人気ブログランキング | 話題のタグを見る

素晴しかった双六亭のライブ

それなりの荷物は背負っているけれど、運び切れないほどでは
ない。むしろ足回りは軽やかなくらいだし、まず自分が道に立
ちながら歩を進めていくことが大事なんだ。そんな感想が浮か
んでくるほど素晴しい双六亭の演奏を6日は三鷹のバイユーゲイ
トにて。一見普通のロック・カルテット編成(ギター2本にリ
ズム隊)だが、何とも埃っぽい情感が漂う骨太なプレイがどこ
までも続いていった。影響された音楽は年月の分だけある。で
も物真似でないことをやっていこう。そんな清々しさが先に立
つ。高田渡の「値上げ」やディランのOPEN THE DOOR、RIC
HARDもオリジナル・ソングの数々に混ざりながら歌われたが、
歌の背景や歴史に埋没しない確かさが際立つ。

終演後ギターとヴォーカルのニシイケタカシと話す機会を得た
が、多くのミュージシャンがそうであるように朴訥とした調子
で彼は語り始めた。「アッキー(鈴木晶久)とオレのギター・
パートはとくに決めごとはないんです。最後にオレの歌に戻っ
てくれば、まあそれがエンディングかな」「それより大事なの
はオレたちのバンドは常に”対話”しながら音を奏でているとい
うことですね。オレなんかそんなに上手くもないから、本当に
リズム・セクションの上に乗っかっているという感じです…..」
「以前デヴィッド・ボウイが言っていたんですけど、音楽とい
う背景に負けたくないっていうか、あくまで演奏しているのは
オレたちなんです」「ほら、オビさん、車を運転するとかハン
ドルを握っているのはあくまでオレたちじゃないですか。そん
な車に乗っていれば、窓辺に鹿も見えてくるんです(笑)オレ
らはそういうことを音楽で会話を楽しみながらやりたいんです」

もう何も言うことはない。彼ら4人はそういう車に乗りながら
旅を続ける。アッキーが持ち込んだお弁当が美味しそうなら、
その卵焼きにニシイケが箸を伸ばす。そんなやり取りを河野薫
が微笑みながら見ている。後部座席からは中原由貴が温かいお
茶を差し出しつつ、この旅は長くなるかなあ〜と漠然と感じな
がら明日を夢見る。きっとそんなことだ。ぼくも彼らと一緒に
なって鹿やライオンの姿を確かめたい。なだらかな河口があれ
ば車を止めて鯡や鱒を釣るのもいいだろう。そんな気持ちさえ
双六亭の音楽は今日も運び込んできてくれた。

*写真は時計回りに中原由貴さん、筆者、ニシイケタカシさん、
河野薫さん、アッキーさん

素晴しかった双六亭のライブ_e0199046_1491460.jpg

by obinborn | 2014-09-07 01:56 | タマコの人々 | Comments(0)  

<< 双六亭、再び ジム・プルトと重ねた歳月 >>