11月30日

角田光代『ひそやかな花園』(2010年毎日新聞社)を読了
今年45冊め

子供は親を選べないし環境も選べない しかしその出自を知る権利は
ある ただどうだろう自分が人工授精によって出来た子供だと知った
場合は?

およそそのような主題を七人ぶんの”人工授精の子供たち”に振り分け
て進められる群像劇 私は最初”幼少期のサマーキャンプ”といった暗喩
から勝手にオウム真理教を信者の子供たちの側から見た作品かと思い
読み進めていたのだが 待っていたのは人工授精というこれまた重い
テーマだった しかも子供の目線から射る展開というのは案外忘れられ
がちかも

何も作者はその医学的かつ生態学的な是非を問うているのではない
結果として生まれてきたその七人のその後をしっかりと見守っていくだ
けだ むろんそこには煩悶があり迷宮が待ち受けているのだが 丁寧に
辛抱強く描くことで ときに激しくときに柔らかく読者へと訴える 

子供を書き込むことは同時にその父親や母親を観察することでもあろう
かつての親の年と自分が同じになったときやっと寄り添うことが出来るもの
が誰にでもあると思うが そんな邂逅もむろん用意されている

それにしても角田さんの筆致はいつもまっすぐで どこまでも力強い
人間という”不完全なもの”を見届けようとする力が奔流のようにこの物語を
支えている

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今朝の中野・哲学堂 
ウォーキングは20,622歩
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by obinborn | 2010-11-30 14:06 | 文学 | Comments(0)  

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