ニール・ヤング『ROXY:TONIGHT'S THE NIGHT LIVE』を聞いて

ニール・ヤングが75年にリリースした『今宵その夜』は、
熱心なファンには到底忘れることの出来ないアルバムだ。
ドラッグで亡くなった二人の友人、つまりローディのブル
ース・ベーリーとクレイジー・ホースのギタリストだった
ダニー・ウィットンを偲んで作られたというその作品は、
何でも73年のある夏の夜にニールとバンドがベロベロに
なるまでテキーラを飲み、ふとした思い付きでハリウッド
のリハーサル・ルームDで行ったライブ演奏を中心に構成
されていた。録音から発売までに2年もの間隔が開いてし
待ったのは、あまりにプライヴェイト過ぎるという理由で
レコード会社がリリースを渋ったためだが、”個人的”な
アルバム故に、人々から長らく記憶されるものとなった。

そんな『今宵その夜』のセッションをライブの場で実践し
直したのが今回新たに発掘されたアーカイヴ音源『ROXY
:TONIGHT'S THE NIGHT LIVE』だ。CDのデータでは73
年の9月20、21、22日の三日連続公演から抜粋したと記さ
ているから、あの”酔っ払いセッション”からあまり間髪を
置かずに実践されたライブだった様子が伺える。

ラフでルーズな演奏はロキシーのライブでもまったく変わ
らず、実に自然体なニールと彼のバンドの魅力を捉えてい
る。つまり完成度を目指すのではなく、コマーシャリズム
に走るのでもなく、今一番歌いたいことを歌うという一貫
した姿勢である。サンタ・モニカ・フライヤーズと命名さ
れたここでのバンドは、ビリー・タルボットとラルフ・モ
リーナというクレイジー・ホースのリズム隊に、ペダル・
スティールの名手ベン・キースとグリン出身のニルス・ロ
フグレンを合体させた編成で、四人ともに以前からニール
とは親しい間柄だ。とりわけニルスの掻きむしるようなリ
ード・ギターが生々しい。

「ハイスクールに通っていた頃のように/あの無邪気な日々
に戻りたい/そう川辺を下って/ズボンの小銭をチャラチャラ
鳴らしながらね」と歌われるMELLO ON MY MINDの懇願
がとりわけ染みる。「気休めに映画でも観よう」といった
内容のSPEAKIN' OUTでは、穏やかな描写だけにかえって
主人公の孤独が浮かび上がってくる。「その疲れた眼を開け
ておくれ」と死者に訴えるTIRED EYESには、涙の一つや
二つが溢れ落ちてくる。そして74年の『渚にて』に収録さ
れることになった終曲WALK ONで、やっと朝日が立ち昇
ってくる。故人たちへの弔いが終わり、再び歩いていかなけ
ればならないことを人は知る。


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by obinborn | 2018-05-23 17:10 | rock'n roll | Comments(0)  

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