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ロング・インタヴュー、中村まり(中巻)

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1. The Cuckoo Bird (traditional)
2. Lonesome for You (A.P.Carter)
3. Dueling Banjos (Arthur Smith & Don Reno)
4. I Am a Man of Constant Sorrow (traditional)
5. Going Down the Road Feeling Bad (traditional)
6. Rocky Raccoon (John Lennon & Paul McCartney)
7. John Henry (traditional / words adapted from traditional and Leslie Riddle)
8. Weissenalone (Gen Tamura)
9. Midnight Rider (Gregg Allman & Robert Payne)
10. Bound to Fall (Michael Brewer & Tom Mastin)
11. Ghosts (Albert Ayler)
12. Last Kind Words (Geeshie Wiley)
13. Viola Lee Blues (Noah Lewis)
14. Fishin' Blues (Henry Thomas)
15. Silo (Sakurai, Yoshiki)
16. Heart Like a Wheel (Anna McGarrigle)
17. Ghost Town Dance (Mari Nakamura & Sakurai, Yoshiki)
18. Some Happy Day (Charley Patton)
19. Hard Travelin' (Woody Guthrie)

ーーところで、この『Folklore Session』は収録曲が全19曲とかなり多いですね。
LPレコードの感覚で言わせて頂くと、これはもう完全に二枚組、
ダブル・アルバムの構成であり、壮大な音楽パノラマといった印象さえ受
けます。曲の配列にしても起承転結の付け方にしても苦労されたと思いま
すが、その点はいかがでしょうか。


「もう少しコンパクトに曲を絞り込むようなやり方もあったと思うのですが、私が持ち込んだ歌でも桜井さんが提案された曲でも、この歌は生かしてあの曲は削ってというような選択をしたくなくなったこともありまして。せっかくだから持ち寄ったすべての曲を収録してしまおうということになりました(笑)。選曲を厳選するとどうしてもアルバムの幅が限定されて、収録もより神経質になってしまう側面もあったかと思いますので、今回のように、様々な時代の様々な曲を一緒くたにしてアルバムに詰め込んだことはこのアルバムの特徴になったとも思います。また、曲が多く、「Weissenalone」のようなソロのとても短い曲から全員で一発録音した「Hard Travelin’」の様な曲まで、様々な楽器編成の曲がちりばめられていたことも、演奏する上で良い気分転換になりましたね」

ーーそれは健康的ですね(笑)。ちなみに二枚組の名作と呼ばれるアルバ
ムの曲数を今回少し調べてみたんです。まずビートルズの『ホワイト・ア
ルバム』が全部で30曲。ローリング・ストーンズの『メイン・ストリート
のならず者』が18曲。そしてスティーヴン・スティルスの『マナサス』が
22曲でした。


「なるほど~。私たちもこの『Folklore Session』はとにかく曲が多いので、やはり曲の並びや起承転結には気を配りました。初めはいっそのこと二枚組という案も出たのですが、案外収録時間が一枚に収まることもあり、1枚になりました。そうですね、これはアナログ盤を聴き慣れている桜井さんのアイデアで、A面とB面のように間で一旦分けて流れを作ることになりました。
具体的にはまず初めの2曲は自己紹介的な意味も含めつつ、アルバムの入り口として楽器の編成も含めてロンサム・ストリングスと私の関係性を誰にでも入っていきやすいように心掛けました。3曲目からいよいよロンサム・ストリングスの世界観の幕開け、前半から中盤にかけてはフォーキーな側面を出しつつ、中盤の「Midnight Rider」、「Bound  To Fall」や、B面の頭から後半に向かっては、より濃い世界に入っていくようにイメージしています」

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☆☆☆受け取るばかりではなく、与えたい

ーーCDの構成をそのままライヴ・ステージでの流れに置き換えていくと、
「Weissenalone」が田村玄一さん、アルバート・アイラーの「Ghosts」が
松永孝義さん、「Silo」が桜井さんの紹介のような気がします。原さとし
さんのイントロデュースは、彼がリード・ヴォーカルを取る「Midnight Rider」で。この曲では中村さんはバックに回っている。そうした小技もアルバム全体のいいアクセントになっていますね。

「はい。あとは私と桜井さんの共作「Ghost Town Dance」が今回は唯一の歌物のオリジナル曲なのですが、あの曲もアルバム全体のなかで特殊な立ち位置になっていると思います」

ーーその「Ghost Town Dance」についてお伺いします。中村さんは新世界
でのお披露目ライヴの際、『廃墟の街の歌です』と紹介されていましたが、
それを聞いて3月に起きた震災のその後の世界を何となく想像したお客さん
がいらっしゃったかもしれません。自分の書いた歌が好むと好まざると作者
の意図を離れて聞き手それぞれのものになっていくのは往々にしてあること
ですが、ソングライターとして歌の持つそうした側面をどう考えていらっし
ゃいますか。


「お恥ずかしいことに、小尾さんがおっしゃられたような解釈があることを、
私は今初めて気が付かされました。もしも私の「Ghost Town Dance」を聞
いてマイナスのイメージを抱いてしまう方がいらっしゃるのであれば、申し訳ないと思います。それでもこうやって真剣に私の歌を聞いてくださる方々がいらっしゃるのですから、曲の解釈とはまさに聞き手の自由なのだと私も
思います。私のほうからも自分の曲をこういう解釈で聞いて欲しいという言う気持ちはありません。ただ今回この曲の作詞を担当した立場であえて言わせて頂けるのであれば、あの曲では天災で故郷を追われた人々についての歌ではなく、時代が変わりかつて繁栄した街を自ら離れていった人たちをモチーフにロマンチックな気分も含めて描いています。もう少しはっきり言うと、この歌はロンサム・ストリングスと私のちょっとした物語になっています。桜井さんから曲のデモ音源が送られてきたときに感じた、フィドル・チューンのような侘しさと楽しさが混ざり合ったようなメロディの印象をゴースト・タウンという比喩的なイメージで、そのまま歌詞にしてみたつもりです。考えてみればすごく大きな時間の流れのなかで偶然にも私たちは出会い、今こうして一緒に楽器を奏でている。そしてそれは音楽的な歴史の歩みの中ではちっぽけな出来事かもしれないけれど、いつか長い歳月が経ってから誰かが気が付いてくれたらいいな、という淡い期待もあります。恐らくこのような”Folklore Session”は過去にも他の場所にもたくさんあり、これからも星の数ほど行われていくのだと思いますが、その中で自分たちがトラディショナル・ナンバーを演奏して過去から受け取るだけではなく、先人たちと同じように何かを未来に投じたいという想いなのでしょう。この「Ghost Town Dance」を他の古いトラディショナルカヴァー曲と同軸でアルバムに収録することを考えたときに、私たちもまた伝承し、生み出し、残していくという役割を果たしていることを思い出し、この曲を、過去と現代を直接的に結びつけるような、意義深い特別なものにしたいと思って歌詞を書きました」

ーーぼくのほうこそ、中村さんたちのそうした想いにはまったく気が付きま
せんでした。でもこのCDが100年後、200年後にタイム・カプセルから開け
られて、未来の子供たちが「Ghost Town Dance」を再び歌ってくれたら、
 本当に素晴らしいことですね。


「そうですね。もしそんなことが起きたら本当に嬉しいです!」


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(下巻に続く)

by obinborn | 2011-09-16 11:51 | インタヴュー取材 | Comments(0)  

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