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UK BLAK

勤め人をしていた頃は年末年始の休暇を
利用して、よくロンドンへ遊びに行った
ものだった。最初に訪れたのは確か90年
頃のこと。昼は中古レコード漁り、夜は
パブ・ミュージックという塩梅にすっか
り居心地良くなってしまい、以降計10回
ほど彼の地に舞い降りることとなった。

最初のうちはいわゆる観光地名所も観て
回ったのだが、それでは飽き足らずにや
がてジャマイカ人のコミュニティがある
南ロンドンのブリクストン地区に通うよ
うになった。ストリートの端々から流れ
てくる幾多のレゲエ音楽を肌で感じるい
い機会でもあった。そこにユナイテッド
・キングダムの血塗られた歴史を感じ、
また音楽というカルチャーの生命力を目
の当たりにしたのは、ことさら大きな体
験となった。ぼくはと言えばブラウン・
シュガー~ソウル2ソウル出身のキャロ
ン・ウィラーが、果たして一体どういう
歴史を背負ってきたのか、そういったこ
とにやっと思い至ったくらいだ。これば
っかりは家でレコードを聞いているだけ
ではけっして得られない体験だった。

ブラウン・シュガー時代に「私の彼氏は
ドレッドヘアなの」と無邪気なラヴァー
ズ・ロックに乗せていた少女が、やがて
ソロ・アーティストとして独立し、「私
はイギリス育ちのブラック・ピープルな
の」と歌う。その逞しさにキャロンの個
人史が、彼女を翻弄したであろう歴史が
鮮やかに凝縮されている。

冬になるとレゲエ・ミュージックを思い
起こすのは、凍えたブリクストンの町を
思い起こすからだ。ジャマイカという故
郷から遥か離れた人々の息遣いが伝わる
からだ。そして音楽というカルチャーが
けっして純粋培養的なものではなく、人
種の交差点や相互影響から生まれてくる
ものだと、他ならぬぼく自身が信じてい
るからだ。

今夜のブリンクストンもまた凍て付いて
いるのだろうか。

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by obinborn | 2012-12-28 18:59 | one day i walk | Comments(0)  

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