英国流ミクスチャー・ロックの雄、ファミリーの自由な世界

梅雨期にもかかわらず今日は夏みたいな陽気ですね。こういう
時は初期のビーチ・ボーイズでも聞けば快活な気持になるので
しょうが、いかんせん私はネクラ/ジメジメ/ナーバス三連発の
性格なので、そうは問屋が卸しません(笑)というわけで連日
英国変態ロックの雄ファミリーの音楽にハマっています。ファ
ースト『MUSIC IN A DOLL'S HOUSE』(68年)に続く彼らの
セカンドが『FAMILY ENTERTAINMENT』(69年)です。メン
バーはファースト同様、チャップマン=ウィトニーのソングラ
イティング・コンビを中心に、リック・グレッジb、ロブ・タ
ウンゼントds、ジム・キングkbd saxといった5人で、その後
のメンバー交代の兆候はまだ感じられませんが、グレッチはや
がてブラインド・フェイスに誘われ、また渡米してグラム・パ
ーソンズ『G.P』のプロデュースをグラムと共同で手掛けてい
くので、初期ファミリーの姿を捉えたという意味では厳密には
最後の作品になるかもしれません。前作を手掛けたデイヴ・メ
イソンとジミー・ミラー(ストーンズ、トラフィック)に代り、
ここではグリン・ジョンズ(ストーンズ、ザ・フー、スティー
ヴ・ミラー・バンドなど)がプロデュースを担当しています。

とにかくこれほどの変態ロックも珍しいでしょう。普通のスト
レートアヘッドなロックはせいぜいSECOND GENERATION
WOMANくらいで、あとはチャップマンのアクの強い声にメロ
トロンがドラマティックに被さったり、シタールが怪しく舞い
上がったりしながら、独自の演劇的なサウンドを盛り上げてい
きます。かと思えば以降の歩みを物語る米スワンプの温もりが
アクースティック・ギターやハーモニカ、バンジョーの響きの
なかに感じ取れます。またスティール・パンを使用した曲も
あるのですが、即陽気なカリプソになるはずもなく、大英博物
館の迷宮に誘うような摩訶不思議で重厚長大なミクスチャー・
ロックがこれでもかというくらい過剰に展開されていきます。
SUMMER '67という曲ではアラブ〜中近東の音階をオーケス
トレーションによって補強し、まるでレッド・ツェッペリンの
名曲「カシミール」を予見するかのようです。また中世趣味
という点ではクィーンの先駆かもしれませんね。

ときどき「チャップマンよ、きみは一体何をやりたいのかね?」
とツッコミを入れたくなる場面がなきにしもあらずですが、
彼に「これが俺たちのロックだ!」と言い返されたら頷くしか
ありません。思えばロックとは本来こういう自由な音楽であり、
黒人音楽からクラシックまで様々なエレメントの折衷に真価が
問われたものでした。またそんな創造力をレコード・カンパニ
ーが許容する風通しのいい時代でもありました。陰々滅滅とし
た暗〜いロックですが、聞いているとあら不思議、何だか勇気
が湧いてきました。そう、ロックは何をやってもいい音楽であ
り、アーティストは日々真っ白なキャンバスに向かって絵を描
いていけばそれでいいのです。マーケッティングに浸食されな
い領域。その”自由”を精一杯受け止めたい。そんな風にオビン
は思いましたとさ。

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# by obinborn | 2017-06-16 17:31 | rock'n roll | Comments(0)  

共謀罪に関するメモ

何か重要な事件や政局の動きがあった時、私は見解の違う新聞
を読み比べるようにしています。まあ今どき紙媒体としての新
聞にどれだけ影響力があるかは疑問ですが、それでも読まない
よりはマシでしょう。解りやすく言えば朝日・毎日VS読売・サ
ンケイといった具合にリベラルと保守の両論を知ることで自分
の意見を深めていくことが肝要かと思っています。

ところが、これを出来ない人達が案外多いようですね。ネット
を見ても、自分の気持を代弁してくれるテキストのみを紹介し、
違う見解には耳を傾けないのです。これは感心しません。まし
て「いいね!」してくれる同調者のみに優しくし、異なる立場
の人との付き合いを敬遠したり排除したりする態度では見聞を
広めることは恐らく難しいでしょう。

共謀罪法案に関して一言だけ言っておくと「ラインをするだけ
で捕まるよ」「戦前の治安維持法が復活だ」というプラカード
を見かけましたが、ちょっと針小棒大な気がしました。今回の
法案の骨子はいわば刑法の転換であり、国家を転覆するような
テロ等の案件について、今までは事件が実行されてから初めて
罰せられたものを準備段階で摘発するという大転換です。これ
をどう評価するか(しないか)を、識者の方々にはもう少し解
りやすく丁寧に説明して欲しかったです。逆に言えば旧態依然
とした感情論がとても多かった。

明日から暗黒時代がやって来るなんていう脅しに屈せず、昨日
までそうしてきたように私は”語って”いきます。ところで今度
の都議選が都民の一人として気になります。例えば小池さんが
共謀罪に関して明確にスタンスを打ち出せば、自民・公明との
対立軸がもっと鮮明になるのでは?とふと思うのでした。

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# by obinborn | 2017-06-16 06:17 | rock'n roll | Comments(0)  

ジェシ・エド・ディヴィス、再び

ジェシ・エドの『キープ・ミー・カミング』はお茶の水のデ           ィスク・ファイルで86年頃に買い、それ以来の大愛聴盤だ。
多分に顔見せ的なセッションに終始した英国録音のファース
トも好きだが、マイアミ録音のセカンド『ウルル』、LAのパ
ラマウント・スタジオで吹き込まれたサード『キープ〜』で
ジェシは格段の成長を遂げた。その一例としてリズム・セク
ションの強化が挙げられる。『ウルル』ではダック・ダン=
ジム・ケルトナーのコンビが大活躍して太いグルーヴを生み
出していたし、この『キープ〜』ではボブ・グラウブ=ケル
トナーにすべてを委ねることでビシッとした統一感を醸し出
している。いくらギターが優秀でもベースとドラムがアホだ
ったら音楽は成り立たない証だよね。ボブはのちにロッド『
アトランティック・クロッシング』で名を成した西海岸の中
堅どころのプレイヤーですわ。一曲めのBIG DIPPERがインス
トで始まり、次にジェシの飾らないヴォーカルが染みるShe'
s A Painへと連なっていく展開が考え抜かれている。BIG〜で
は多くの曲をジェシと共作したジョン・アンジェロのハーモニ
カに味がある。そのアンジェロが単独で書き上げたWHO PUL
LED THE PLUG?のゴスペル・フィーリング(&ライブ仕立て)
がじわりと染み入ったり。

個人的に一番グッと来るのはNATURAL ANTHEM(自然讃歌)
かな。スタジオ内でのメンバーの歓声から入り、一度イント
ロを失敗してやり直す部分まで克明に記録されている。過剰
にクリアかつピッチの補正ばかり行っている昨今の毒にも薬
にもならないポップ・ミュージックとは音楽の下地が違う。
きっとどこまでも自発的な演奏を重視したかったのだろう。
そんな優れたインスト曲だ。もう一曲オイラがとくに好きな
曲を挙げよう。それはアンドレ・ウィリアムズ作のBACON
FATで、この曲はサー・ダグラス・クィンテットが全国区に
羽ばたいていったファースト・アルバム『THE BEST OF SI
R DOUGLAS QUINTET』時のセッション(但しアルバム未
収録、シングルB面のみ)で録音している。またジェシの恩
人であるタージ・マハールも『GIANT STEP』で選曲した。
こんな接点が面白い。ちなみにアンドレはガレージ・ロック
愛好家から再評価されているブルーズマンで、ザ・フーもア
ンドレのDADDY ROLLING STONEを初期にカバーした。

