1月15日
会場に流れ、それを合図にメンバーが登場するという粋なオープニングで始まったタ
マコウォルズ、およそ半年ぶりのワンマン・ライヴを吉祥寺のマンダラ2で堪能した。
6人編成という大所帯からなるこのバンドは豪放なノリ、凹凸感溢れる演奏で熱心な
ファンがいるが、この日は第二部にキリングフロアのピート福島がサキソフォーンで
合流し、さながら野生の馬たちが大地に解き放たれたような逞しさが、後半になれば
なるほど大胆に生命を宿していった。一曲のアウトロが間髪を入れずにすぐさま次の
曲のイントロになって繋がっていくナチュラルさにも、このバンドの底力が伺える。
フロントに立つ西池崇は「もうすぐ44歳になります」という旨のMCをしていたが、
ぼくより一世代若い彼らがこういう横揺れビートの音楽をとことん追求している姿は
嬉しくまた頼もしい。ギター×2、ドラムス(パーカッション)×2という編成から、
かつてのマナサスやリトル・フィートあるいはオールマン・ブラザーズ・バンドの姿
を思い起こす方も少なくないだろう。その音楽性は鳥羽修のスライド・ギターに象徴
されるように南部の芳香がたっぷりまぶされているが、何よりも全員が一丸となって
のアンサンブルがとにかく強力だ。曲の大枠だけを決めておいてあとは各プレイヤー
が自在に空間をフロウするような感覚や遊び心には、90年代以降のジャム・シーンの
自由闊達さも追い風となって反映されているのではないだろうか。
とくに第二部ではsugarbeansがニューオーリンズR&B的なピアノ・サウンドを打ち
出したり、終盤には楽器の上に立ち上がり興奮気味にオルガンをロングトーンで盛り
立てるなど、バンド・サウンドはより色彩感を増していったと思う。確かにソウル音
楽の語法も導入されているのだが、河野薫のベースがガチガチのファンク奏法に依る
のではなく、柔らかく輪郭を描いていく種類のものであることも大きなポイントだろ
う。ニーナ・シモンの「I Wish I Knew How It Would Feel To Be Free」での膨らみの
あるアンサンブルなどに、このベーシストの見識が静かに凝縮されていた。何部の何
曲目だったかはもう覚えていないが、「からまわる男」で見せた高橋結子のティンバ
レスさばきはもっと聞いていたいと思わせるものだったし、終盤の「ビュリフォー」
(Beautiful Era)のブレイク部で見せた中原由貴のフィル・インは、虹のような瞬間
をきらめかせながら筆者の胸を満たした。
メンバーそれぞれが腕達者な故、各自のソロ活動やセッション・ワークに忙しく、こ
うして集まりライヴを実践する機会はどうしても限られてしまうのだろうが、それで
も全員がタマコウォルズというグループに大きな価値を見いだしている様子は確実に
伝わってきた。終演後もなかなか立ち去り難く、もう一杯飲もうとカウンターに立っ
ていたら、背中越しに中原由貴が声を掛けてきた。振り向くとそこには達成感のある
笑みがあった。
by obinborn | 2012-01-16 12:39 | タマコの人々 | Comments(3)
タマコウォルズ、いいバンドですね。メドレーのようにテンポよく畳み掛けるような曲の流れが気持ちよかったです。