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『歌追い人たちのアメリカ』

昨年の夏、芽瑠璃堂〜クリンク・レコードの長野和夫さんに
お会いした時に彼が言っていたのは「CDと同じようにぼくは
色々な書籍も出したいんです。ぼく自身音楽を聞きながら本
を読むことが好きだから」ということだった。それから半年
経って『歌追い人たちのアメリカ』が出版された。元ロック
喫茶の店主であった山瀬洋一郎さんが発案され、音楽ライタ
ーの小西勝さんが監修された本だ。内容は移ろいがちな音楽
シーンとは距離を置きながら、しっかりと自分の歌を温めて
いったシンガー・ソングライターの紹介であり、それらに対
する書き手たちの思いだ。とくにこの書ではインディ系のあ
まり知られていない音楽家たちに焦点が当てられている。実
際ここで触れられているアルバムの半数もぼくは持っていな
いくらいだ。そういう意味ではかなりマニアックでコアな書
籍なのだろうが、何も心配することはない。その前段階のコ
ラムとして70年代のアメリカやカナダのベイシックな重要作
も語られている。そこから出発して日本では殆ど知られてい
ない歌い手たちにスポットライトを当てたところに『歌追い
人たち〜』の主眼があると思う。

昨年の秋、山瀬さんにお会いした時に彼は「シロウトがこん
なことに手を出してすみません」と謙遜されていたけれど、
ぼくはプロであろうがアマチュアであろうが書きたいことが
あればどんどん本を出して欲しいと願っている。野球でもサ
ッカーでもラグビーでもアマがプロとの試合に臨んでプロよ
り好成績を上げることと同じだ。むろんここに書かれた文章
はプロのそれほど洗練されているわけではないが、そのぶん
朴訥とした、あるいはゴリゴリとした気持ちが伝わってくる。
あまたのシンガー・ソングライターたちが永遠に彼や彼女ら
のファースト・アルバムを超えられないようなもの、といっ
たら言い過ぎであろうか。かつて西荻窪にあったロック喫茶
に人々が集い、時間を忘れて音楽に聞き入り、いつの間にか
会話をし始める…..。この本のページをめくっていると、ぼ
くもまた彼らと一緒にビールを飲みながら音楽を語りたくな
ってくる。

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by obinborn | 2015-02-22 14:20 | one day i walk | Comments(4)  

Commented by kiku at 2015-02-22 15:24 x
小尾さんこんにちは。『歌追い人たちのアメリカ』、山瀬洋一郎さんが発案!!ということで早速注文しました。これは楽しみな本です。山瀬さんにはまたお会いしたいです。
Commented by obinborn at 2015-02-22 16:58
キクちゃんありがとうございます。山瀬さんも喜ぶでしょう!
そっちはまだ大雪かな?
Commented by kiku at 2015-02-26 14:14 x
小尾さんこんにちは。本が届いたので追記します。
これはいい本ですね。小尾さんが帯に「まるで音楽仲間たちと時間を忘れて会話しているような楽しさです。」と書いていますが、全くその通りの本だと思いました。ジャケットの写真を見ているだけで、マニアックなロックバーに行っているような気分になりますね。
こちらは雪もだいぶ少なくなり、春が近いのかなーと感じています。東京は暖かくなってきましたか?体調に気をつけてお過ごし下さい。
Commented by obinborn at 2015-02-26 15:49
こっちも少しずつ温かくなってきました。本が届いたようで良かったです。ぼくも聞いたことがないアルバムが多いのですが、
いつまでも読んでいたくなる楽しい本ですね。

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