自分なりにジェシ・エドが参加したレコードはジーン・クラ
ーク、ジム・プルト、ロジャー・ティリソンの”ジェシ三大
プロデュース作”を始めとして、アーロ・ガスリーの名盤『
最後のブルックリン・カウボーイ』からアルバート・キング
の『LOVE JOY』まで集め聞いてきたけど、それでもまだ足
りない部分はあるだろう。まして彼の出自となる黙示録的な
ネイティヴ・アメリカンの音と詩の朗読(ダブ・ポエットの
ようなもの)を理解出来ているかと言われれば心もとない。
それでもオイラは今日もまたジェシの人間味溢れる歌と、ま
るで肉声のようなギターに胸を焦がされ続けている。一音一
音に”言葉”を持たせた丁寧な運指、スライド・バーによる中
間音のアプローチ。そんな個性を知らされたのはジェシ・エ
ド・ディヴィスがまさに初めてだった。

「俺はビートルズじゃないぜ。ローリング・ストーンズのメ
ンバーでもない。だから俺は自分のブルーズを歌う。ただそ
れだけさ」アルバム『ウルル』に収録されたRED DIRT BOO           GIEで、ジェシはそう歌い出す。独立独歩の宣言。誰にも浸食
されない世界観。そうした思いが73年の『キープ・ミー・カ
ミング』へとしっかり受け継がれていった。


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# by obinborn | 2017-06-15 17:38 | one day i walk | Comments(3)  

追悼:ロザリー・ソレルズ

「アイダホ・ステイツマン」誌が伝えるところによると、
フォーク・シンガーのロザリー・ソレルズが亡くなった
らしい。彼女は60年代の中盤から活動し始め、ユタ・フ
ィリップスに認められフォーク・レガシー・レーベルと
契約。67年に『IF I COULD BE THE RAIN』をリリース
した。73年にはウッドストックで録音された『WHAT E
VER HAPPENED TO THE GIRL THAT WAS』(Paramo
nt)が、ロック・ファンからも注目を集めた。本作を制
作したマイケル・カスケーナは元々ジャズ畑の出身だが、
当時はボニー・レイットやエリック・カズそしてクリス・
スミザーを手掛けるなど、フォーク/ルーツ・シーンから
も重宝されるプロデューサーになっていた。ぼくもそう
した興味からソレルズの歌に接するようになったと記憶
する。

本作に収録されたゲイリー・ホワイト作のNobody'sは、
当時デヴィッド・ブロムバーグ・バンドも取り上げていた
曲で、その繋がりに興味を持った。また気骨あるフォーク
・ブルース歌手、ポール・ジェレミアのElegant Hoboを
初めて知ったのは、ここでのソレルズ・ヴァージョンが
最初だった。彼女の音楽に欠かせないミッチ・グリーン
ヒルの端正なギター、ハーヴェイ・ブルックスの抑制さ
れたベース、エリック・カズの知的なピアノがソレルズ
の歌を際立たせていた。

以降はフィロに移籍して『TRAVELIN' LADY』『ALWAY
S A LADY』『MOMENTS OF HAPPINESS』『TRAVELIN'
LADY RIDES AGAIN』など、より自然で良質なアルバムを
作った。世代的にはぼくの二周りほど上の人だったので
全面的に感情を託すような聞き方は出来なかったが、それ
でもヴィブラートの掛かった震えるような発声、たおやか
に大地を撫でていくような歌唱、暮らしや人々をじっくり
と見つめた多くの自作曲に惹かれ、ケイト・ウルフやメア
リー・マッカスリンら女性フォーキーたちとともに、ぼく
のターンテーブルの上で彼女のレコードは回り続けた。

きょうびフォーク・シンガーであり続けた行為は大変なこ
とだったと思う。それは実生活と歌とが乖離しない態度、
虚勢のなさ、私は星くずのように瞬きながら消えていく小
さなものなの、と静かに見つめる自己申告に他ならなかっ
た。彼女が教えてくれたものがあるとすれば、知られてい           ないものに真実が宿るとでも言いたげな心映えだろう。ソ
レルズが恩人のユタ・フィリップスと出会ったのは1965年
のソルト・レイク・シティだったという。彼女の歌は今そ
の土地に還っていくようだ。風が吹き、無数の花々が咲き、
蝶たちは昨日と同じように宙を舞っている。


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# by obinborn | 2017-06-14 05:01 | one day i walk | Comments(0)  

レコード整理とスティーヴ・イートン

今朝は皆さんにぼくのばっちい部屋をお見せしちゃったので、
午後から名誉挽回すべく力入れてレコ整理&掃除に取り組み
ました。同業の方なら実感して頂けると思いますが、ライナ
ー1本書くだけでも様々なレコ&書籍を取り出してくるわけ
です。それが先月は6本続き、おまけにDJ用に持ち出したLP
をそのまま放置していたので、まあごちゃごちゃは必至です
な。でも掃除して気分転換になって良かったです。自分で持
っているのを忘れていたSTEVE EATONの『HEY MR.DREA
MER』(Capitol 74年)が奥のほうから出てきたし。今聞き
始めたんですが、プレAORの素朴な雰囲気がいいですなあ〜。
マイケル・オマーチアン(kbd)やマイク・デイジー(g)
も参加しているから、当然のことながらゲイター・クリーク
〜ケニー・ロギンスとの接点もあったんでしょうね。そんな
想像をしながらの”聞き直し”が楽しいです。さあ、これから
ビールで乾杯です!🍺

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# by obinborn | 2017-06-13 17:00 | one day i walk | Comments(0)  

人生の漂流者たち


TWやFBを閲覧していると、みんなの人生が楽しく快活なのに
比べて自分がひどくつまらない毎日を送っているように錯覚し
てしまう。勿論実際には皆それぞれ孤独や焦燥を抱えながら生
きているのだろうが、情報が加速度を付けて迫ってくるSNSで
は美味しい料理、楽しいライブ、最新の映画といった話題が最
大公約数的に強調されることもあって、それに乗れない自分が
拒絶されたような気持になってしまうのだ。ところが多くの人
は毎日退屈な労働を繰り返し、休日でもそれほど娯楽に使うお
金があるわけではない。よほど能天気な人でない限りそうした
日々から思考を深めていく。人生の漂流者とはそういうものだ。


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# by obinborn | 2017-06-13 06:54 | one day i walk | Comments(0)  

ネット時代に問われる知性

『現在ビジネス』を読んでいたら、ネットの影響によりいつの

間にか”検索タイプ”の人が増え、自分の頭で思索を深める力が
弱まってしまったとの記事があった。また検索行為とは同時に
すぐ回答を求めがちな傾向と結びつきやすいため、余計に自分
自身で考える想像力が失われつつあるとも指摘されていた。以
前私はここで炎上ネタと大衆心理について書いたが、気に喰わ
ない相手に標的を定めて集中砲火し、一時のカタルシスを得る
のは(自戒を込めて)止めておいたほうがいい。

個人の思想/信条というものはそれぞれが育った時代や環境、あ
るいは近くにいた者の影響などが微妙に入り混ざりながら形成
されるものであり、直接話しをしたこともない他人がいとも簡
単にジャッジを下すのは傲慢だろう。ましてそのジャッジが有
名人によって為される場合は、それこそ自分では何も考えない
者がリツイや「いいね!」で付和雷同的に加担しながら一気に         増幅してしまう。例えば学園闘争の時代にイヤな思いを体験し

