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中村とうようさんのこと その4

85年の8月12日に起きた日航機の墜落事故のことは今でも鮮明に覚えている

その当日 当時まだ27歳だったぼくは彼女と浦安にあるディスニーランドに初めて行き
その帰り道に事故を知った
テレビの画面はずっと死亡者のテロップを流していた
銭湯の女番頭さんはあらまあ、とただため息をついていた

それが御巣鷹山の悲劇と呼ばれる事故だった
死亡者は520人
この事故を題材にした吉岡忍『墜落の夏』 山崎豊子『沈まぬ太陽』あるいは
横山秀夫『クライマーズ・ハイ』といったノン(ハーフ)フィクション作品はよく知られる
ところでもあろう

中村とうようさんも『とうようズ・トーク』で牙を剥いた
ただし その矢はこともあろうに被害者の家族に向けてのものだった
内容は遺族の感情を逆撫でしかねないものであり
当時の編集部から自主規制を受けたことを とうようさん自身が告白している

死亡者のなかにはディズニーランドの観光帰りに羽田から大阪行きの日航ジャンボへと
搭乗した家族も多く それに対し とうようさんは子供を飛行機に乗せるような贅沢それ
自体にも落ち度はなかったのか?  贅沢が悲劇を招いたのでは? と主張したのだった

ぼくの父親もそうだったが 第二次世界大戦を日本で身を以て体験したとうようさんに
とって 旅行帰りにわずか東京から大阪に戻るために飛行機に乗るという感覚自体が
馴染めないものだったのかもしれない

今から思えば バブルに浮かれつつあった当時の日本で とうようさんが至極真っ当な
見解を示し 警告を発していたことがよく解る

盲目的な安全神話とは 実は企業側の論理によっていくらでも捏造され補強され
流布されていく
ぼくたちはそうした苦々しい事実を 撒かれた放射能とともにようやく噛み締めている
ところだ

それにしても21世紀の11年めの夏が こんな風に訪れるとは

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ビーチ・ボーイズの67年作『surf's up』は崩壊感に満ちたダークな作品だ
「ぼくが死ぬまで」からアルバム表題曲に引き継がれる終盤はまるで音による黙示録
のよう これほど”終わり”を感じさせる音楽もない

by obinborn | 2011-08-13 22:58 | one day i walk | Comments(0)  

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