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10月8日

高円寺のJIROKICHIにて東京ローカル・ホンクを

今日のホンクは京都からやってきた男女混成バンドのパイレーツ・カヌーとの
対バンであり この初々しいブルーグラス・チームを心から歓迎しようという
気持ちがしっかりと伝わってきた

パイレーツ・カヌーの演奏が始まるまえに まず挨拶代わりにホンクが「サンダル
鳴らしの名人」を一曲歌ってパイレーツ・カヌーを紹介するという鯔背(いなせ)
な演出 まずこれが効いた ホンク・ファンにはアンコールでのアカペラ曲として
親しまれてきたこの「サンダル」を冒頭に持ってくるという意外性だったが
それがアクースティック編成のカヌーたちの音楽へと自然に連なっていく

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カヌーの河野沙羅は自分が以前から尊敬していた東京ローカル・ホンクとともに
今夜演奏出来ることが信じられないといった感じのMCをしたが それがけっして
社交辞令でないことは客席へも確実に伝わっていったと思う 肝心の演奏にしても
フィドル/マンドリン/リゾネイター(ドブロ)をしなやかに弾ませながら グラス
だけではなくアイリッシュ・チューンへと越境したり変拍子を交えたりと緩急の
付け方も悪くない

第二部に登場したホンクは短いセットながら 今日はとくに完璧な演奏であり
ソング・オリエンテッドなロック・カルテットの理想を描くような瞬間が何度も
訪れた 能天気な「おにぎりソング」で始まりラテン・ビートに彩られた「引っ越
し娘」へと続いた平和な光景が 次に演奏された「目と手」の”平和”のメタファー
に富んだリリックへと溶けていった序盤の展開からして思わず息を飲まずにはいられ
なかったし 次の「虫電車」(ぼくには夏の青梅線のイメージが重なります)が
子供の頃の記憶だとすれば 次の「昼休み」はさながら「虫電車」に揺られていた
かつての少年が大人になり困難で行き場がない現実に直面している風でもある

そうやって彼らの楽曲は聞き手に”自分”を優しく諭させる
だからこそ「昼休み」での田中クニオのリム・ショットの繰り返しが ぼくには
規則正しい時計のようにも 自分の心臓の音のようにも聞こえてならなかったのである

もしスライ・ストーンが日本で暮らしていたらこんな演奏をしていたかもしれない
社会派(およびノンポリ)ファンク曲「社会のワレメちゃん」の演奏が
逞しく後半を束ね そのリズミックな趣きがハイ・サウンドとデュアン・エディとの
出会いともいうべきミディアム・スロー曲「はじまりのうた」へと収束していく

終演後の木下弦二はパイレーツ・カヌーとともに「Bright Side Of The Road」を
歌い終わったあとの高揚感に満たさせていた
そう ヴァン・モリソンが79年に発表した『Into The Music』のオープニングを
飾った曲なのだが 弦二はいささか興奮状態でそのリリックを反芻する 「陽のあ
あたる場所でぼくたちはまた本当の恋人たちへと戻ろうよ」そんな肯定的な歌である

客椅子に座った弦二がファンたちとその歌詞を繰り返し噛み締めている
きっと新しいアルバムを完成させたばかりの達成感もあったのだろうが
この人のこういう素直さは いつも始まったばかりの音楽のようだ

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by obinborn | 2011-09-15 21:47 | one day i walk | Comments(2)  

Commented by iosmile at 2011-10-09 23:21
オビさん、こんばんは。
昨夜のホンク@JIROKICHIでご一緒させていただきましたioです。
楽しいひと時をありがとうございました。
百聞は一見にしかず!という言葉がぴったりの、見応えのあるステージでしたね。
オビさんのおっしゃるライブ終了後の風景は、まさにホンクメンの魅力を更に表わしているなあ・・・!と思いました。
次回のライブも楽しみです。またお会いできるのを楽しみにしております。
Commented by obinborn at 2011-10-10 03:00
iosmileさん、ご訪問ありがとうございます。
互いに何十回も観ているホンクですが、毎回違う発見や新鮮さがある
ところに彼らの懐の深さを感じますね〜。来月発売のニュー・アルバ
ムで彼らのセット・リストがどう変わっていくのかも興味シンシンで
すし、年末恒例の@渋谷B.Y.Gワンマンも決まったみたいでこれまた
楽しみです。おっしゃる通りライヴ終了後のオーディエンスたちとの
交流会^0^も彼らの魅力ですね。単なる音が聞き手の頭のなかを
通ってから初めて音楽になるといった旨を語っていたゲンジさんの姿
も印象に残るものでした。

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