た者はそれがトラウマとなり、どうしても集団的な考え方とは
距離を置き、いつの間にか個人主義者の道を歩み始める。逆に
今という厳しい時代はデモに行って頭数になるのが一番現実的
な選択肢だと主張する者もいるだろう。

実はこのような話を先日居酒屋で交わしたのだが、直接膝詰め
て語り合うのはいいものだ。ちょっとしたすれ違いがあればす
ぐその場で是正出来る。物事を弁証法的に検証し俯瞰する力を
鍛えることが出来る。もっと平たく言うなら「ああ、そういう
見方もあるね!」「なるほど!」の世界だ。

ネット時代にはそれに向かう知性もまた同時に問われている。

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# by obinborn | 2017-06-13 05:39 | one day i walk | Comments(0)  

それはスポットライトではない

昔『マガジン』の内表紙に「夏になると冬を思ってしまう。
冬になると夏が恋しくなる。俺は馬鹿なのかね」という秀逸
なコピーがあって感心したものだが、そのくらい実際のニン
ゲンというのは周回遅れなのかもしれない。私は昔から最新
トレンドを追いかけている連中には興味がなく、昨日と同じ
ようにSame Old Bluesと呟くJ.J.ケイルのような人を俄然贔
屓にしてきたなあ。賢明なる読者の方々ならとうにご存知の
ことと思うが、私の音楽嗜好は77年であろうが2017年であろ
うがまったく変わらない。ルイジアナの湿地帯で日がなバイ
ユーを見つめ縁側に座っているようなブルーズマンに憧れた
まま、今日まで過ごしてきたのだった。

先日ほぼ同級の友人に会った時、その老け具合に驚かされた
のだが、言葉に出すのをぐっと堪えた。彼から見れば私だっ
て同じようなものだろう。まあそういう局面で人の知性なり
奥ゆかしさなりが試されるのかもしれない。私にはむしろ50
代になっても若ぶってる奴のほうが奇異に映る。10代に出会
った音楽・文学・映画などを大きな背骨にしながら、これか
らも慎ましく暮らしていきたい。私が願うのはそういうこと
だ。このジェリー・ゴフィンも、20代の青二才の時より今の
ほうが遥かに染み亘るワイ。

「それはスポットライトではない/街灯でもない/やっと解っ
たのさ/それはきみの瞳に輝く光/ねえ、ぼくが言いたいこと
がうまく伝わるかい?」(IT'S NOT A SPOTLIGHT/GERRY
GOFFIN)


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# by obinborn | 2017-06-12 11:33 | one day i walk | Comments(0)  

百田尚樹氏の講演中止に思うこと

百田尚樹氏の講演が中止になりました。普通こういう場合
「良かったね〜、あの差別主義者の講演がなくなって」と
言うのが一般的に受け入れられると思います。あるいはス
ルーするのが一番賢いのかもしれません。でもぼくはたと
え極右主義者による極端な見解であっても、発言する機会
を抹殺してしまったことそれ自体は良くないと思いますよ。
まして百田氏は今回「マスコミのあり方」をテーマにした
講演をする予定だったと伝え聞いています。別に彼が学生
を煽動しようと企てたわけではありません。念のため言っ
ておきますが、ぼくは百田なんか大嫌いで軽蔑しています。          でも個人の好き嫌いや主義主張の違いから彼の発言の機会           を奪うのは違うと思います。ある思想家の言葉を思い起こ           さずにはいられません「私はきみの意見には到底同意出来
ない/きっとこれからもずっとそうだ/でも、きみがそれを
言う機会は死ぬ気になって守るだろう」


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# by obinborn | 2017-06-11 08:06 | rock'n roll | Comments(0)  

ファミリー『MUSIC IN A DOLL'S HOUSE』に関するメモ

今回デイヴ・メイソンの原稿を書いていて思わぬ収穫となっ
たのが、デイヴがプロデュースしたファミリーのデビュー・
アルバム『MUSIC IN A DOLL'S HOUSE』(Reprise 68年)
でした。ディープ・フィーリングを経たデイヴ・メイソンは
67年にマネージメントを通して、当時スペンサー・ディヴィ
ス・グループに在籍していたスティーヴィー・ウィンウッド
と出会い、意気投合してトラフィックを結成します。しかし
デイヴはファースト・アルバム『ミスター・ファンタジー』
を発表直後にグループを脱退してしまい、自らのソロ・シン
グルの制作やファミリー『MUSIC〜』のプロデュースを手掛
ていきます。その後再びトラフィックに戻り彼らのセカンド
作『トラフィック』(68年)に参加したデイヴですが、これ
また一時的なことでした。いろいろ調べてみたのですが、ど
うやらスティーヴィーの心がトラフィックから離れ、エリッ
ク・クラプトンやジンジャー・ベイカーらとのブラインド・
フェイスに向かったことへの反発があったようです。ワイン
ダー・K・フロッグのミック・ウィーバー(のちにヘンリー
・マカロックのソロ作に参加)や、トラフィックのクリス・
ウッドやジム・キャパルディと新しいバンドを画策したのも、
どうやらそうした理由らしいです。

そんな混沌した時期に残されたファミリーの『MUSIC〜』を
聞いていると、何となくデイヴの”心の揺れ”が伝わってきま
す。サイケディリックとクラシック音楽と米スワンプが微妙
に融合した世界を、ファミリーはこのデビュー・アルバムで
展開していきます。何しろロジャー・チャップマンのヴォー
カルはジェスロ・タルのイアン・アンダーソンばりに演劇的
で、いわゆる米南部のオーティス・レディングやオーティス
・クレイと直結する要素は少ないのですが、そんな部分にこ
そ、ぼくはブリティッシュ・ロックの匂いを感じずにはいら
れません。個人的にはグループ後期の『IT'S ONLY A MOVIE』
や『BAND STAND』の骨太な演奏のほうが遥かに共感するの
ですが、サイケの季節を彩ったこの『MUSIC〜』が妙に心に
引っ掛かってくるのでした。




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# by obinborn | 2017-06-10 19:25 | one day i walk | Comments(2)  

6月9日に聞く『ファースト・ステップ』

9日は久し振りの友だち2名と宴を囲み、飲みまくりました。
ぼくは生ビー×4、ハイボール×3、ジントニック×1といった
塩梅。いやあ〜楽しかったなあ!話題は煙草文化の許容から音
楽のもたらすイマジネーション、行き過ぎたポリコレまで飛び
まくりでした(笑)また少々マジメな話をするならば、誰かの
頭数になるだけのデモ行進より、個人の思考を鍛えましょうよ
ということまで、4時間があっという間に過ぎていきました。

家に帰って取り出すのはフェイシズの『ファースト・ステップ』
(70年)です。これがまた染みまくるのです。ジェフ・ベック
・グループのメンバーだったロッド・スチュワートとロン・ウ
ッドが、スモール・フェイセズの残党だったケニー・ジョーン
ズ、イアン・マクレガンそしてロニー・レインの三人と合体し
てフェイシズは産声を上げたのです。当時はスモール・フェイ
シズがあまりに有名でしたから、彼らのアメリカ盤(写真)で
は、せっかくの新たな門出にもかかわらず、Small Facesの表記
が為されてしまう混乱ぶりでした。

きっと心細いデビューだったと想像します。まだ何者でもな
い。何も持っていない。そんな20代前半の若者たちの音楽
地図として、これ以上のものはないと思います。この『ファ
ースト・ステップ』には、英国ならではのブルーズ・ロック
の湿り気と憂鬱があります。のちに”世界一陽気で大酒飲み”
のロックンロール・バンドとして世間に知られる以前のナイ
ーブな揺らめき。葛藤。自信のなさ。それらが今なお胸に迫
ってくるのです。例えばレイン=ウッド作のNobody Knows
はどうでしょう。

 ここでずっと待っているけど/無駄に終わるのかもしれな
 いね/ぼくに会ってくれるかい?/きみに触れてもいいかい
 ?/誰も来ないし誰一人去らない/このいらだちをどうにか
 しておくれ/幸せとか悲しみとかがどっち付かずのまま/
きっと善良なる神様がいるんだろうね/でも混乱と幻想が
 混ざり/そして歳月だけが流れていく/多くの名声とかそう
 いうくだらないものが部屋を満たす/そんな時こそぼくは
 キーを変えて歌いたいのさ(Nobody Knows)


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# by obinborn | 2017-06-09 22:40 | one day i walk | Comments(0)  

アンタだって叩けばホコリくらい出てくるだろ?

