持に襲われる。地響きのよう
に轟く和声といい、複雑に入り組んだリズムといい、音楽
的にはとても複雑な語彙を用いているのに、それらをごく
シンプルで優しく聞かせるところに、キャリア20年の業を
思った。四人が奏でる楽器が自然に溶け合いつつ空間を満
たしていく。そこにロック・カルテット理想の姿を思わず
にはいられない。

日常のありふれた言葉を用いながら、町をスケッチし人々
の様相を切り取る。そんな木下弦ニのソングライティング
が、この夜も表情豊かな演奏によって命を吹き込まれた。
セットリストで言えば、「拡声器」「はじまりのうた」
「昼休み」「お手紙」といった楽曲がその最たるものだろ
う。アカペラで歌われた「サンダル鳴らしの名人」「夏み
かん」「夜明けまえ」の3曲も、ステージと会場との垣根を
取り払っていく親密さに満ちていた。また長尺ジャムとし
て終盤を飾った「社会のワレメちゃん」とそれに続いた新
たな名曲「身も蓋もない」では、今直面している厳しい現
実に対する個人の声が発せられていく。「身も蓋もない」
の歌詞を一部紹介しよう。「ブルーズなんてみんな借り物
の言葉さ/ロックンロールなんてただの習い事/今思い出す
のはあの日の子守歌/網戸から夜道に流れる笑い声/効き目
のある祈りの言葉を教えて欲しいけど」

もしジョン・レノンが今も生きていたら、きっと木下弦二
のような言葉を携えていただろう。弦二のように曇りのな
い目で世界のありようを見つめていただろう。

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by obinborn | 2015-11-08 01:44 | 東京ローカル・ホンク | Comments(0)  

ジェシ・エド・ディヴィスのギターが聴こえてきた

12月2日に渋谷の喫茶スマイルでアトランティック・レーベル
特集のDJをやるので、少し早いが何となく準備し始めている。
ジャズ及びR&Bのレコード・カンパニーとして始まったアトラ
ンティックはやがて南部のスタックスを全国配給することでソ
ウル音楽を広めた。その一方で65年には同社初めての白人グル
ープとしてヤング・ラスカルズと契約するなど、来るべきロッ
クの時代にもしっかり備える。とくにアトランティックの専属
だったトム・ダウドやジェリー・ウェクスラーといったエンジ
ニア/プロデューサーの存在は大きく、アトランティック傘下の
アトコ・レーベルの発足とともにスワンプ・ロックのブームを
起こしていく。デラニー&ボニー、トニー・ジョー・ホワイト、
ドクター・ジョン、バリー・ゴールドバーグ、ジム・ディキン
ソン、ロジャー・ティリソン、マナサスなどのアルバムをアト
ラン〜アトコのロゴ・デザインとともに記憶に焼き付けている
ロック・ファンは少なくないだろう。またアトランティックは
西海岸のインディだったアサイラムに出資したり、オーティス
・レディングのマネジャーだったフィル・ウォルデンが新たに
始めたサザン・ロックのキャプリコーン・レーベルと提携した
りと、70年代初めの新しい息吹きへと積極的に関与していく。
ストーンズ・ファンなら彼らが自主レーベル=ローリング・ス
トーンズの配給をアトランティック・グループに委ねつつ、黄
金時代を築いていったことを思い起こすかもしれない。

アトコ・レーベルのあまたの名盤のなかでも個人的に最も忘れ
難いのがジェシ・エド・ディヴィスのセカンド・アルバム『U
LULU』(ATCO SD33-382)だ。レコーディング・ロケーショ
ンはフロリダのクライテリアに、ロスアンジェルズのレコード
・プラント及びヴィレッジ・レコーダーズと計三カ所に股がり、
ドクター・ジョン、レオン・ラッセル、ブレッドのラリー・ネ
クテル、ザ・ホウクスのメンバーとしてリヴォン・ヘルムらと
苦楽を共にしたスタン・セレストなど、曲によってキーボード
奏者を適材適所に配する一方で、リズム・セクションに関して
は全編ダック・ダンとジム・ケルトナーのコンビネイションに
委ねるなど、英国のオリンピック・スタジオで録音されたファ
ースト同様に、ジェシが自らプロデューサーの一員を務めてい
る姿が印象的だ。クライテリアでの録音に関しては、マナサス
やジム・ディキンソンや デラニー&ボニー&フレンズの名盤
との共通項を探ってみるのも面白い。

