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1月7日

かつてブラインド・ウィリー・マクテルの復刻LPを買おうと思った動機は、
多くのロック・ファンがそうであったように、オールマンズがマクテルの
「ステイツボロ・ブルーズ」を取り上げていたからだった。オールマン兄弟
は実際はタージ・マハール版の同曲に触発されたらしいが、どういう経緯で
あれ、若かりし頃の私はある日の午後、吉祥寺の芽瑠璃堂でマクテルの盤を
購入したのだった。

原曲である「ステイツボロ」とオールマンズの演奏とを結びつけるものは殆ど
なかった。私はせっかく購入したアルバムをあっけなく閉まってしまった。
幾つかのラグ曲が例えばロバート・ジョンソン「レッドホット」のように軽快
だったことを除けば、背負うべき時代が違い過ぎるように思えた。

それから30数年経った。
私の耳や生活態度が、かつては恐らく幼稚過ぎたのだろう。

久し振りに棚から引っ張り出してきたマクテルの復刻LPが、今の私には突然
愛おしくなってきたのである。グリール・マーカスが言うように、マクテルは
街頭で人々が金を払い歌わせたがるものなら、宗教歌から猥褻な曲まで何でも
歌った。1920年代や30年代のジョージア州でマクテルが行っていたのは、
つまりそういうことであり、これもまたマーカスが言う通り、ディランが「ブラ
インド・ウィリー・マクテル」で描き出した最後の審判の日に抵抗するといった
内容とは不釣り合いなほど、その語り口は軽く、どこまでも夢想的だ。

1928年のステイツボロの町や暮らしに、私はただ思いを馳せるだけである。

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by obinborn | 2012-01-08 00:32 | blues with me | Comments(0)  

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