3月8日

宮沢章夫『ボブ・ディラン・グレーテスト・ヒット第三集』
を読了 今年6冊め

たとえば高給取りがオーディオ・ライクに接するディランと
非正規雇用者が耳にするディランとでは まったく位相が異なるだろう
いつも言っていることだが それだけロックの歴史とは矛盾を抱えてし
まっている

状況設定が読む以前に9・11を想像出来てしまうし
その事件も終盤になって唐突に出て来るなど 小説としては脇の甘さ
が目に付くものの
21世紀はじめに新宿西口の中古レコード店で働く者たちの焦燥は
うまく描き出されていると思う

いずれにしてもHow Does It Feel? (どんな気がする?)という問いを
自分に向けられたものとして受け止められない者に
ロックを語る資格(註1)などないだろう

悲観的に考えれば勝ち組と負け組との間で内戦が勃発するという
のが とことんシリアスな日本の未来図なのかもしれない

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「坂道の途中で下に降りないようにしているんだろ ぐっとこらえてそこで
踏みとどまる うっかり油断していたら下に落ちていくんだ おまえ落ちてな
いか ずるずる後退していないか」
(本書より)

註1:「ロックを語る資格」

ことさら教条めいたことを言うわけではないが 優れた音楽評論には
表現者の問いに対して”自分はこう思う”という意見や感想あるいは
煩悶がある このような拮抗を最初に感じさせてくれたのは『アウトロ
ー・ブルース』を代表作に持つポール・ウィリアムズだが 残念なこと
にそれを”感想文”として遠ざけ データの羅列や単なる知識自慢へ
と貶めてしまったところにロック批評の堕落があったように思えてなら
ない いずれにしてもディランは今日も問い掛ける How Does It Feel?
と ひとりぽっちで指し示す(no direction)家もないことは まるでそこ
らに転がってる石のような冷たい気持ちはどんな気がするんだい? と
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by obinborn | 2011-03-08 20:14 | 文学 | Comments(0)  

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