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5月30日の宮田あやこ

久し振りに東京で2デイズを行った宮田あやこの、後半戦とな
る30日のライブを新宿のミノトール2で堪能した。現在は故郷
札幌をベースに地道な活動を続ける彼女だが、東京でキャリア
を磨いていった頃の懐かしい音楽仲間やファンで会場はいつの
間にか満席に。再会を祝すまたとない機会となった。札幌で宮
田を支えるピアニストの山下泰司を携え、第一部ではガーシュ
イン、バカラック、アーヴィング・バーリンなどのスタンダー
ド曲を丁寧に歌っていく。それも変に気張って歌唱力を誇示す
ることのない、原曲のイメージを大切にした素直な歌いぶりに
好感を覚えずにはいられない。

宮田あやこといっても、今の若い人達には知らない方々も多い
ことだろう。リンダ・ロンシュタットに憧れて音楽を志し、
80年にエピック・ソニーからメジャー・デビューした当時の
記憶をたぐり寄せていけば、彼女ほど歌そのものに情熱を注ぎ、
毅然と立ち向かっていった人は珍しかった。自分の歌を自分で
歌うシンガー・ソングライターは多く出現していたけれど、あ
くまでシンガーとして、何が大切であるかを問い掛けていった
宮田の姿は、まさにリンダのそれと重なり合うものだった。

ステージが第二部に移り、彼女にとって同時代の体験となる
西海岸ロック(リンダ、イーグルス、ボズ・スキャッグスな
ど)からの選曲で束ねられていく頃には、歌の親和力も俄然
増していく。パラシュートを始め輝かしい功績があるマイク
・ダンのベースに、センチメンタル・シティ・ロマンスの
細井豊によるオルガン、アコーディオン、ハーモニカなどが
加わり、宮田の歌はどんどん熱量を孕む。とくに細井が奏で
る、まるでブッカー・T・ジョーンズのようなシンコペイト
やグリッサンドに、長年に亘って修練を重ねてきた人ならで
はの含蓄を思った。

人はいつの間にか馴染んだリリックやメロディに自分だけの
景色を抱く。またそうした歌が街角から突然聴こえてきた時
に、不意打ちのような痛みを覚える。歌はその人が通り過ぎ
てきた歳月に寄り添うこともあれば、今の自分には眩し過ぎ
ると、自らの手で部屋の片隅へと追いやってしまうことも出
来る。そうしたことのすべてを宮田あやこは全身で受け止め
ながら、彼女ならではの経験の歌へと塗り替えていった。終
盤に歌われたキャロル・キング作、way over yonderの鮮やか
さはどうだろう。遠く離れた北の街でも、瓦礫に被われた南
の土地でも、宮田あやこの歌は人々の心をいつの間にか溶か
していく。

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by obinborn | 2016-05-31 01:22 | one day i walk | Comments(0)  

半年ぶりのフラッシュさんにて

ライブへ行く前に下北沢のフラッシュさんで1枚のLPと10枚
のシングル盤を捕獲しました。思えば約半年ぶりのフラッシ
ュさん。いつも通りビールのロング缶を差し上げると、椿さ
んから「オビさん、ありがとう!」と元気な声が栓を開ける
音とともに返ってきました!こちらこそいつも素敵なレコー
ドを提供してくださり、感謝の一言です。以下私の捕獲品を。
*   *   *
(LP)
Merl Thunders& Jerry Garcia /Live At Keystone(fantasy)
(7's)
Allman Brothers Band/Ramblin'Man (capricorn)
Blue Ridge Rangers/Jambaraya on the Bayou(fantasy)
Marvin Gaye/I'll Be Doggone(tamla motown)
Miracles/Going To The Go Go(tamla motown)
Isley Bros./Love The One You're With(T-Neck)
Carter Brothers/I Don't Care (Jewel)
Jimmy Hughes/A Shot Of Rhythm& Blues (fame)
Bobby"Blue" Bland/Turn Your Love Light (duke)
Bobby"Blue" Bland/Ain't Nothing You Can Do(duke)
Bobby"Blie" Bland/I'm Not Ashamed(duke)

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by obinborn | 2016-05-27 02:08 | one day i walk | Comments(0)  

5月26日のサーディン・ヘッド

26日は約半年ぶりにサーディン・ヘッドのライブを下北沢の
ラウンにて。いやあ〜圧巻だった!繊細な音の粒子が3時間
ずっと降り注いでいくその様は、現在最も優れたジャム・バ
ンドと賞賛を浴び、ファンから信頼の感情を勝ち得ているこ
とを改めて思い起こさせるほどだった。二本のギターの駆け
引きを軸としたカルテットの演奏は一切の無駄なく、果てし
ない抽象画を描いていく。そのスケッチはときに大胆なリフ
の応酬となってテンションを高め、かと思えばふとメロディ
アスなフレーズを奏でながら視界を広げてみたりと、まさに
変幻自在。終演後本人たちに直接伝えたことでもあるのだが、
即興演奏といってもグランジやノイズ、あるいは前衛的な罠
へと陥るのではなく、繰り出された音がどこまでも頬を撫で
る風のような優しさに満ちているところが、サーディンの長
所だと思う。

