いたけれど、最高傑作と呼ばれる『エイジャ』辺りになると
ぼくとの距離はどんどん増していってしまった。それはバン
ド・サウンドを切り捨て、ベッカー=フェイゲンが強権体制
を敷き、プレイヤーを駒のように扱うことへの反発だったと
思う。この件に関しては「バンドにどこまで幻想を持つのか
の感覚の違い」と以前金澤さんから意見を頂いたことがある けれど、実際スティーリーの音楽は以前の温かさやホノボノ
とした部分が希薄になり、バンドというより目的を遂行する
精緻なチームといった要素を強めていった。ただ彼らのこの
プロジェクト的な意識が従来の音楽に風穴を開けたことは認
めよう。今迄裏方だったスタジオ・ミュージシャンが表舞台
へと羽ばたいていくフュージョンの時代の先駆がベッカー=
フェイゲンに他ならなかった。ウォルター・ベッカーの訃報
を耳にして涙は出てこなかった。ただ『さわやか革命』が大
好きだった二十代の頃の自分を振り返ったら、ふと寂しくな
った。ベッカーさん、今までありがとうございました。
# by obinborn | 2017-09-04 19:10 | one day i walk | Comments(2)