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アーロ・ガスリー『最後のブルックリン・カウボーイズ』

江古田のおと虫でアーロ・ガスリー『最後のブルックリン・
カウボーイ』を買ったのは、ぼくがまだ20代前半の頃だった。
フィドルによるアイリッシュ・チューンに始まり、アーロの
父親が書いたRamblin' Roundで終わるこのアルバムはまるで
各駅停車の旅のようであり、一曲一曲が止まった駅から見渡
すスケッチだった。「都会のネオンには疲れてしまった/大き
さにも景観にもくたびれてしまった/今思い出すのは故郷にあ
った川ぼとりの家なのさ」という歌詞で始まるMiss the Missi
ssippi and Youにしても、ジミー・ロジャーズを模したヨーデ
ルが、歌詞以上にホームタウンを失ってしまった男の寄る辺
のなさを秘めやかに伝えている。

ダストボウルが舞うオクラホマからロスアンジェルスへの旅に
実感がないにしても、あなたが自分の育った町を置き去りにし
たままの漂流者だったとしたら、きっとアーロの気持に寄り添
うことが出来るだろう。ぼくがこの前帰省した町にはかつての
賑わいは皆無だった。複合型のレジャー施設は閉ざされ、その
跡地には鳥の巣が出来ていた。地元で名うてだった歯科医の家
は息子が継いでいた。公園にあった小動物園は今や見る影もな
い。噴水だけが上下運動をマニュアルのように反復していた。

アーロはCowboy Songでこんな風に歌い飛ばしている「今朝
ひとりぽっちで目覚めたよ/一日のすべてを自分のために費や
してきたはずなのに/いろいろな人々がやって来ては別れを告
げていく/そしてぼくは古いカウボーイの懐かしい歌を聞くの
さ/何が正しいのかな?それともどこかのパーツが間違ってい
たのかな?/ぼくが今一番聞きたいのはカウボーイたちが歌っ
たあの懐かしい歌」

アーロ・ガスリー『最後のブルックリン・カウボーイズ』_e0199046_20523891.jpg

by obinborn | 2015-10-31 20:55 | one day i walk | Comments(0)  

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