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再訪:トラフィック『When The Eagle Flies』

マスル・ショールズの面々とのツアーを73年の4月に終えて
からのトラフィックは、まずスティーヴ・ウィンウッドがレ
ミ・カバカらとアイヤ・ケテなるプロジェクトを組み、アル
バム『THIRD WORLD』を7月にリリース。大胆にアフリカ
音楽にアプローチしたが、一般的にはそれほど認められるこ
となく終わってしまった。大いなる母船であるトラフィック
のほうは、ウィンウッド/キャパルディ/ウッド/リーボップと
いう71年春以降の基本フォーマットを維持しつつも、74年の
5月になるとリーボップが遂に脱退し、新たにロスコー・ジ           ー(b)が加わった。ジャマイカ出身のロスコーはそれまでも          ゴンザレスやココモといった英ソウル/ファンク・バンドに在
籍していたが、ウィンウッドの説得によっていよいよトラフィ
ックへと合流する。

そんな新体制で録音されたトラフィック最後のスタジオ・ア
ルバムが『WHEN THE EAGLE FLIES』(英ISLAND ILPS92
73)だ。これまでもデイヴ・メイソンやリック・グレッチに
よるベース演奏がなかったわけではないのだが、ウィンウッ
ド/キャパルディ/ウッドによる『JOHN BARLEYCORN MUST
DIE』の簡素(いい意味で不安定)なオルガン・トリオに比
べると、専任ベーシストを投入しただけにサウンドの輪郭は
随分はっきりとした。アルバムの冒頭を飾るSOMETHING N
EWを筆頭にしたメリハリのある突き抜けた演奏は、まさに
新生トラフィックの誕生を告げるかのよう。むろんウィンウ
ッド=キャパルディのソングライティング・コンビによる
湿性の宇宙は健在なのだが、そこに仄かな太陽が加わったよ
うな暖色とアメリカ南部の匂いを感じずにはいられない。

自由闊達なジャム演奏。ゆったりと漂うモーダルな音階。そ
うした二つのエレメントが交錯した本作でのトラフィックを
聞いていると、果たしてこれはロックなのかジャズなのか、
はたまた全く異次元の何かなのか、筆者は未だに戸惑ってし
まう。その混沌とした気持ちはけっしてネガティヴなもので
はなく、ロックというフォーマットから67年の4月に始まっ
たトラフィックが、これだけのフリーダムを獲得したことへ
の歓喜であり、驚嘆であった。未だ聞くたびに新たな発見が
ある『WHEN THE EAGLE FLIES』を前に音楽的な好奇心に
燃えるバンドやアーティストはきっと少なくないはずだ。そ
の素晴らしい果実をまえにぼくは今日も震えている。


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by obinborn | 2017-10-17 16:09 | one day i walk | Comments(0)  

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