ある方の言葉が印象に残った「世間の人は皆清廉潔白で後ろ
めたいことはないのかな?批判し過ぎじゃないかな」と。彼
がどういう気持を込めて書いたのかは解らないけど、きっと
広義に解釈出来る含みを持たせたかったのだろう。実際ぼく
もSNSで他人の批判ばっかりしている人を見ると、「ほお〜
さすが人格者は言うことが違いますなあ〜」と皮肉を言いた
くなることがしばしばだ。とくに政治や社会問題に関しては
ノンポリ層への喚起が必要なのに、自分ガー、正義ガーとば
かり叫んでいると大概の人は疲れてしまい、伝わるものも伝
わらないと思う。ぼくが政治のようにデリケートな問題はな
るべくお会いして直接話しましょうよ、と提案するのはそう
意味なんです。

ぼくは「誤解」という言葉があまり好きではないから、東浩
紀さんが使われるところの「誤配」と読み替え使用するけど、
SNSでのちょっとした音楽会話のなかでもこっちの意図がう
まく届いていないと感じることがある。むろん同時に相手も
ぼくにそう思っていることも度々あるに違いない。そういう
意味で「誤配」なんかしょっちゅうだ。長く一緒に暮らして
いるカミさんだって100%理解出来ているかと問われれば、
自信がない。見ず知らずの方ならなおさらですよね。

冒頭の言葉に戻すと、行き過ぎた清廉潔白やポリコレという
のもどうかなと常日頃からぼくは感じている。実際アメリカ
ではヒラリーさんの偽善主義みたいなものに対する反発が高
まり、揺り戻し現象が起こりトランプの本音主義(彼には呆
れるけど)が支持されちゃったんだから象徴的だよね。あの
大統領選の苦い教訓を生かしていければいいのに。もっと卑
近なことで言えば芸能人の不倫や不祥事を狙い打ちする”炎上”
エンタメというのも、今やすっかり当たり前になってしまった。
みんな匿名故に責任を感じなくていいから、もうどんどん叩
きまくるのみ。そういう世界に馴れてしまうと、もう本当に
その人の品性は育たないだろうね。それを青筋立てて批判す
るのではなく、「アンタだって叩けばホコリくらい出てくる
んちゃう?」とユーモアを込めるのがぼくのやり方です。

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# by obinborn | 2017-06-09 07:31 | one day i walk | Comments(0)  

2月11日のラリーパパ&カーネギーママ

今年前半のハイライトは2月11日に青山の月見ルで行われた
ラリー・パパ&カーネギー・ママのWelcome Backツアーだ
ったかもしれません。自然なバンド・サウンド、日常を見つ
めた歌詞、けっして偉ぶらない態度と幾つかのユーモア。彼
らはそれらを携えながら、久し振りの東京にやってきたので
した。ぼくが昔、彼らのために書いた原稿をチョウさんが覚
えていてくれたのがきっかけで、マネジャーの柳本さんとは
以前からネットで語り合う仲間でした。そんな偶然の数々に
導かれながら、彼らと再会を果たしたのです。会場に流れた
ジョン・セバスチャンのWelcome Back(おかえりなさい)
を反芻しながら、ぼくは帰路に着きました。


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# by obinborn | 2017-06-08 18:11 | Comments(0)  

カープの世界

6月に入ってからのビール・発泡酒の値上げは痛いです。
ぼくの近所にはスーパーが三店ほどあるのですが、軒並み
10円くらい上がってしまいました。これらが音楽バーや飲
み屋さんまで影響を及ぼしていくと思うと…。そんなイヤ
な気持を吹き飛ばすべく、絶好調の広島カープを祝うべく?
アメリカ南部のイモ・バンド、カープを聞き始めました。
オクラホマ州立大学に通う学生4人によって1966年に結成
されたカープが、晴れて大手レーベルのエピックと契約し、
ダニエル・ムーア(ジョー・コッカーのマッド・ドッグス
&イングリッシュメン、abcからソロ作あり)のプロデュー
スによるアルバムを発表したのは72年のことでした。

カープの音楽は埃っぽく無骨なロックで、女性にモテそう
な洒落た要素は皆無(オイラと同じじゃん、エ〜ン泣)で
す。でもこのスルメ味が繰り返し聞いているうちにジワジ
ワと染み込んでくるのです。とてもミシュランで推薦され
るレストランにはなれそうもないけど、下町で愛される食
堂みたいな。その食堂には今日もいろいろな人たちが訪れ
ます。風采の上がらない大学教授、地元の商店街のおじさ
んたちから、午後の授業を終えた食欲旺盛な高校生たちま
で様々です。「御飯のお代りは自由です!」なんていう貼
り紙があったりしてね。

何回か聞き直してみると、ハーモニー・ヴォーカルに気を
遣っている様子や、ゲストに招かれたペダル・スティール
・ギターの名手スニーキー・ピート・クレイナウ(フライ
ング・ブリトー・ブラザーズ)の隠し味などが、じわりと
染み込んできます。目に浮かぶのはやはりアメリカ中西部
の風景でしょうか。ぼくは単なるアホなので、彼ら唯一の
このアルバムを3枚持っています(←いい加減にせい!)
それはともかく、ザ・バンドやエッグス・オーバー・イー
ジーの気楽な後継者といった感じのカープが愛おしくてな
りません。とりあえず缶ビーとハイボールで彼ら唯一のア
ルバムに乾杯!のオビンなのでした。


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# by obinborn | 2017-06-08 17:28 | rock'n roll | Comments(0)  

6月に聞くエリック・クラプトン

昨夜のロス・ロイヤルズ・フレイムズとロス・ペリキートズ
のライブは最高!でした。方やスワンプ・ポップに、もう片
方はテックス・メックスに特化したバンドで、フレイムズの
田中のん氏のリバーヴ掛けまくりギター(一部アーミング)
やペリキートズの橋本さんのバホ・セストの響きがとくに心
に残りました。むろん他バンド・メンバーの皆さんもですよ。
終演後近所の友だちのSくんと会話出来たことも嬉しかった
です「俺らはあそこまで陽気になれない。ジメジメしている
よね〜」と互いの古傷を舐め合うのでした。

ぼくに関してはスワンプ・ポップにせよテハーノ音楽にせよ、
通り一遍の知識があるだけで、とても彼らのような情熱と実
践には敵いません。敵うわけがないのです。そういう意味で
Sくんが「オビさんはやっぱロックですよね」と言ってくださ
ったのが嬉しく、また少しの恥ずかしさを伴うものでした。
ぼくは今でも『ライブ・クリームvol.2』や『461』アルバムが
好きですし。

