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4月18日

やはり重苦しい空気へと閉じ込められてしまう

想像以上のことがいざ身近に起こってしまうと多くの人々は
どうしていいのか解らなくなり態度を留保させると思うのだが
私自身テレビの画面に映る荒涼とした風景と近所で遊ぶ子供たちとを
未だうまく結びつけられないでいる

しかしそれでもこれは現実に起こってしまったことなのだ
もう二度と震災まえには戻れないし 私たちはこれから放射能とともに
生きていくことになる

大衆の心理としてはこういう状況下ではどうしても救いを求めたくなるものだ
政府側の「ただちに健康に影響を及ぼすわけではない」という奥歯にモノが
挟まったような言い方など そうした大衆心理と呼応しようとする浅ましい見解
だろう  あれから一ヶ月以上経った今 早くも沈静化を狙ったようなメディア操作
も露骨なくらいだ

これは個人的な感覚の問題ではあるが
上を向けない人に対して「上を向いて歩こう」と歌うことは罪深い
もう少し踏み込めば 帰る家がある人が二度と家に戻れない人に呼びかけ
ることには 善意はともかく思い上がりがあるということだ

上杉隆のルポなどを読んでいると暗澹たる気持ちになってくる
上杉の言い分を要約すればマスコミ報道が記者クラブ制を採用している限り
流出する見解は懐柔されたものばかりになるといった内容である
裏を返せばレベル7というのはそれだけ踏み込めない”禁猟区”なのである

多くの人たちがいろいろなことを言っている
そのどれを信じていいのかは解らない
ただ私は文明も最新科学も案外もろいものだな、と実感する

思いのほか早期に修正を迫られた未来図をまえに
私たちは呆然と立ち尽くす
キング・クリムゾンの鉄仮面とナパーム爆弾をめぐる預言的な
「21世紀の精神異常者」(註1)をこういう切迫した現実のなかで聞いたのは
初めてのことだった

4月18日_e0199046_1532184.jpg


クリムゾン史上最も粗野で凶悪な演奏を収めたこのアルバムは
72年初頭の全米ツアーから抜粋された
破壊力の塊のような即興変拍子ジャズ「21世紀」に始まり
フリップの神経症的ギターとハンター・マクドナルドがオペレイトする
VCS3(註2)が断末魔の如くのたうち回る「グルーン」まで
まさに漆黒の闇を現出させている
イアン・ウォーレスの馬力まかせのドラムスも壮絶だ
アンペックスのカセットで録音されたというロウ・ファイな音は
オーディオ・ライクな神話への挑戦でもあろう

註1:「21世紀の精神異常者」
最初に付けられた邦題だが現在では「21世紀のスキゾット・マン」と
原題との折衷になっている こんな推移にも”丸く収めたい”意思が働いて
いるのだろうか ちなみに私が07年にクリムゾンの原稿を書いたときは
編集者に掛け合って「精神異常者」で通させていただいた

註2:VCS3
ごく初期に作られたシンセサイザーの一種
テルミンやメロトロン同様に現在ではヴィンテージな楽器としてマニアック
な需要がある

by obinborn | 2011-04-19 01:45 | one day i walk | Comments(2)  

Commented by Almost Prayed at 2011-04-20 19:43 x
こんな記事をインターネット上で見かけました。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20110420-00000010-maip-soci

都市ガスもようやく復旧し、概ね並ばずに買い物もできるようになって、表面上は平穏な生活に戻ったような感じにも見えます。しかし、自分の住む地域から数kmも移動してみれば、そこには一面が瓦礫に覆われた凄惨な景観が広がっていて、避難生活を送っている人々が大勢いて、まだまだ復興への道程は長いと思えるわけですが、日々の生活の中でそういうことを忘れてしまいそうになるのも確かです。無論、復興が一刻も早く進んでほしいことを願ってやみませんが、復興にまつわる明の部分が強調されるあまり、災害における弱者のことが世論の陰に追いやられないように、常に心に留めておきたいものです。

ところで、ポリティカル・コレクトネスに基づく「配慮」というか、「言葉狩り」ときたら・・・ 簡単に言えば、差別言辞と実際の差別は似ているようで異なるということを理解していない人々が多過ぎるということだと思えます。原曲題の直訳なのですから、「21世紀の精神異常者」で何が悪いのか・・・
Commented by obinborn at 2011-04-20 20:33
仙台の方も大変だったみたいですね お見舞い申し上げます
避難所があって食料や寝袋が供給され今後仮設住宅に入れる
としても生き甲斐の喪失は大きなダメージとなり精神を少しずつ
蝕んでいくかもしれません そのことを思うと途方に暮れてしまいます
「神は私たちになんと残酷な試練を与えたのでしょう」 被災地の方
の一言が忘れられません
ことさら恣意的に部分を編集したテレビ映像と実際との落差を
せめて自分は常に想像していたいと思っています
あと言葉狩りに関してはかつて友部正人さんの「びっこのピー」
という歌が内容ではなくただ”びっこ”という言葉だけで放送禁止
になったことも付記しておきたいです
”めくら”が駄目で”視覚障害”ならオッケーというのも何だか
すごく窮屈で不自然な印象を受けてしまいます

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