楽曲としてはマール・ハガードのベイカーズ・フィールド・
カントリーWhite Line Fever、バングラデシュのコンサート
を介在に友好関係を結んだジョージ・ハリソンのSUE ME,SU
E YOU BLUES、ザ・バンドのザディコ的なアプローチSTRA
WBERRY WINE、レオン・ラッセルのALCATRAZ、アメリカ
の伝承曲OH!SUSANNAHと計5曲のカバーがある。その一
方でジェシのオリジナルも光る。「オレはビートルズでもス
トーンズの一員でもない。オレは心のままに歌うヨ!」とい
う歌詞があるRED DIRT BOOGIE,BROTHERが冒頭に置かれ
たことの意味を考えたい。むろんその背後にあるのはタージ
・マハールのギタリストとして渡英し、ストーンズが主宰す
る『ロックンロール・サーカス』に唯一アメリカからのアー
ティストとして招かれ、ジョン・レノンやキース・リチャー
ドと接点を持ったことなのだが、自分はそうした有名バンド
には寄りかかるまいとするジェシの人間宣言を感じ取れるこ
とだろう。60年代の恩師であるタージのアルバム『GIANT S
TEP』ではAIN'T GWINE WHISTLE DIXIEというタイトルで
収録されていたタージとジェシの共作FARTHER ON DOWN
THE ROAD(YOU WILL ACCOMPANY ME)では、レズリー・
スピーカを通したジェシのリズム・ギターが歌伴の鑑のよう
に映し出された。そして恩師タージに捧げられたMY CAPTA
INでのスライド・ギターはどうだろう。その運指はけっして
流麗とは言い難く、むしろ不器用そのものだったが、一音一
音に祈りを込めていくようなフレージングに筆者は胸を突か
れた。デイヴ・メイソンがLOOK AT YOU、LOOK AT MEで
聞かせた押弦によるソロとともに、最も讃えるべき歌伴ギタ
ーのソロ・ラインがそこにあった。

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by obinborn | 2015-11-06 18:19 | one day i walk | Comments(0)  

11月3日の中村まりと塚本功

11月3日は中村まりと塚本功のツーマン・ライブを吉祥寺の
クアトロ・ラボにて。二人の顔合わせは久し振りのことだっ
たが、かつて中村が塚本のギター・レッスンを受けていたと
いうだけに息の合った共演を聞かせてくれた。まずは中村が
自作のThrough My Heart Againからミシシッピ・ジョン・ハ
ートのSlidin' Deltaへと序盤を繋ぐなどソロ・パートを披露。
最新曲として歌われたOne Thingや、もはや名曲の風格を湛
えてきたStill In the Sunなどを耳にしていると、自然に新し
いアルバムへの期待が募ってくる。またデイヴ・ヴァン・ロ
ンクやカーレン・ダルトンも演奏した古典Green Green Roc
ky Roadや、バンジョーに持ち替えて歌われたトラディショ
ナルLittle Burdieでも、技量を伴ったシンギングが冴え渡る。

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第一部の最終曲Caught in a Roundaboutでは、フルアコを抱
えた塚本が加わり、二部からはしばし彼の時間帯が繰り広げ
られた。お箱であるマジック・サムのFeelin' Goodを掻き鳴
らしつつ客席を練り歩くなど、塚本は百戦錬磨のステージで
湧かせるが、一方でスキッター・ディヴィスの End of the Wo
rldや幾つかのオリジナル・ソングでナイーヴな心持ちもたっ
ぷり。そういえばギター・インスト版でザ・バンドのin a S
tationを奏でる心憎い演出もあった。

そして終盤は二人がジョイントすることで、生ギターとフル
アコとが絶妙に溶け合っていく。塚本が「デューク・エリン
トン最高のロックンロール!」とアナウンスした後に爆発す
るCaravan、先日惜しくも他界してしまったハース・マルテ
ィネスのAltogether Alone、ファッツ・ウォーラーのEveryda
y Is a Holidayなどがこちらの胸の閊えを癒してゆく。意外な
ことにR.C.サクセションの「たとえばこんなラブ・ソング」
まで飛び出したほど。21世紀になってから15年め。武蔵野の
一角から過去の優れた楽曲と愛おしいオリジナル・ソングと
が互いに微笑み合うナイスな夜となった。

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by obinborn | 2015-11-04 00:36 | 中村まり | Comments(0)