自分のなかの”ジメジメ"としたものを見つめるのは大事なこと
かなと思ってます。エリック・クラプトンもまたそんな一人で          すよね。彼は黒人音楽の聞き手から揶揄され、80年代にはコ
マーシャリズムに走ったことを批判されたりしました。それで
もエリックは少しずつ自分の音楽を温め、鍛えていったのです。
自分のコンプレックスや”ジメジメ”を把握しながら、です。ぼ
くがE.Cに関して共感するのは、きっとそんな部分かもしれませ
ん。自分のブルースって、そういうことだと思っています。

というわけで、E.Cの『安息の地を求めて〜There's One In Ev           ery Crowd』を今日もまた取り出すオビンでしたとさ。


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😅



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# by obinborn | 2017-06-08 12:07 | blues with me | Comments(0)  

追悼:鈴木カツさん〜今までありがとうございました

鈴木カツさんが亡くなられた。ここ数年は闘病生活を余儀なく
され、ご自宅近くの茅ヶ崎から外に出られることもままならな
くなっていた。ぼくがカツさんと出会ったのは確か95年のこと。
今はもう疎遠になってしまった中山義雄くんと一緒に、築地に
あるカツさんの音楽バー、Any Old Timeに出向いたのが最初だ
ったと記憶する。それからしばらくAnyに通い、親しくさせて
頂いた。

こればかりは正直に告白しなければならないだろう。そうして
仲良くなったカツさんとぼくとの間に亀裂が生じたのは、07年
の7月のことだった。今でもはっきり覚えている。改訂/増補版
として10年ぶりに再刊が叶った拙書『Songs〜70年代アメリカ
ン・ロックの風景』に対して彼が文句を付けたのだった「表紙
のデザインはちゃんと精査したのかい?」「ぼくは今いちだと思
うよ」それがカツさんの言い分だった。その後次第に交際は途切        れていった。いささか心ないdisり合いをソーシャル・ネットで
互いにやり合った。

それでも昨年の12月、体調をかなり崩されているカツさんを
見舞いに行った。彼は茅ヶ崎駅までわざわざぼくを出迎えてく
ださった。握手をした。これまでの非礼をぼくは詫びた。カツ
さんは穏やかに受け止めてくれた。同行して頂いた芽瑠璃堂の
長野和夫さん、イラストレイターの菅野カズシゲさんと、駅ビ
ルの上階にある鮨屋で円を囲み、旧交を温め直した。わざわざ
お土産として茅ヶ崎名物の魚の煮干しと、エディ・ジェファー
ソンのriverside原盤、そして英Mojo誌が企画したボブ・ディラ
ンのトリビュート作『再訪:Blonde On Blonde』を頂いた。カ
ツさんのご著書『ぼくのアメリカ音楽漂流』にサインをしてく
ださった。

こうして95年から22年もの間に、ぼくはどれほどのことを得
たのだろう。一体どれほどのものを失ってしまったのだろう。
焦らない、急がない。答えはぼく自身が出していかなければ。
写真はその時のスナップ。菅野カズシゲさんがシャッターを
押してくださった。鈴木カツさんのご冥福を心からお祈り致
します。カツさん、聴こえていますか?今まで本当にありが
とうございました。


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# by obinborn | 2017-06-06 18:08 | one day i walk | Comments(0)  

喜びと悲しみ〜Sさんとフェイシズのこと

旧知のSさんからメッセンジャーで連絡を受けた時はとても
嬉しかった。彼は以前池袋の音楽バーのコック係を担当され
ていて、その美味しい料理と陽気な性格がぼくは大好きだっ
た。そんな彼と音信が途絶えてから久しかっただけに、ぼく
を覚えていてくださったことに、心温まる思いがした。

人間、毎日生きていればいい時も悪い時もある。楽しいこと
も辛いこともある。今朝だってぼくはバイト先で内装業者さ
んと居住者さんとの狭間に立たされたばかりだ(結果丸く収
めました)そんな時は誰もがささくれだってしまう。でも互
いに少しの知恵を出してみようよ、というのがぼくの考え方
だ。

記憶って素敵だな。誰かが自分を覚えていてくれる。彼や彼
女らが、たとえぼくみたいな”つまらない男”であったとして
も、覚えていてくれる。声を掛けてくれる。ときに「ねえ、
今度久し振りに飲もうよ!」とラインをくれる。ぼくはその
心の動きのひとつひとつを大事にしたい。ぼくが父親の葬儀
の際、喪主として述べたのはおよそ次のようなことだった「
父は亡くなりました。それでも皆さんそれぞれの記憶のなか
で、きっと生き続けることでしょう。時々父のことを思い出
して頂ければと願っています」と。

Sさんの陽気のなかに秘められた悲しみが見える。フェイセ
ズの馬鹿騒ぎ的なロックンロールとイカしたR&Bの彼方に
メンバーそれぞれの悩みや葛藤がやがて見えてくる。もし誰
かに声を掛けられたなら、せめて笑顔で返す気持を持ちたい
ね。Cheers!My Old Pal !


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# by obinborn | 2017-06-06 12:54 | rock'n roll | Comments(0)  

クレイジー・ホースとハル宮沢のことを考えてみた

今一番欲しいアナログ盤はクレイジー・ホースのセカンド
『LOOSE』なんだけど、4月27日に石塚浩子さんの個展に
行く際に立ち寄ったお店では6800円もしたので仕方なく諦
めた。未開封のシールド付きだったからなおさら高かった
のだろうけど、昔は投げ売り同然だったし、今も探せば500
円で購入出来ると思う。値段的な口上はともかく、ワーナー
の名盤探検隊でCD化された際に初めて聞いて”震えた”。勿論
前身バンドのロケッツや彼らのファーストは大好きだったけ
ど、本作は70年代に何故かタイミングを逃し聞かないままだ
った。きっとダニー・ウィットンが亡くなったクレイジー・
ホースなんて...という先入観に囚われていただけなのだろう。
私はそんな自分の浅はかさを呪った。ダニーに代わる新しい
ギタリストのグレッグ・リロイとジョージ・ウィッセルの二
人がかなり貢献しているし、多くの曲でソングライティング
を手掛けているのも頼もしい。むろんタルボット=モリーナ
の馬力あるリズム隊は、まるでB級食堂のA定食のように力強
く優しく、身体ごと安心して委ねられる感じかな。

この人達はきっとロック音楽の未来を透視するなんていう視点
とは無縁に、自分たちの音楽を楽しみ慈しんでいるだけなんだ
と思う。その心意気が頼もしい。アルバム表題の如くルーズで
タフな演奏の味わいといったら!まるで一番いい時のハル宮沢
のコスモポリタン・カウボーイズのようだ。荒ぶる心も穏やか
なカントリーもそのまま出しちゃう不器用な部分は両者に共通
するものだろう。この時期のクレイジー・ホースのライヴはき
っと無敵だったに違いない。細かいことは気にしない。その代
り俺たちはラウドで行くぜ!そんなことを無言のうちに言い含
めた姿がもう圧倒的に美しい。

余談だが、ハル宮沢は日本のロックの埋もれがちな才能の一人。
この人はこんなことまで考えていたのかと思わせるナイーブが
激しいノイズの彼方から見えてくる。あるいはハンク・ウィリ
アムズの曲に託した喜怒哀楽が聴こえてくる。彼と出会った時
は、まるでたまたまクラスが違って話す機会に恵まれなかった
ハイスクール時代の友だちだと直感した。そしてクレイジー・
ホースとハル宮沢は、これからもきっと怒りや喜びや悲しみ...
それらすべてを音楽に託していくことだろう。


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# by obinborn | 2017-06-03 17:09 | rock'n roll | Comments(0)  

さようなら、こんにちは。

昨日から今日にかけて、尊敬するお二人のミュージシャンから
励ましの言葉を掛けて頂きました。一人はとても優れたソング
ライター。もう一人はほぼ同級の気の置けないギタリスト。と
ても嬉しかったです。

自分が「音楽と政治」について迂闊に発言してしまったことが
今回の”騒動”を呼び起こしてしまいました。本当に申し訳あり
ませんでした。自分としてはひとつの歌なり、ひとつのフレー
ズなりが何らかの党派性を帯びてしまうことの危険を言い当て
たつもりだったのですが、騒動は飛躍し、誤解されつつ、あっ
と言う間に拡散されてしまいました。

それに対してぼくは言い訳をしたくありません。また自分の
正しさを言い連ねることもしたくありません。むしろ自分が
苦難に陥った時、友人たちが掛けてくれた言葉や思いのほう
がじわりと染み込んできました。この感覚って一体何なんで
しょう?

