トランプ政権時代のブルーズ〜ライ・クーダー『放蕩息子』を聞いて

ライ・クーダーの新作『The Prodigal Son〜放蕩息子』
が素晴らし過ぎます。2012年の前作『Election Special
〜選挙特報』は力感漲るアルバムだったけど、今回も予想
を大きく上回る出来栄え。個人的にはまるで前作と地続き
のような逞しい印象を受けました。すなわち労働者や非正
規雇用者(私なんか日雇いワーカーですよw)など社会的に
弱い立場の人間の側に立ち、初期を思わせるシンプルなブ
ルーズ、ゴスペル表現のなかでテーマを際立たせています。

60年代にスタジオ・ギタリストとして多くのセッションを
こなし、70年にソロ・デビューしてからは実り豊かな時代
を過ごし、80年代には映画音楽へと視野を広げた。90年代
にはブエナ・ベスタに象徴されるようなワールド・ミュージ
ックとの接点を持ち、以降はややコンセプトを優先させたア
ルバムを紡いだ。今までのライの歩みをざっくり振り返って
みると、そんな印象を受けますよね。

無理な音楽的越境がないことが『放蕩息子』の生命線ではな
いでしょうか?ヴォーカルにしてもギターにしてもごく自然
体であり、未知の音楽に誘ってやろうという”さもしさ”より、
プリミティブな社会的な動機が音楽の大きな背骨になってい
ます。

もともとライは30年代や40年代の不況時代に歌われたブルー
ズやフォークに共感を寄せた人でした。たとえ自分の印税に
結びつかなくとも、そのような古く埋れた曲をメジャー・フィ
ールドで展開したところが画期的でした。そのことを振り返っ
てみると、今回の『放蕩息子』で彼が再び原点に立ち戻ろう
とした姿勢が、ごく自然な回帰に思えてなりません。

恐らく『放蕩息子』はトランプ政権時代に生まれた鬼っ子的
なブルーズなのでしょう。「神様とウディ・ガスリー」には
こんな歌詞が出てきます「ねえ、ガスリーのTHIS LAND IS
YOUR LANDを歌っておくれ。やがて専制君主は失脚するだ
ろうね。ガスリーさん、あなたは夢見る人だった。そして私
もまたこの社会を良くしようとしているドリーマーなんです」

e0199046_20045210.jpg

[PR]

by obinborn | 2018-06-04 20:06 | one day i walk | Comments(0)  

<< 6月10日はロッキン・アフタヌ... 6月3日の木下弦二 >>