7月10日
かく時期なので効果てきめんなのだ)を終えたあと、グリース・バンドを酒の
友に。
元々はジョー・コッカーのバック・バンドとして生まれたグリース・バンドは、
その泥臭い演奏で評判となった人たちだ。69年の夏にはかのウッドストック・
フェスティヴァルにもジョーとともに出演した。その後ジョーから独立した彼ら
は71年に単独アルバムをリリース。これが英国スワンプの地下水脈となり、
ロニー・レイン、キャロル・グライムス、フランキー・ミラーなどに影響を与え
ていく。
私自身は彼らのセカンド(というよりは再結成アルバム)となる75年の"Amazin
g Grease"(Charly)を最初に聞いたという音楽遍歴を持つ。そのリユニオン作の
冒頭に収められていたボブ・ディラン作「New Morning」のカッコ良さにまずは
夢中になったのだ。その”新しい朝”は何も公明正大にブラン・ニュー・ディを
誓ったりするものではなく、どちらかというと二日酔いの後にアパートの小さな窓
から差し込んでくる微かな陽射しにも近く、昨日の続きのように今日があるとでも
言いたげな連なりも、いちいち腑に落ちるものだった。
私はそれからファースト・アルバムへと逆戻りする。
間を活かしたレイジーなヘンリー・マックロウの歌いっぷりといい、ニール・ハバー
ドのオブリといい、ブルース・ローランドのまるで古代から埃が溜まっているのでは
ないかと思わせるバスドラやスネアといい、それらのいかめしい骨董品のような音楽
はいつしか私の伴侶となっていくのだった。
音楽を聞く基準。そんな風に切り出せば大袈裟になってしまうだろうが、私にとって
いつしかグリース・バンドはそんな物差しとなっていったのだと思う。昨日のブルー
ズは今日も抱えたまま。まったく違う明日が突然変異のように訪れるわけではない。
おぼろげながらもそんな日々を意識するようになった私には、グリース・バンドの
音楽から聞こえてくる”暮らし”が、もっともらしい「明日を生きよう」的な言説よ
りもずっと親しげに聞こえてきた。語りかけてきた。
そんな意味でこの”Grease Band"は、まるで私のホームのようなアルバムだと思う。
夏ならではの長い陽射しがやっと終わる。入浴し終えた私は今日のビールを飲む。
そして今夜もまたグリース・バンドを聞くのだった。
by obinborn | 2012-07-10 23:45 | one day i walk | Comments(2)
いつか呑みながら、Grease BandやHenryを語り合いたいモノです(笑)。
それにしても、いきなりHenry '76年ライヴ映像(存在だけは知ってましたがずっと未見でした)がコンプリートでYou Tubeにアップされているのに驚愕!ホンマ最高過ぎます~!!