いつかまた、皆さんとお会い出来たならすごく嬉しいです。

小尾 隆


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# by obinborn | 2017-06-02 19:02 | one day i walk | Comments(0)  

6月1日はデイヴ・メイソンの原稿を

今日はずっとデイヴ・メイソン『流れるままに〜Let It Flow」
のライナー原稿を書いていました。スペンサー・ディヴィス・
グループI'm a Manのセッションにデイヴ、ジム、クリスの3
人が合流したことを機にトラフィックが生まれ、すぐにデイヴ
が数回の脱退劇を繰り返しながら渡米し、西海岸を新たな拠点
としてソロ活動へと踏み込む...。そんな彼のキャリアを音とと
もに追いかけてみました。お陰様で?『ヘッドキーパー』や
キャス・エリオットとのデュオ作などへとつい脱線。筆を止め
て聞き入ってしまうこともしばしば(笑)それでもこうした聞
き直しによる再発見は楽しいですね。どこか憂いを秘めた彼の
旋律や間合いのあるギターが、アメリカの風に吹かれることで
科学反応を起こし、才能がやっと開花する。その頂点とでも言
うべきアルバムが77年にリリースされた『流れるままに』でし
た。表題曲を当時カリフォルニア・ジャムで熱演したデイヴの
姿が今も筆者の胸に焼き付いたまま離れません。


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# by obinborn | 2017-06-01 19:27 | one day i walk | Comments(0)  

オールマンズ謎の『音カット事件』

さっき日戸さんとも話したんだけど、アナログ時代のIT'S NOT
MY CROSS TO BEARにはエンディング部にギターのフィード
バックのような残響音が入っていて、それが不思議なトリップ
感をもたらしていた。ところがCD時代になってからは何故か
この部分がカットされてしまったのが悲しい。これはファンに
は結構有名な話で、私はわざわざキャプリコーン・クラシック
スというCDを購入して確かめたら、やはり残酷なことに効果
音の部分が省略されていた(このYOU=TUBE音源もそう)カッ
トに至るまでどんな経緯があったのかね?例えば単純なミス
とか、メンバーの意向だとか、寡聞にも私は知らないのだが、
ご存知の方はぜひご一報ください。ちなみにLPでは短い溝まで
刻まれているので、そこには当初制作者エイドリアン・バーバ
ーなり、フィル・ウォルデンなりの意志が明確にあったと私は
思っている。

https://youtu.be/ZkBdtjq_26s



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# by obinborn | 2017-05-29 18:51 | one day i walk | Comments(2)  

恩田陸『蜜蜂と遠雷』を読んで

今年前半で一番面白かった小説が恩田陸『蜜蜂と遠雷』
だ。クラシック・ピアノのコンクールをめぐる複数男女
の群像劇ゆえに、目線が局面局面で入れ替わり、まった
く飽きさせない。才能があっても幼少期にもて囃された
がために一度引退を決意した少女と、幼なじみの少年と
が時を経て邂逅し本選を競い合う場面が筋書きとしては
山場だろう。しかしむしろ主題は音楽という抽象画の捉
え方だ。例えば破綻なくまとまった端正な演奏が必ずし
も人々の心を打つとは限らないとか、技巧の習得に懸命
だった若い時よりも今は素直に音楽に向き合えるとか、
誰もが感じることを主人公たちに「語らせて」いる。と
りわけ今は他の職業を持つ中年ピアノマンが奮闘する姿
は、多くのアマチュア音楽家を励ますことだろう。

またピアニストの主人公たちだけでなく、審査員や調律
師といった脇役の人生にさり気なく目を向けたり、音楽
業界の魑魅魍魎に鋭く切り込んだりと、複数の丹念な取
材なしには書けなかった記述が多くあるのも特徴だ。そ
もそも英才教育が必要とされ、膨大な金銭と人脈が投資
されるクラシック音楽が、どれだけ市井の人たちに届く
のか?という矛盾も暗喩に込められた。それでも音楽の
彼方からは今日も蜜蜂が飛び交い、遠くの空では遠雷が
鳴っている。


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# by obinborn | 2017-05-29 08:27 | Comments(0)  

架空連載小説『レコ屋太郎の物語』その4(最終回)


おはようございます。今朝も10時に出勤し店内の掃除をし、
昨日終わらなかった値付け作業を粛々と始めるぼく(太郎)
です。するとオビ店長が入っていました。「おはよう太郎。
昨日は16時戻りと言いながら結局帰れなく悪かった」「い
えいえオビさん、たぶんお忙しかったんでしょう」「ああ、
まあな。そのコレクターさんが全処分されるというのでな、
これはとても一日では終わらない作業だと判断し、その方
と飲み屋に行きいろいろ相談してな〜」「そうだったんで
すか〜。ところでその方のコレクションはどうでした?」
「おお太郎、よく訊いてくれたな。この一件で当分ウチの
商いはまかなえるぜ!」

するとオビ店長は一気に語り始めました。そのコレクター
さんが現在82歳の高齢であること。奥様に先立たれて以来
塞ぎ気味なこと。もう収集への意欲を失ってしまったこと。
そして膨大なレコードの数々...。何しろ所有枚数は25,000
前後であり『江古田レコード』の倉庫一つでは扱えないこと
が解ったのでした。「オビさん、どうしましょうか?」「
うむ、とりあえず彼の自宅に通わせて頂ける了解は得た。
ウチのバンで順次運び続けるしかないだろうな。何しろス
トーンズの英米日盤だけで相当あるで!ユニオンさんに持っ
ていかれない案件で心底ほっとしとるわ」

「ところで太郎、昨日変わったことはなかったか?」そう
訊かれたぼくは内心ドキドキしました。清美さんのことを
言うか言うまいか判断が付かなかったのです。でも別に隠
すことでもないと思ったので告白したのです。「おお清美
ちゃんか。元気でやっとるかいなあ〜。たぶん太郎と歳も
違わんと思うよ。オイラは業界が長いから彼女のことは良
く知っとる。最近の若い連中のなかでは群を抜いて研究熱
心なコでな。ちょっと耳に挟んだハナシやが、ビートルズ
しか集めないカレ氏にもういい加減愛想が尽き、先日別れ
たばかりみたいだよ〜」

「よし、これなら勝てる!」そう心に誓ったぼくは嬉しさ
のあまり、通常清掃に加えワックス掛けまでしたのでした。
午前11時『江古田レコード』開店の時間です。いらっしゃ
いませ!(了)


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# by obinborn | 2017-05-28 05:44 | Comments(0)  

架空連載小説『レコ屋太郎の物語』その3


(これまでのあらすじ:28歳の独身太郎は『江古田レコード』
で働く日々であった。そんなある日、イカした女性が店に入っ
てきたのだった…)