まるで砂漠をラクダに乗って旅する詩人が、その道の往く先
々で、今日は晴れるのかな?それとも雨が降るのかな?と心
配しながら行く宛を探し求めているような演奏。ふと目を落
とした足元にはとびきり清らかな水が湧き出ているかもしれ
ない。そんな心模様を安っぽい歌詞や、もっともらしいMC
に込めるのではなく、あくまで音という風景のなかで描いて
いくサーディン・ヘッドの四人に本物のミュージシャンシッ
プ、ピュアな心を感じずにはいられない。たとえ明日世界が
終わるとしても、ぼくはサーディンの奏でた雨のような音粒
に温かい太陽のありかのことを思うだろう。彼らが演奏した
跡地には虹が出ていた。ぼくはそれをどこまでも追いかけて
いく。

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by obinborn | 2016-05-27 00:49 | one day i walk | Comments(0)  

砂埃のようなガイ・クラーク

「僕たちはずっと同じ道を歩いてきた。ガイ・クラークは
若い人にはそう簡単に書けないトム・ウェイツのような歌
を作る。ガイが歌で描くのは老人や古い汽車や遠い記憶そ
して白黒映画なんだよ」75年にリリースされたガイのデビ
ュー作に、ジェリー・ジェフ・ウォーカーはそんな一文を
寄せている。

ガイ・クラークが亡くなり、しばし呆然としている。彼こ
そは故タウンズ・ヴァン・ザントとともにテキサスの新し
いシンガー・ソングライターの潮流を築き、今日活躍する
幾多のアメリカーナの規範となり、点在する”普通の人々”
にとって心の拠り所だったから。

ジョニー・ギンブルの朝靄のようなフィドルに導かれて
名曲「L.A Freeway」の主人公はこう歌い始める「食器類
をすべて詰め込みなさい/佳き希望を記しなさい/家主に別
れを告げて」 your dishesとgood wishes の韻の踏み方に
ぐっと来たものだった。大袈裟な言い回しで解った風な
主張をするのではなく、クラークは行間のなかに人生の
何気ない真実やちょっとした機微を忍ばせた。苦み走った
歌い方には歌詞には出てこない含みが感じられた。

ぼくが若かった頃、クラークの歌を聞くのは背伸びするよ
うな体験だった。今ではもっと身近に彼の歌に接すること
が出来る。クラークさん、まるで砂埃(ダストボウル)の
ようなあなたの歌が好きでした。

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by obinborn | 2016-05-18 18:38 | one day i walk | Comments(0)  

5月14日の東京ローカル・ホンク

14日は渋谷のB.Y.Gにて東京ローカル・ホンクのワンマン・ライブ
を。日本語の綺麗な響きを精緻なカルテット編成で実現する彼らの
世界に3時間たっぷり浸った。明晰な歌唱と弾力ある演奏との合致。
言葉にするのは簡単だが、当意即妙なバンド・サウンドにこの道20
年以上のキャリアを感じずにはいられない。本人たちは謙遜するば
かりだが、その昔はっぴいえんどやはちみつぱいが切り拓いた”日本
のロック”をホンクメンはどんどん更新しつつある。先人たちとの違
いは伝説になっているか否かだけ。それならば今という時代をしっか
り呼吸しているホンクにエールを送りたいと思うのは、けっしてぼく
だけではないだろう。

バンドのソングライターである木下弦二が生まれ育ったのは品川区
の戸越銀座だという。その町から見えるものを彼は歌にしていく。
飾られた言葉もなければ余計な修辞もないが、スケッチされた世界
のひとつひとつが聞く者の胸に染み渡り、じっくりと反芻を促す。
とくにこの日は生まれたての「dark matter」がバンド・ヴァージョ
ンで初披露されるというレアな機会になった。無邪気なままに音楽
を始めた青年たちが、いつしか社会の裂け目に出喰わす。そんな新
曲の行方を見守っていきたい。

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by obinborn | 2016-05-15 06:19 | 東京ローカル・ホンク | Comments(0)  

歌わない自由

実際私なんかも音楽を聞く時「作者の動機」にはあまりこだわ
らないようにしている。むろんソングライターが曲を作る際に
は何らかの個人的な事象が反映されることが多いのだろうが、
メディアという回路に乗せた時点で歌は作者の元を離れ自由に
解釈されていくという考えを私は支持する。誤解を含めて聞き
手それぞれの事情に当てはまっていくのが大衆音楽の核心だと
思うからだ。例えばボブ・ディランのある時期の歌に関して、
これは妻だったサラとの離婚を歌ったものだと指摘したとたん
に曲のイメージは萎んでしまうだろう。佐野元春の「彼女の隣
人」について、交通事故で亡くなった彼の妹に捧げた歌だと説
明してしまう野暮と同じことだ。聞き手たちはもっと多くのも
のを自由に受け取っている。つまり歌の多義性というのはそう
いうものであり、また優れたソングライターほど曲の解釈に対
して寛容だ。

