1975年のエリック・クラプトン
ったけれど、70年代最後のアルバム『Backless』の頃ま
で、ぼくはエリック・クラプトンのことが大好きだった。
背伸びして購入したジョン・メイオールとの作品も大人に
なれた気がしたし、クリームは高校時代の必須科目のよう
なものだった。そしてあの『レイラ』はぼくを南部の土地
へと誘ってくれた。そして『461』の淡い光のような優し
さ。
あの頃はクラプトンを始め、デイヴ・メイソンやスティー
ヴ・ウィンウッドといったイギリス人たちが何故母国を離
れアメリカへと渡るのかが解らなかったけれど、きっと今
にして思えば自分にないものを追い求めての旅だったんだ
ろうな。エリック・バードンやヴァン・モリソンといった
人達も渡米して新境地を求めた。そんな風向きが確かにあ
った。誰が言い始めたという訳ではあるまい。人々はある
日、居心地の良い部屋を離れ、窓から見える景色に別れを
告げる。
エリックの75年作『There's One In Every Clowd』を聞
いていると、そこら辺のことがよく解る。ロケーションと
して選ばれたのはジャマイカはキングストンのダイナミッ
ク・サウンド・スタジオだ。ジャマイカならではの気怠い
空気が物憂げなブルーズに馴染んでいる。そんな感じかな。
とくに好きになったのはBetter Make It Through Today。
消え行く一日を心から慈しんでいるような響きが胸を打つ。
エリックのブルーズがたとえブラック・ピープルから支持
されなくともいいではないか。出自を変えることは出来な
いけれど、実母に捨てられた痛々しい自己遍歴があるのな
ら、それはきっとエリックのブルーズとして育っていくこ
とだろう。それはきっと彼自身の歌として羽根を伸ばして
いくことだろう。人々の営みを後押しするような歌へと姿
を変えながら微笑んでゆくことだろう。
ベランダに出て夜空を見上げてみると、満月にちょっと欠
けるくらいの月がぼくを見下ろしていた。
by obinborn | 2014-05-11 20:17 | one day i walk | Comments(5)
あのB面の流れはとくに素晴しいです!