「あのう、私ブリンズリー・シュウォーツ『銀の拳銃』のLP
盤を探しに来た清美と申します。太郎さん、どうかよろしく
ね!」瞬時にぼくの心臓は激しく鳴り出しました。こんな綺
麗なお嬢さんが来てくれるなんて。『ブリンズリーズですか!
お客さんもいい趣味されてますねえ〜。少々お待ちください。
ただいま弊社のパブロック・コーナーを探してきますね!」
極めて平静にそう答えたぼくですが、内心はもうドキドキで
した。というわけでコーナーを漁ってきたのですが...。「キ、
キヨミさん、いや失礼お客様、あいにく現在『銀の拳銃』の
在庫は切らしておりまして...」

「あら残念ね!オビさんの伝を頼ってせっかく隣町から来た
のに」「ほんますんません。英エドセルの再発盤をつい先日
まで800円で売っていたんですが…あの、もしよろしかった
ら明日ぼくの手持ち盤を店に持ってきます。一緒に聞きませ
んか?」「う〜ん、わからない。私明日はカルチャー教室に
行く予定ですし」「それは残念です。あ、あのお客さん、メ
アド教えて頂けますか?うちの店の新入荷情報をすぐお届け
出来ますし、ポイントカードも満額貯まればレコ半額でご奉
仕しているんです」

「えっ本当!じゃあ明日また来ようかしら!」ぼくはもう夢
心地でした。明日も清美さんに会えると思うと、倉庫からの
重い搬出作業にもワンパターンの値付け業務にもオビ店長の
罵詈雑言にも不思議と耐えられるような気がしてきました。
「清美さん、明日また!」そう心のなかで呟いたぼくは、再
び『江古田レコード』の作業に没頭していきました。いつの
間にか陽が落ち、東の空には月がうっすらと立ち昇ってきま
した(続く)


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# by obinborn | 2017-05-27 18:35 | one day i walk | Comments(0)  

架空小説『レコ屋太郎の物語』その2

午前中の仕事はほぼ順調に終了しました。プライスカード
に店頭価格のスタンプを押しまくる流れ作業です。これで
まず150枚の値付けが出来ました!それらを新たに店頭出し
していくのがぼく(レコ太郎)の役割です。でも、その間
に来店されたお客さんはたった三人。近所のよく来てくれ
るおじさん、勘違いして入ってきたヒップホップ風ジャー
ジー姿の若者、そして東京ガスのメーター検針のおばさん
が「ねえ?聖子ちゃんの『風立ちぬ』ある〜?」と尋ねて
きたくらいです。ぼくの趣味とは違うけど、地元の商店街
とうまくやるのが本物のプロでっせ!というのがオビ店長
の持論なので、ちゃんと接客致しました。最初に来たおじ
さんはネッド・ドヒニーの名盤『ハード・キャンディ』を
嬉しそうに買っていかれました。ぼくもいつかあんな温厚
なおじさんになれたらなあ〜。

中古レコ店に昼休みなんかありません。たまに近所のラー
メン屋さんに出前を頼んだり、給料日には贅沢してピザの
大皿をオビさんと一緒に食べることもありますが、今日は
業務をしながらコンビニ弁当を胃に流し込んだだけ。ぼく
もいつかお金持ちのように低カロリーの健康食を食べてみ
たいなあ。とりあえず一服です。近くにあるスタバの従業
員に一番安いコーヒーのデリバリーを頼み、彼が配達をし
てくれたのです。そのコーヒーを飲みつつも、午後に向か
って値付けの作業は続きます。昨日オビ店長が買い取って
きたジョージ・ハリソン『ALL THINGS MUST PASS』の
オーストラリア盤を査定したかったのですが、オビさんに
「けっ!太郎には10年早いわ!」と一蹴されてしまいまし
た。

そんな午後がちょっと過ぎた頃、思いがけないお客さんが
『江古田レコード』の扉を開けて入ってきました。黒のノ
ースリーブに褐色の肌。その鮮やかなコントラストが衝撃
でした。結わいた髪にも思わずゾクゾクしてしまいました。
彼女は開口一番ぼくにこう語りかけたのです。「こんにち
は。太郎さんのことはオビ店長から伺い、隣町の東長崎か
ら来ました。ところで私はブリンズリー・シュウォーツ『
銀の拳銃』のLP盤を探しているんだけど...」その一言をぼ
くはもう無我夢中で伺っていました(続く)


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# by obinborn | 2017-05-27 14:22 | one day i walk | Comments(2)  

◎架空小説『レコ屋太郎の物語』いよいよ連載開始です!


ぼくの名前はレコ屋太郎、現在28歳の独身です。そろそろ
結婚したいんだけど、彼女もいない毎日を過ごしています。
現在近所の『江古田レコード』に週6日勤務のバイトに明
け暮れています。仕事はやっと2ヶ月経って少しずつ中古
レコの世界に馴れてきたかな?でも店長のオビさんにはい
つも怒られっぱなしです。「おお太郎、おはよう!ちゃん
と朝の店内清掃は済ませたか?」「へい、店長!」「へい
じゃないだろ、馬鹿者!ちゃんとはいと返事しろ!」「す
みまへん!」ざっとこんな感じです。

店は午前11時開店ですが、10時に出勤してまず店とトイレ
を清掃することから一日が始まります。それが終わると、
昨日店長が出張買取してきたLP/CDの値付けです。といっ
てもぼくはただオビ店長の指示に従うだけです。「こっち
の段ボールが200円買取の100枚、あっちが300円の箱。そ
れに400円500円と順に書いたからな、くれぐれも間違えて
値付けするなよ!」「へい!解りました」「だからへいじゃ
ないだろアホ!そんなことだから彼女も出来ないんじゃ!
もう一度値付けのおさらいをしとかんとな。おい太郎、200
円買取の店頭出しはいくらや?」「はい、600円です」「そ
うそう、ごく単純な作業じゃ、頼むぜ!オイラは今日は引退
したコレクターさんの家に行ってまた買取じゃ。たぶん16時
ごろには戻るからな」「あの店長!宇宙戦艦ヤマトのLPと
榊原郁恵のシングルが未指定なんですが...」「じゃかしい!
そんなもんは100円コーナーにくれておけ!」

最初ぼくはレコ屋の仕事を舐めていたのかもしれません。何
か一日じゅう店番しながら好きな音楽聞いていられるのかな
〜なんてね。でも実際は大変です。カウンターに座りつつも
こうした値付け作業をはじめ、底割れを防ぐためにLPの下部
に厚紙を差し込んだり、お客さんが飽きないように店内在庫
と倉庫に眠っていたアイテムとを入れ替えたり...オビさんには
内緒だけど昨日は単純ミスをして、お客さんにお釣りを余計に
渡してしまいました。ああ、でも今日は土曜日、話しの合うお
客さんが来ないかな〜(続く)


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# by obinborn | 2017-05-27 12:36 | Comments(0)  

中村とうよう氏の思い出

中村とうようさんとは神保町のカレー屋さんでばったり
遭遇したことがあります。むろんこっちは30歳の若造で
一方的にとうようさんを慕っていただけの関係でしたが、
原稿用紙の入った封筒を取り出す姿は、物書きを志して
いた私にとって「ああ、とうようさんがいる!」という
感激で一杯でした。また「とうようズトーク」では飲食
店で客が店にごちそうさまと言うのは良くないなんて書
いていたのに、その店では帰り際店員にしっかり挨拶さ
れていて、とうようさんも人の子だったと感慨を新たに
しました。ちょうど1990年前後だったと記憶します。ま
だワープロも浸透していなく、原稿用紙に手書きするの
がごく一般的な時代でした。

