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3月3日の東京ローカル・ホンク

バンド・サウンドの贅を尽くしたような東京ローカル・ホン
クのライブを3日は高円寺のJIROKICHIにて。木下弦二のソ
ロ弾き語りによる「生きものについて」からまずは始まり、
2曲めの「引っ越し娘」でバンドが合流。さらに「お手手つ
ないで」「虫電車」「お手紙」へと連ねる序盤から、早くも
全開となったホンク・ワールドに酔った。弦二が今月初めて
のソロ・アルバム『natural fool』をリリースするとはいえ、
やはりみんながホンクの四人を待ち焦がれていたのだろう。
平日にもかかわらず満員となった会場の熱気がそれを雄弁に
物語っていた。肩肘張らない歌と演奏。ただそれだけの営為
が音楽としての豊かさをもたらし、歌われる言葉を彩りある
”生きもの”へとトランスフォームしていく。そんなエレメン
トの数々に満たされていた。弦二のソロに収録された「夏み
かん」「夜明けまえ」「遅刻します」といった楽曲も、カル
テット編成で再解釈すればこうなるよ、という驚きがあった。
とくにカットアップの手法で様々な俳句を無造作に並べてい
く「またあおう」が、ホンクならではの柔らかいサウンドス
ケープで描かれていったことに筆者は感じ入った。この曲に
入る時のMCで弦二が「意味が解らない歌詞っていいもので
す」といった旨を語っていたことも腑に落ちた。友部正人の
「解らない言葉で歌ってください」ではないけれども、そこ
からは安っぽい主張や直截的な政治性の数々から迂回してい
く彼らの心映えがはっきり伝わってくる。前身となる”うず
まき”時代を含めれば優に20年を超えるキャリアを誇るホンク。
遥か昔のある日、偶然にも四人の青年が集まり、それぞれの
楽器を奏でていった。いわばゼロの地点からのスタートだ。
その日から辛抱強く丁寧に積み上げられていった言葉と音。
それらの価値を思わずにはいられない。

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by obinborn | 2016-03-04 01:34 | 東京ローカル・ホンク | Comments(0)  

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