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媚びずに、堂々と。

 惚れ惚れとしながら「To Ramona」を、
「Key To The Highway」を、「Hard Tr
avelin'」を聞いていた。以前にも増して力
強さに満ちた中村まりの歌がそこにあった。

 4日に青山CAYで行われた彼女のライヴ
は相方に過去数回の共演歴がある高田漣を
伴ったものであり、高田は通常のエレクト
リック・ギターやリゾネイターにスライド
奏法を用いながら、中村の歌を見事なまで
にサポートした。音楽的なバックグラウン
ドがある程度共通する二人だけに、ステー
ジでのちょっとしたやりとりにもナチュラ
ルな風通しの良さを感じる。

 全体の構成はまず中村がソロで5曲歌い、
それから高田やこの日のゲストである桜井
芳樹と中森泰弘が曲によって加わっていっ
たり、逆に第二部は高田のソロ・セットか
ら始まるなど、それぞれの見せ場を起伏豊
かに、コントラストも鮮やかに示していく。
とくに高田がドク・ワトソンのヴァージョ
ンで親しんだというジミー・ロジャーズの
「Miss The Mississipi And You」や、朴訥
とした語り口が高田の父親のことを思い起
こさせる「きふきだけ」は、シンプルな音
数ゆえに伝わるものがあった。

 この日演奏されたカヴァー曲のなかで最
も意外だったのはハリケーン・スミスの「
Oh Babe」だろうか。かつて日本でもシン
グル盤が出たこともある英国ミュージシャ
ン(実はレコーディング・エンジニア)の
作品だが、原曲の情緒をもう少し軽快でイ
ン・テンポなギター曲へとリアレンジした
演奏は、ひょっとしてこの夜のハイライト
だったかもしれない。またミシシッピ・ジ
ョン・ハートの「Pay Day」では、ハート
を師と仰ぐ中村だけに、そのブルージーな
フィンガー・ピッキングが深く染み込むと
いった塩梅だ。

 そう言えば中村まりはこの日、筆者にと
ては初めての「Through My Heart Again」
という新曲を披露したり、過去3枚のソロ
作には収録されていない比較的新しい「W
hen The Day Is Over」や「Hold My Litt
le Hand」も積極的にソロ・セットに組み
込む意欲を伺わせた。わけても新たな名曲
となりつつある「Still In The Sun」の、
形にならないものをそっと見つめているよ
うな柔らかい響きは心を捉えて離さない。

 「自分に出来ることを少しずつ広げなが
らやってきました。そんな私の歌を聞いて
くださる方々が案外いらっしゃるんだなと
いうのはすごく嬉しいことです」以前およ
そそんなことを語ってくれた中村だが、こ
うしたケレン味のなさがまた彼女の魅力だ
と思う。媚びずに、時流に乗っからずに、
堂々と。そして静かな意志を秘めながら。

 中村まりのそんな歌の数々を、今年はど
うやらあと一回ほどライヴで体験出来そう
だ。

媚びずに、堂々と。_e0199046_1464216.jpg

by obinborn | 2012-11-05 01:47 | 中村まり | Comments(0)  

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