とうようさんから一番大きく影響されたのは、やはりリ
ズムの悦楽・豊かさのことだったと思います。ロックに
入る以前にジャズやラテンに精通されていた彼にとって、
ロックはあくまで客観的な素材のひとつだったのかもし
れません。そんな部分にまだ若かった私は反発した時期
もありました。きっとそこら辺は世代的に埋められない
溝なのかもしれませんね。それでもとうようさんのお陰
でライ・クーダーとタージ・マハールを俯瞰することが
出来たのは私にとって最大の収穫でした。またブラジル、
カリブ、アフリカ、アラブ、東欧州など、世界各地の音
楽を貪欲なまでに吸収していく姿勢にも学ぶものは少な
くありませんでした。

一番印象に残っているのはジャズの新伝承派をめぐって
とうようさんが『スウィング・ジャーナル』と激しく論
争した80年代後半の時期です。かつて隆盛を極めたハー
ドバップの時代をいたずらに懐古し、バップ・ジャズの
形だけを真似たブラフォード・マルサリスらの動きは氏
の感性に合わなかったようで「内実を伴わない上辺だけ
の音楽」「肉体というスポンティニアスな衝動に欠く」
「単に小器用なだけ。マルサリスには汗の匂いがしない」
などなど、もうボロクソに叩いていました。その一方で
あるべきジャズの未来としてジェイムズ・ブラッド・ウ
ルマーを早い時期から高く評価していたのも、またとう
ようさんその人でした。ここら辺はしっかり筋が通って
いました。

今は何でも”当たり障りなく”やり過ごすのが賢明な時代
です。そんな傷付けず傷付けられずの風潮が批評という
分野をも浸食しているとしたら深刻だと思います。遂に
最後までとうようさんとお話する機会は叶いませんでし
たが、彼の批評精神は事なかれ主義、政治への無関心、
都会的流行の上辺などが跋扈する現在こそ、必要とされ
るものではないかなと感じます。最後にとうようさんの
至言をご紹介しておきましょう。正確な引用ではありま
せんが、およそ次のような内容でした。「昔の人だって
現代人のようにテレビを観ながら衣を縫うことは出来た
だろう。でも昔の人がそれをしなかったのは、何の有益
にもならない二股作業は無駄だと熟知していたからだ」


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# by obinborn | 2017-05-26 14:48 | one day i walk | Comments(0)  

音楽にとって幸せな文章って何だろう?

マディ・ウォーターズの11枚組LP『THE CHESS BOX』が
発売されたのは1985年のことだった。日ヴィクター社以来
久し振りにチェス・レーベルと契約したPヴァインは、当時
毎月チェスの作品を飛ぶ鳥を落とすかの如くリリースしまく
っていた。それは弱小インディ会社として75年に始まったP
社がちょうど10年後に成し得た快挙だった。個人的には学生
時代を終え社会人になった時期と重なったので、サラリーを
貰えることが嬉しく、給料日には最低でも5枚くらいは購入
していたっけ。それらの日々は今なお私の財産だ。

こうして久し振りにマディのボックスを聞いていると、様々
なことを思い起こす。音源もさることながら、添えられたブ
ックレットがものすごく丁寧だった。日暮泰文氏によるイマ
ジネィティブなマディ論に始まり、鈴木啓志氏の「ミシシッ
ピ・デルタの泥水がシカゴへ流れ込んだ」がそれに続いた。
さらにマディを巡るイラストも楽しい人脈図があり、吾妻光
良氏が愛情を込めた「あの大きな笑顔を忘れない」のエッセ
イが控えていた。それらの頁をめくっていくのが大好きだっ
た。

「音楽を聴くことと同じように、ぼくは音楽について書かれ
た文章を読むのが好きです」私が尊敬する同業の先輩は簡潔

にそう言い含める。そう、私たちは音楽それ自体を愛するの

と同じように、書かれた文章を読むのが大好きだった。


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# by obinborn | 2017-05-24 17:24 | blues with me | Comments(0)  

Pヴァインのコンビニ出店に思ったこと

老舗インディ・レーベルのPヴァインが下北沢にコンビニを
出店したらしい。自社説明ではもっともなことを言っている
けど、要は音楽だけじゃ喰えなくなったってことだろう。時
の流れとはいえ、こういう本末転倒は悲しい。仮にリテイル
(小売り部門)を強化するなら、本来持っているノウハウを
生かしてレコード/CDのセレクトショップを展開することも
可能だったと思う。そのほうが新しい世代によるレコ・ブー
ムに応える意味でも歓迎されたろう。それに俺はPヴァイン
にコンビニ出店して欲しくてレコ買ってきたわけじゃないし
な。ここら辺はディスクユニオンがアーティスト・グッズの
売り場面積を増やす展開にも似て、ちょっと寂しくなった。



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# by obinborn | 2017-05-24 13:51 | one day i walk | Comments(0)  

ローリング・ストーンズの75年作『ブラック&ブルー』に寄せて

オイラが『ブラック&ブルー』(76年)を最初に買ったのは
77年の3月。自分が地元の県立高校を卒業する間際のことだっ
た。何でそんなに正確に覚えているかと言えば、絶対合格す
ると確信していた明治学院大学の英文学科に落ちてしまった
ことを掲示板で知り、その帰り道に池袋の西武百貨店系列の
ディスクポート(WAVEの前身)で購入したからだ。そのワ
ーナー盤は無著名の短い、明らかに手抜きと解るライナーが
添えられており、音楽内容の素晴しさとは反比例して落胆さ
せられた。オイラは当時から音楽について書かれる文章を読
むのが大好きだったから余計にそれを感じたのかもしれない。

今から振り返ると過渡期のストーンズを象徴するアルバムだ
ったと思う。ブロンズ髪と長身の若きギタリストは「もうツ
アーは沢山だ。ぼくはやはりブルーズを追求したい」と言い
残してバンドを脱退。その代りの"ギタリスト探し"をしなが
ら西ドイツはミュンヘンにあるロッカダム・スタジオを拠点
としながらレコーディングは進められた。本作には重量級の
ファンクHOT STUFFとHEY NEGURITTAがそれぞれAB面の
冒頭曲となり、ニューソウルの時代に対応した。何でも当時
の彼らはニューオーリンズ公演時、オープニング・アクトに
ミーターズを起用するほど、ブラック・ミュージックの新し
い動きに極めて敏感だった。エリック・ドナルドソンのレゲ
エ曲CHERRY ON BABYをいち早くカバーしたのもその現れ
だろう。そしてストーンズならではの”横揺れ”ロックンロー
ルの醍醐味はHAND OF FATEとCRAZY MAMAでたっぷり味
わうことが出来る。

でもそれ以上にオイラの心を揺さぶったのはMEMORY MOT
ELにFOOL TO CRYという二つのバラードだった。前者は伝
説のグルーピー、ハンナ・ハニーの回想録だった。もうひと
つは妻子ある男が不倫に陥り、それを察した娘に「パパはお
馬鹿さんね、でももう泣かないで」と諭される物語歌だった。
不思議なことだが、オイラが自分なりの人生経験を増すたび
にこれらの曲が、より深い部分で突き刺さってくるのだった。

思えば75年当時のミックやキースはちょうど30歳を少し超え
たばかりだった。好きなだけ女たちと寝た。シャンペンに塗
れた風呂にも浸かった。俺たちを知らない者はいない。そん
な彼らではあったけれども、MEMORY MOTELとFOOL TO
CRYでの二人は、青年期を終えようとする自画像を正直に告
白する。その痛みはどれほどのものだったろう。『ブラック
&ブルー』がストーンズの最高傑作であるかどうかの論議は
ともかくとして、このアルバムは今もオイラの心を捉え、ま
るで静かな波が岸辺に押し寄せるように、自分を揺さぶり続
けている。


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# by obinborn | 2017-05-22 19:08 | rock'n roll | Comments(0)