映画『さすらいのレコード・コレクター』を観て

2日は新宿のK'sシネマで『さすらいのレコード・コレクター』
を観てきた。主人公のジョー・バザードはメリーランド州に
暮らす初老の男で、ブルース、ブルーグラス、ヒルビリーとい
った戦前の音楽にしか興味がない。何しろロバート・ジョンソ
ンが最後にいいと思えたブルースであり、娘が買ってきたジョ
ン・レノンのレコードをフリスビーにして飛ばしてしまったと
いう偏屈な男である。その代わりにジョーが10代の頃からアメ
リカ各地を回って集めてきたSPレコードのコレクションは2万
を超える膨大な量で、幾つかの再発レーベルに音源を提供して
きた功績も計り知れない。

そんな男の独白が『さすらいのレコード・コレクター』だ。原
題であるDESPERATE MAN BLUES(極端な男のブルース)が
示すように、その収集癖やレンジが決して広いとは言えない音楽
観には賛否両論あるだろう。少なくとも70'sロックを研究してい
る僕とは全く相容れない世界のありようだ。それでもこの映画
が共感を呼ぶのは、たとえ世間の流行がどうであれ、己の道を信
じて歩む男の姿が克明に描かれているからだろう。本職は決して
明かされないものの、同じコレクター仲間だった妻に先立たれた
ことを終盤で告白し、食事を作る手間を省くために町の簡素な
レストランで日々の空腹を満たすジョー・バザードの姿が明かさ
る。SPのお宝があると情報を聞きつけたわりには、さほどの成果
が上がらなかった黒人の家庭にも感謝の言葉を忘れない。まさに
レコード・コレクターの鑑のような人だ。一番好きなカントリー
・マンはジミー・ロジャーズとか。そしてロニー・ジョンソンに
サンハウス、あるいはチャーリー・パットンが生きた日々へと、
ジョーは今日も思いを馳せる。

白眉はポール・ジェレミアがハザードの自宅を訪れる場面だろう
か。僕がデイヴ・ヴァン・ロンク以上に敬愛する白人のブルース
・リヴァイヴァリストがジェレミアなのだが、彼ら二人が演奏家
と収集家という立場を超えて、愛するブラインド・ブレイクを語
り、歌い、微笑みを交わしていく様が脳裏から離れない。


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by obinborn | 2018-05-02 17:09 | blues with me | Comments(0)  

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