私にこういう考え方を示してくれたのはポール・ウィリアムズ
の音楽評論が最初だった。彼はディランの「ミスター・タンブ
リンマン」に触れ、そのタンブリンマンが麻薬のディーラーで
あると断じる、いわば”犯人探し”のような風潮を戒める一方で
こう言う「きみのイマジネイションを大事にしなさい」ひどく
残念なことに、いわゆるディラノジストやディラン研究家とい
った人達ほど、子細にこだわるあまり歌の核心から離れてしま
う傾向があるようだ。きっとディランは勝手に当てはめられた
自画像に苦笑しながら、以前にも増して様々なペルソナを立て
ていったに違いない。

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by obinborn | 2016-05-11 23:31 | one day i walk | Comments(0)  

ロバート・クラムと川崎ゆきお

一時期戦前ジャンプやジャイブ音楽を集めていた時期がある。
これは正確には故中村とうよう氏の影響であり、彼が監修し
た『RCAブルーズの古典』『ブラック・ミュージックの伝統』
(上下巻)によって視野を広げ、それだけでは物足りなくな
りテディ・バンやハーレム・ハムファッツのリイシュー盤など
に手を伸ばしていった。今振り返ると若かった故に背伸びして
いた部分もあったと思うのだが、ジェフ&エイモスやライ・
クーダーに感銘を受けたロック世代が、好奇心とともに時代を
溯っていくのはごく自然な流れだった。

とくにアメリカン・コミック界の鬼才、ロバート・クラム率い
るチープスーツ・セレナーデズの存在には大いに励まされた。
戦前音楽の発掘レーベルとしてお馴染みのヤズー・レーベルの
ジャケットを描いたことでもクラムは知られるところだが、そ
の彼が実際にチープスーツを組み、ヤズーの姉妹レーベルのブ
ルーグースからレコードを発表したのだからたまらない。わけ
ても74年のファースト・アルバムは忘れ難い。ぼくはやや時間を
置いて80〜81年頃、その手に目がない江古田のクラン・レコー
ドで購入したが、当時流行していた世間一般の音楽に馴染めなか           った自分にとって、「まあ、いいじゃんか」と語り掛けるよ
うに歌いバンジョーを弾くクラムは親しい友人のように映った。
のちにギターの名手であるボブ・ブロズマンがメンバーとなり
チープスーツの音楽は本格的になったけれど、このファースト
・アルバムにはアマチュア集団ならではの素朴なトキメキが溢
れていて、彼らが残した3枚のなかで最も愛着を覚える。

ちなみにコミック繫がりで言うと、アンダーグラウンド漫画界
の川崎ゆきお氏が僕は好きだった。とくに彼が造形した猟奇王
というキャラクターは痛快だった。その猟奇王に込められたも
のはアンチ・ヒーローの姿であり、ちょっとした風刺であり、
世の中を斜に構えて見るキンキーな(ひねくれた)態度だろう。
猟奇王はある一コマでこう言っている「時代性がナンボのもん
じゃい」と。 

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by obinborn | 2016-05-08 17:56 | one day i walk | Comments(0)  

ポールは歌う「あの頃に戻ろうよ」と

1日は都内で音楽仲間との懇親会を。いやあ〜楽しかった!
みんな歳を喰ったとはいえ、好きだった音楽に対して心を開
き、互いに語り合っていく。遠慮もなければ社交辞令もない。
そんな時間をたっぷり過ごした。とくにTさんが回す『LET
IT BE』が良かった。このアルバムこそは、ぼくがカーペンタ
ーズとともに洋楽への扉を開けてくれた作品だったから。今
でこそグリン・ジョンズが辛抱強く、この分裂寸前のカルテ
ットの演奏にテープを回していたことが解るけれど、当時の
ぼくは何の意味も解らず、ただひたすらこの作品を、正確に
はラジオを通して聞いていた。マットレスでバスドラのキッ
クを抑えたドラムスが好きだった。ハンブルグ時代のロック
ンロール曲One After 909を、虚飾なく演奏する姿が好きだっ
た。そしてポールはこう歌っていた「あの時代に戻ろうよ」
と。

ぼくが若かった頃はそんなGet Backの意味さえ、ないがしろ
にしていたと思う。傲慢だった。怠慢だった。人の気持に対
してあまりにも鈍かった。メンバー全員がまだ20代後半だっ
た頃、もうけっして元には戻れない関係を予感していた四人
の心模様を思うと、今も胸が張り裂けそうだ。

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by obinborn | 2016-05-02 01:30 | rock'n roll | Comments(0)