追悼:鈴木カツさん〜今までありがとうございました
鈴木カツさんが亡くなられた。ここ数年は闘病生活を余儀なく
され、ご自宅近くの茅ヶ崎から外に出られることもままならな
くなっていた。ぼくがカツさんと出会ったのは確か95年のこと。
今はもう疎遠になってしまった中山義雄くんと一緒に、築地に
あるカツさんの音楽バー、Any Old Timeに出向いたのが最初だ
ったと記憶する。それからしばらくAnyに通い、親しくさせて
頂いた。
こればかりは正直に告白しなければならないだろう。そうして
仲良くなったカツさんとぼくとの間に亀裂が生じたのは、07年
の7月のことだった。今でもはっきり覚えている。改訂/増補版
として10年ぶりに再刊が叶った拙書『Songs〜70年代アメリカ
ン・ロックの風景』に対して彼が文句を付けたのだった「表紙
のデザインはちゃんと精査したのかい?」「ぼくは今いちだと思
うよ」それがカツさんの言い分だった。その後次第に交際は途切 れていった。いささか心ないdisり合いをソーシャル・ネットで
互いにやり合った。
それでも昨年の12月、体調をかなり崩されているカツさんを
見舞いに行った。彼は茅ヶ崎駅までわざわざぼくを出迎えてく
ださった。握手をした。これまでの非礼をぼくは詫びた。カツ
さんは穏やかに受け止めてくれた。同行して頂いた芽瑠璃堂の
長野和夫さん、イラストレイターの菅野カズシゲさんと、駅ビ
ルの上階にある鮨屋で円を囲み、旧交を温め直した。わざわざ
お土産として茅ヶ崎名物の魚の煮干しと、エディ・ジェファー
ソンのriverside原盤、そして英Mojo誌が企画したボブ・ディラ
ンのトリビュート作『再訪:Blonde On Blonde』を頂いた。カ
ツさんのご著書『ぼくのアメリカ音楽漂流』にサインをしてく
ださった。
こうして95年から22年もの間に、ぼくはどれほどのことを得
たのだろう。一体どれほどのものを失ってしまったのだろう。
焦らない、急がない。答えはぼく自身が出していかなければ。
写真はその時のスナップ。菅野カズシゲさんがシャッターを
押してくださった。鈴木カツさんのご冥福を心からお祈り致
します。カツさん、聴こえていますか?今まで本当にありが
とうございました。
by obinborn | 2017-06-06 18:08 | one day i walk | Comments(0)