4月15日の木下弦二
にて。同店での彼の弾き語りは2ヶ月半ぶりだったが、今回
もまたパラ舗ならではのアット・ホームな雰囲気に包まれた。
発売されたばかりの初ソロ作『natural fool』から「遅刻しま
す」や「夏みかん」、覚和歌子と歌詞を共作した「夜道」を
披露するばかりか、東京ローカル・ホンクのヴァージョンが
すっかり身体に馴染んでいる「お手紙」「昼休み」「ブラッ
ク里帰り」などをソロならではの手触りで奏でていく。ある
いは自作にこだわらず、千昌夫「星影のワルツ」を輪郭のは
っきりした発声でじわりと染み込ませるのも弦二ならでは。
そのひとつひとつに彼がこれまで辿ってきた道のりが反映さ
れ、聞き手たちへと共有されていった。
驚かされたのは新曲「dark matter」のこと。弦二は生まれた
ばかりのこの歌を聴衆の前で試してみたかったのだろう。何
と彼は計3回「dark matter」を取り上げ、解らないことに向
き合っていこうとするメッセージを託していった。熱心なホ
ンク・ファンならご存知のように、あの名曲「みもふたもな
い」にも通じる問いかけや煩悶がそこにはあり、初めて聞い
たにもかかわらず筆者の心を満たした。またこの夜は中盤か
らパラ舗のマスターである藤田洋介をギターに迎え、「ザッ
ト・ラッキー・オールド・サン」や「国境の南」など夕焼け
楽団の曲を計4つとサーヴィスもたっぷり。とくに「国境の
南」でのメキシコ情緒、洋介のランドマークとなる名曲「星
くず」での甘美なフレージングとソロはまさに鳥肌モノだっ
た!
木下弦二の歌、あるいはホンクの含蓄ある演奏を聞き始めて
からもうすぐ10年近くになる。彼らはこれからもけっしてそ
の歩みを止めることはないだろう。雲がどんどん流れてく。
影がだんだん長くなる。
by obinborn | 2016-04-16 02:00 | 東京ローカル・ホンク | Comments(2)